植松 淳一 理事長の独自取材記事
悠翠会うえまつクリニック
(調布市/調布駅)
最終更新日:2026/01/16
緩和ケア・看取りを中心としたがんの終末期医療など医療依存度の高いケースにも対応し、地域の在宅医療を支えている「悠翠会うえまつクリニック」。狛江市の「うえまつ在宅クリニック」の分院として2021年1月に開院した在宅医療専門のクリニックだ。植松淳一理事長は、豊富な経験とともに高い熱量を持って診療に臨んでいる。自宅で患者を看取るには医師らも相当な労力を要するが、それでも同院が24時間365日体制で、多くの患者の希望に寄り添う理由は「責任感と熱意」だという。「在宅医療はこれからの医療の中心になるであろうからこそ、その重要性を社会に示していきたい」。そう力強く、そして朗らかに話す植松理事長に、同院で提供する医療の詳細や在宅医療への考えなどを聞かせてもらった。
(取材日2025年9月24日)
在宅医療の本質は「患者の生活の質」を向上させること
2021年の開院から4年がたちましたが、地域の在宅医療の動向について教えてください。

在宅医療のニーズは非常に高まっていると感じます。私は2019年に狛江市に「うえまつ在宅クリニック」を開院し、その頃から調布市の患者さんをたくさん診ていましたが、地域全体の在宅医療に対する認知が広がっています。それに合わせて訪問看護ステーションやケアマネジャーも増えました。また、患者さんも多様化しています。もともとは通院困難な高齢の方が対象になることが多かったのですが、今は年齢問わず精神疾患で病院に通えない方や重度障害の小児、お若いがん患者さんなども広く診ています。当院だからこそなのかもしれませんが、社会的介入が必要な方を対応するケースも少なくありません。在宅医療が社会の橋渡し的な役割を担っていると感じます。
在宅医療の領域が広がっているのですね。
特に当院は「困っている人がいれば助ける」というスタンスで診療に取り組んでいます。在籍する医師やスタッフたちにも、何でも相談に乗りなさいと伝えているんです。困っている人というのは患者さんやご家族だけではなく、市役所の方やケアマネジャーさんの場合もあります。例えば、社会との結びつきが途絶えている独居の方を、市役所が困難事例として抱えている際、まずは医療できっかけをつくるために当院が介入を依頼されることもあるのです。そういったスタンスから、当院は医療機関からのみならず、役所からの依頼も増えています。患者さんが困っているなら、そこに関わる地域の方が困っているなら、手を差し伸べる。患者さんファーストの目線はもちろん持っていますが、その周りの人たちも救うのが当院の役目だと考えています。
在宅医療を行う際に重視しているのはどんなことですか?

在宅医療に求められるのは医療の質や専門性だけではなく、患者さんが家で過ごす「生活の質」を向上させることだと思っています。同じ病気を抱えている患者さんでも、経済状況や生活様式、ご家族の事情などは一人ひとり異なります。その患者さんが何を求めているのか、どんなふうに過ごすことがベストなのかを患者さんと同じ目線で考えることが大切だと思います。在宅医療を受ける患者さんの中には、人生最期の時間を迎える方もいらっしゃいます。その大切な時間を後悔なく過ごしていただきたいので、患者さんにとってベストだと判断すれば、「病気のことはあまり気にせず、好きなものを食べてもいいですよ」といったアドバイスも大切だと思います。
諦めない姿勢、強い責任感でがんの緩和ケアにも対応
がんの緩和ケアに注力なさっているそうですが、その理由は何でしょうか?

はい、当院では緩和ケアや看取りといった、がんの終末期医療にも注力しています。厚生労働省の調査によると、7割以上の国民が自宅療養を希望するというデータがある一方で、最期を自宅で過ごしたいと願う在宅診療のがん患者さんが緊急搬送されてしまうケースは少なくありません。確かにがん患者さんを自宅で看取るのは大変です。本人はもちろんご家族の負担も大きいですし、医師らも24時間365日体制でケアしなければなりません。自宅での看取りを途中で諦めて、「やっぱり病院に行こう」というケースもとても多いんです。そこをどうにか、私たちがサポートすることで最後まで諦めずに乗りきって、患者さんの希望をかなえたいと考えています。
どういった思いから看取りに多く対応されているのですか?
「最期まで自宅で過ごしたい」と希望する患者さんについては、できるだけその希望をかなえられるようにしております。それができる理由は、諦めない姿勢・強い責任感だと思います。せっかくわれわれを選んでくださったわけですから、その気持ちに応えたいというのが一番の原動力ですね。そういったニーズに対応するためにも、当院には非常勤を含めて20人ほどの医師が在籍しています。スタッフの層も厚く、ソーシャルワーカー、診療に同行する診療助手、診療コーディネーター、病院やケアマネジャーらとの連携を強化する医療連携部や、救急救命士が在籍する救命部も設けています。
皮膚科や精神科の医師も含めたチームを結成して、診療にあたると聞きました。

当院には緩和ケア内科の医師、精神科の医師、皮膚科の医師など、さまざまな分野のエキスパートが在籍しています。そういった専門家がチームとなって患者さん一人ひとりが抱える痛みや苦痛を可能な限り取り除くための、総合的なオーダーメイド診療を意識しています。特に最近は在宅医療における精神科へのニーズが高まっていると感じますので、精神科の医師がサポートできることは大きな強みになると思っています。また、脳神経内科を専門とする医師が神経難病に対応していることも当院の特長です。難病の方はリハビリテーションが必要になるケースも多いですが、当院にはリハビリ部門があり、在籍する理学療法士と緊密な連携を取りながら、医学的アプローチと理学的なアプローチをセットにして診療を行っています。
社会貢献にもつながる在宅医療をこの地域から
病院と変わらないレベルの診療にこだわっているそうですね。

24時間365日対応の訪問診療および緊急往診に加えて、がんや心不全などの緩和ケアや看取り、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病の予防と治療、薬局との連携による薬の配達・服薬指導など幅広く対応しています。リハビリ指導、エコー検査、人工呼吸器の使用も可能ですし、胃ろうや経鼻カテーテルなど経管栄養の管理も行います。在宅でのケアが難しいといわれるがん終末期の患者さんに対しては、麻酔薬を使った痛みのコントロール、精神科の医師による心のケアも含め総合的な緩和ケアを実施しています。「在宅での診療には限界がある、治療のレベルは外来よりも劣る」という誤解から、患者さんやご家族が在宅医療を最初から諦めてしまうようなことだけは避けたいと思っています。
在宅医療は患者本人だけでなく、ご家族との関わりも大切だと思います。
患者さん本人だけでなく、ご家族がどこまで頑張れるかも重要ですから、ご家族のケアも重視しています。経済的な問題やお仕事のことなどさまざまな事情があると思いますので、当院では先にスタッフが訪問して各ご家庭の希望を聞いた上で慎重に対応します。患者さんやご家族が「やっぱり病院に戻る」と希望すれば、無理に在宅医療の継続を提案することはありません。そういう場合はすぐにホスピスや専門病院を紹介できるよう、常に地域医療機関と連携を取っています。訪問診療においては連携が非常に重要ですから、普段から介護士やケアマネジャーの皆さんとも日々の出来事をリアルタイムで共有しています。
最後に読者へメッセージをお願いします。

私たちは少しでも多くの患者さんの希望をかなえるお手伝いがしたいと思っています。終末期医療を受ける患者さんには「残された時間を、どこで、誰と、どんなふうに過ごしたいかをしっかり考えてください」とお伝えしているんです。そして患者さんの意思が固まったら、それに沿ってできる限りサポートさせていただきます。患者さんの環境や生活はそれぞれ違うので、「この病気にはこの治療を」という正解があるわけではありません。病気だけでなく患者さんやご家族の考え方・生活とじっくり向き合い、ベストな診療をご提案させていただきます。そして、この地域にもっと根づいて、より一層地域に貢献していきたいと思っています。それが後に社会貢献につながると考えています。「社会のために」というのが私の信念でもあります。

