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奥田 亮 院長の独自取材記事

心と体の診療所おくだクリニック

(松江市/乃木駅)

最終更新日:2021/10/12

奥田亮院長 心と体の診療所おくだクリニック main

宍道湖を望む嫁島町の宍道湖通りから1本入った通り沿いに「おくだクリニック」はある。院長の奥田亮先生は落ち着いた声で話す穏やかで親しみやすい印象のドクター。長年松江市立病院に勤務し、患者の就労をはじめ精神障害のある人を取り巻く社会や制度のさまざまな問題解決に取り組みたいと、2021年4月に開業。精神科は受診の敷居が高い印象があるが、「当院は誰もが気軽に受診できるクリニックです」と話し、患者が入りやすい環境づくりに取り組む奥田先生。クリニックのこだわりや特色、展望について大いに語ってもらった。

(取材日2021年4月10日)

精神障害のある人の就労を手助けするクリニック

長年勤務していた松江市立病院ではどのような経験を積まれたのでしょうか?

奥田亮院長 心と体の診療所おくだクリニック1

鳥取大学医学部を卒業後、松江市立病院での初期研修を経て同院の精神神経科に入り、10年勤務しました。全国的には精神科がある総合病院は少なく、また慢性期の方を受け入れている病院はあっても急性期の方が入れる病院は限られているという現状の中で、同院の精神神経科は、隔離を必要とするような急性期の方から、慢性期の方まで広く患者さんを受け入れています。時には退院後の勤め先や入所先のグループホームを訪問したり、働く人のメンタルのご相談に乗ったりすることも。オールラウンドにさまざまな疾患を診させてもらい、経験を積ませていただきました。

開業の理由を教えていただけますか?

勤務医時代、メンタルに不調がある方の復職検査を何年かしていたのですが、就労がうまくいかないことがたびたびありました。精神疾患に対する社会や職場の理解が進んでいないため、なかなか就労に結びつけられなかったり、ようやく就労できても、心ない言葉を言われたりして思うようにパフォーマンスを発揮できず、結果、休職してしまったりすることもあるのです。また障害のある人たちを支援する組織や団体と病院間の連携が十分にできていないといった支援する側の課題もありました。こうしたさまざまな問題を解決し、精神障害を抱える人たちの就労の手助けをしたいと開業に至ったわけです。

この場所を選んだ理由や、内装のこだわりを教えてください。

奥田亮院長 心と体の診療所おくだクリニック2

当院は「誰でも気軽に入れる精神科」をめざしていますが、精神科は特にプライバシーへの配慮が必要な診療科です。市民の皆さんに認知してもらいたいけれど、目立つ場所にあっては患者さんが入りにくくなってしまいます。ここなら大通りから1本入った場所ですし、松江の南北に行き来しやすいので交通も便利です。何より、宍道湖の景色がきれいですしね。また駐車場を建物の裏側に配置して、通りから見えない工夫もしています。内装は僕の好みもあって落ち着きのある木の壁に、シンプルなデザインをお願いしました。目線を意識して、待合室のソファーは受付のスタッフや患者さん同士の目が合わないような配置をしています。待合室にある太陽をモチーフにした絵や、ロゴにも使われている黄色は、当院のシンボルカラー。かわいさや親しみやすさがあって、元気が出る色ですから、皆さんに元気になってほしいという思いを込めています。

患者が親しみやすい適度な距離感を意識

心療内科と精神科はどのように違うのでしょう。

奥田亮院長 心と体の診療所おくだクリニック3

心療内科はストレスによって引き起こされている体の症状を扱います。例えば喘息や胃潰瘍、頭痛など、体の病気だけれどもストレスに深く関係しているものを診るのが心療内科です。一方、精神科は精神の疾患を対象とし、代表的なものだと、うつ病、統合失調症、発達障害などがあります。診療では、まず心理士が30分ほど予診をしてから、1時間ほど僕と患者さんでお話をします。ひとりでに涙が出てくる、眠れない、仕事に集中しにくいなど、十分診療に値する症状なのですが、患者さん側は相談すべきか迷った状態で来る方が多いですね。お話を聞いて、治療すべき状況か、お薬を処方するか、あるいは残業の制限をお願いする診断書を書くなどして職場の配慮を求めるか、ケースバイケースで判断します。中にはお話を聞くだけで楽になるという方もいます。

大人の発達障害が認知されつつありますが、学校や会社、社会で生きづらさを感じている人も相談できますか?

もちろんです。性格の部類かもしれませんし、もしかしたら発達障害で、その特性が関係しているのかもしれませんが、例えば心理検査をして、ご自身の発達特性がわかるだけでも楽になるかと思います。得意・不得意な分野がはっきりすれば、その方に向いた仕事もわかってきます。もちろん、実際に経験してみないとわからないことはあるのですが、その方に合った仕事や職場が必ずあります。特性を生かして世界で活躍している人はたくさんいますよ。

患者さんと向き合う時に意識していることはありますか?

奥田亮院長 心と体の診療所おくだクリニック4

精神科の医師としては例外的かもしれませんが、僕は患者さんとの距離が近いんです。一般的に、精神科の医師やカウンセラーは患者さんと一定の距離をとります。それは、距離が近すぎるとマイナスの感情を抱かれたり、依存的になりすぎたりして、治療がうまくいかないことがあるから。でも僕は患者さんに親近感を抱いていただけるような距離感を意識するようにしています。実は、診察室の机も、対面時の「距離感」にこだわって手作りしたんですよ。しかし患者さんの自立心を削いではいけないので、そのさじ加減は難しいところです。こちらですべてお膳立てしてしまうと、その時は良くても、通院を終えた5年後、10年後に生かされません。仕事でも、家庭でも、何らかの役割を持ち、誰かの役に立つことで得る満足感は大きく、社会復帰への自信になります。

全人的な医療を志して精神科の医師に

先生はなぜ精神科の医師になろうと思われたのですか?

奥田亮院長 心と体の診療所おくだクリニック5

僕が初期研修を受けた当時は、総合診療がクローズアップされた時代でした。医療の進歩によって専門領域が細分化されたことで、自分の専門領域以外を診ることができない医師が増えてしまったことに対して、患者さんを中心とした全人的な医療が求められたのです。僕自身も、オールラウンドになんでも診療する医師になりたいと思っていた時に、精神科の初期研修のローテーションに入りました。その中で、精神科こそ体の病気や、生活、仕事も含めて、すべてを診る科だと気づいたのです。これは実体験なのですが、30代の若い肺炎患者さんがいて、お話をよくよく聞いてみるとお酒をたいへん飲む方でした。肺炎自体は抗生剤で治りますが、それで終わりでいいのかと疑問を感じました。お酒に頼らないで済むようにしてあげないと、その方を救ったことにはならないのではと思ったのです。このような思いから精神科の医師になりました。

患者さんの家族や友人、職場の人に知ってほしいことはありますか?

ご家族などから「どう接したらいいですか?」という質問をよく受けますが、特別なことは必要ありません。「その方自身やその障害を理解してあげたい」という気持ちさえあれば大丈夫。それぞれの自分らしい自然な接し方で十分です。また、職場の上司や人事担当者で、社員の問題をどこに相談すればいいかわからず困っている人がいるかもしれませんが、実は相談先はたくさんあります。企業に認知されていないことはわれわれの課題でもありますが、例えば島根障害者職業センターがありますし、その社員さんの精神科クリニックの主治医に相談してもいいかと思います。当院でも患者さんご本人の同意のもと、ご家族や職場の人の同席での受診が可能です。例外的にご家族や職場の人のみの個別相談も自由診療として設定してはいますが、僕は治療には医師や周りの人と患者さんの信頼関係が不可欠と考えているので、原則は患者さんご本人の同席をお願いします。

最後に、今後の展望やメッセージをお願いします。

奥田亮院長 心と体の診療所おくだクリニック6

当院は精神科、心療内科の診療に加えて、精神障害のある人の就労支援をめざしています。すでに近隣の精神科クリニックの先生方と協力して就労支援の研究会も立ち上げ、今後はノウハウを蓄積して患者さんの就労支援につなげていきたいと考えています。精神科や心療内科は敷居が高くて一歩を踏み出せない人もいるかと思います。当院は誰でも気軽に受診できる精神科クリニックとして、スタッフ一同が患者さんを迎え入れたいと考えています。スタッフたちは僕が見込んで集まってくれた人たちで、クリニックの展望について共通認識を持った頼もしい存在です。受診のハードルをできるだけ下げたつもりなので、通院や治療というよりも、相談するくらいの気持ちで来ていただければと思います。

自由診療費用の目安

自由診療とは

家族相談/1万円(30〜40分)、職場関係者相談/6000円(30分)

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