千手 陽一郎 院長の独自取材記事
ファミリア透析クリニック北綾瀬駅前
(足立区/北綾瀬駅)
最終更新日:2023/08/08

東京メトロ千代田線北綾瀬駅の中央改札口からすぐの「ファミリア透析クリニック北綾瀬駅前」。複数の病院で研鑽を積んだ千手(せんじゅ)陽一郎院長が、2021年1月に開院したクリニックだ。同院は透析治療を軸としつつ、透析に至る前の慢性腎疾患や生活習慣病の外来診療にも対応。早い段階から腎臓に関する疾患すべてを診ることで、患者の背景も踏まえた一人ひとりに合った治療の提供につなげている。「ただ透析をするのではなく、その先にある患者さんとご家族の生活を守りたい」と真摯に語る千手院長に、大事にしている理念とその実現に向けて取り組んでいることなどについて聞いた。
(取材日2023年3月29日)
信頼関係を大切にしながら患者とその家族を支えたい
まずは開院のきっかけから教えてください。

自分のめざす診療理念を形にしたいと考えたからです。その理念とは、「誠実かつ専門的な医療であなたの腎臓と生活を支える」というもの。看護師長・臨床工学技士長をはじめとしたスタッフがこの理念に賛同してくれ、その実現をみんなでめざしています。透析クリニックは「専門的な医療」を提供する場であるとともに、患者さんにとって自宅と同じくらい身近な場所ですから、安心して通っていただくことが欠かせないと思うのです。だからこそ私たちは「誠実な医療」を掲げ、家族のように「誠実に・親身に・熱心に」患者さんと向き合うことを大切にしています。クリニック名の「ファミリア」は家族のようなクリニックでありたいという願いを込め命名しました。そんな思いで関わりながら、患者さんと信頼関係を築くことが、結果的により良い透析治療を提供することにつながると私たちは考えています。
患者さんとの信頼関係を大事にされているのですね。
透析治療にはさまざまな選択肢があり、その中から一人ひとりに合った治療を提供するには、患者さんをよく知ることが求められます。例えば、治療では食事制限が必須なのですが、栄養に関するアドバイスをするには普段何を食べているのか、誰が作っているのかなど、細かに生活背景を把握する必要があります。そして、こうした情報は患者さんに私たちのことを信頼していただかなければ得ることが難しいものです。そのため、当院では通院前の見学・面談・オリエンテーションの時点から患者さんとしっかりコミュニケーションを取ります。通院開始後も透析治療中の時間を利用して会話をし、お互いを理解した上で少しずつ信頼関係を築くようにしています。その際、心がけているのはあいさつと笑顔。基本的なことですが、まずは私たちが心を開き、患者さんに安心していただけるようにしています。スタッフが笑顔でないと患者さんは笑顔になりませんから。
では、得た情報をどう診療に生かしていらっしゃるのでしょうか?

透析治療は性別や年齢、基礎疾患、合併症など、さまざまな条件を加味した上で行うべきで、均一な治療を行うべきではないと考えております。例として栄養管理があります。その方に適した量や食材、調理法などについてアドバイスします。年代が違う場合はもちろん、同年齢であっても生活習慣などは異なりますから、それぞれに合ったオーダーメイドのアドバイスが必要だと思います。その際、注意しているのはわかりやすく伝えること。腎疾患や透析治療は内科の中でも難しく、理解しづらい分野であるため、自身の病気のことを理解できない方が多くいます。そこで診療では、治療の内容や必要性、生活管理の方法をきちんとご理解いただけるように、平易な言葉で説明するようにしています。しっかりとした理解が患者さんの治療意欲や成果にもつながると考えています。
腎臓内科の外来にも対応し、一貫した治療で生活を守る
続いて、透析治療におけるクリニックの特徴や強みを教えてください。

当院では、オンラインHDF、間歇補液療法(I-HDF)、長時間透析と呼ばれる治療法を含め、常に先進の知識や技術を取り入れています。オンラインHDFやI-HDFは実施するにあたり厳しい水質管理基準があり、臨床工学技士が厳重な日々の管理を行うことで、当院でこれらの治療方法を可能としています。また当院では、合併症予防にも力を入れております。透析患者さんは下肢血流の低下から足にトラブルを起こしやすく、最悪の場合足の切断に至り、患者さんの生活レベルは大きく低下します。そこで当院では予防として、フットケアについて専門的に学んだ看護師が専用器具を用いて対応しております。当院は通院や生活のために必要な足については非常に重要視しております。今後運動療法の導入も検討しており、患者さんの日々の生活を守れるようできる限りサポートしていく予定です。
外来診療も行っているのですね。

腎臓内科、糖尿病内科、人工透析内科を標榜し、専門的な外来診療を行っております。人工透析内科がメインですが、腎不全の原因として挙げられる高血圧症や糖尿病についても積極的に治療をしており、これらの疾患の重症化を防ぐことで腎不全患者、透析導入患者を減らしたいと考えています。特に糖尿病治療に力を入れており、GLP1製剤などの新しい薬物療法を取り入れたり、スマートフォンを用いて24時間の血糖管理が可能な持続グルコースモニタリングの利用を推奨するなど、先進の治療の提供も心がけています。腎不全に関しては健康診断で異常を指摘され、自発的に受診される若い方が増えてきました。腎不全は自覚症状がないため、血液検査、尿検査、超音波検査などを駆使して早期の診断と治療に努めています。二人主治医体制でサポートしますので「ちょっと心配だな」と思うことがあれば、他にかかりつけの先生がいる方でも一度ご相談ください。
より患者に満足してもらうために新館を開設予定
現在のクリニックの隣に新館開設を予定されているとお聞きしました。

はい。2024年1月をオープン目標に進めています。透析ベッドの数が28床から約40床に増える予定です。待合室も現在の建物より広々としたものにします。新型コロナウイルス感染症の件があり、感染症対策の面から内科の外来と透析の外来の共存がなかなか難しく、試行錯誤の日々が続いていましたので、今回の新館オープンにより、どちらの患者さんも安心して受診できるような環境にしたいと考えています。
スタッフ教育にも力を入れていると聞きました。
より良い医療を提供するためにはスタッフの力は欠かせません。当院はベテランのスタッフも多く、新人教育にも力を入れています。先進の医療機器や技術を取り入れていますし、学ぶ環境として充実しています。ただ、当院が最も重要視していることは患者さんとの良好な関係性です。医療スキルも患者さんからの信頼を得るために必要な手段ですが、当院の方針として、コミュニケーションの重要性はいつも伝えています。同じくらい重要な医療人としてのスキルだと私は考えていますので。そして、その期待にいつも答えてくれるスタッフたちには感謝しています。
今後の展望について教えていただけますか。

患者さんを最初から最後まで診ることができるクリニックを目標としています。腎不全の予防・治療・透析導入・維持透析すべてを当院で行うことができる環境を今後もめざしていきます。足立区の高齢化が進み、透析のための通院が難しい方もこの2年間多く見てきました。今後は従来の血液透析治療に加え、自宅でも治療可能な腹膜透析を導入し、さらに患者さんに寄り添った医療を提供していく予定です。また、医師会や基幹病院と協力し足立区の腎不全患者を減らす活動にも参加していきます。当院は今後も患者さんとご家族のニーズを専門的見地からくみ取るクリニックでありたいと考えています。