全国のドクター8,887人の想いを取材
クリニック・病院 161,489件の情報を掲載(2020年1月28日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 新宿区
  4. 若松河田駅
  5. 医療法人社団愛智会 抜弁天クリニック
  6. 菊池 智津 院長

菊池 智津 院長の独自取材記事

抜弁天クリニック

(新宿区/若松河田駅)

最終更新日:2019/08/28

19725

若松河田駅にほど近い「抜弁天(ぬけべんてん)クリニック」は、女性を中心に幅広い年齢層の患者が訪れるクリニックだ。院長の菊池智津(ちづ)先生は明るい笑顔が印象的。「町のお医者さん」をモットーに、診察では丁寧に話を聞き、時間をかけて指導するので患者は病気と向き合う意識が高まるという。また専門の内科にとどまらない、病気の裏に潜む精神面の要因を探り出す治療を行っており、内科と精神科の連携をはかる勉強会も定期的に開催。そうした多忙な中でも休診日には訪問診療を精力的に行い、患者のために労力を惜しまない。こうした姿勢が患者との間に家族のような深い信頼関係を築き上げるのだろう。患者のため、地域医療のために活動を続ける菊池先生に、新たに立ち上げた認知症の勉強会や訪問診療でのエピソードなどを語ってもらった。
(取材日2016年2月24日)

訪問診療は「病気ではなく患者を診る」診療

まずは、先生が医師を志したきっかけを教えていただけますか?

1

小学生の頃に母が胃けいれんで苦しんでいた時、たった1本の注射で病状を軽くしてくれた医師の姿を見たことがきっかけです。まるで魔法のようでしたね。世の中のためになって、自分が誇りを持てる仕事だと子ども心に感じました。ですから、医師というのはとても大変な仕事ですが、それ以上にやりがいも大きいと思います。私がめざしたのは大病院のエキスパートではなく「町のお医者さん」。学生時代から長く住んできて、2人の子どもの子育ても見守ってくれたこの地で、医師として地域に貢献していきたいと思っているんです。

クリニックの設計ではどういった点にこだわりましたか?

今は車いすの方が通院されるのは一般的なことですから、玄関には段差をなくし、トイレも跳ね上げ式の手すりを付けてバリアフリーにして車いすのまま入っていただけるようにしました。患者さんのプライバシーをいかに守るかにもこだわりましたね。そこで考えたのが部屋にパーティションを使わないということ。大病院をはじめ、医療施設の多くは診察室をパーティションで区切っていますが、その場合、話し声が外に全部聞こえてしまうんです。町のクリニックには近所の方がたくさん来られますし、近所だからこそ余計に家の中のことなどは聞かれたくないでしょう。ですから、部屋ごと全部壁で区切って密室にしています。診療では病気のことはもちろん、世間話もよくしますよ。旦那さんの悪口とか(笑)、子育ての大変さとか、同じ主婦の立場として愚痴を聞いたり共感したりすると、それだけで元気になられる方も多いですね。

訪問診療にも精力的に取り組まれているそうですね。

2

もともと当院の患者さんで通院が難しくなった方のところに歩いて行ける範囲で診療しています。中には亡くなってしまう患者さんもいるわけですが、「最後は先生に見てほしい」とおっしゃっていただいたり、中には死に化粧をさせていただいたこともあったりと、家族のように親しくお付き合いさせていただいていますね。訪問診療では患者さんのお宅に上がるわけですから、その人の背景が見えてきます。生活全般も見ながら診療しますから、まさに「病気ではなくて患者を診る」ですね。それは訪問診療の好きなところでもあります。患者さんの愚痴や世間話を聞いたり、帰り際に「これを持って行って」とおやつを持たせてくれたり、私の方がパワーをいただくこともあります。今は行ける範囲や曜日が限られていますが、これからも訪問診療は続けていきたいですね。

内科と精神科と連携をはかる勉強会を発足

精神疾患の勉強会も熱心に行っていらっしゃいますね。

3

実は内科の患者さんで、うつ病などの精神疾患を抱えている方は多いんです。うつ病以外にも身体表現性障害という原因不明の痛みが続く精神疾患もよく見られますね。当院は甲状腺疾患も扱っていますが、これもやはりメンタルな問題と関係していることがあります。このように内科と精神科はつながりが深く、内科医も精神疾患についてもっと知る必要があるのに、以前はそういった勉強会がほとんどありませんでした。そこで「これは私がやらなければいけない」と思い立ち、考えを共有してくれそうな先生に個別にお声をかけ「勉強会をしてもらえませんか」とお願いし、ご賛同いただいてスタートしました。勉強会を開くことで、内科の先生に精神疾患の知識を持ってもらえますし、精神科の先生ともつながりができます。勉強会の企画・実行は大変ですが、周りの先生たちに病気や薬に関する知識が広まれば、地域の患者さんに還元できるという思いで勉強会を続けています。

児童心理相談も行っているとお聞きしました。

以前、夫のアメリカ留学に伴って一時期ニューヨークに住んでいたのですが、その時に知り合った臨床心理士の久保田須磨先生が児童心理相談を行う場所を探していたので、休診日にこの場所を提供しているんです。今、情緒障害のお子さんはとても増えていて、勉強についていけなかったり、コミュニケーションがうまくいかなかったりして不登校になる子が学年に6%ほどいるといわれています。また、小学生から思春期にかけてのうつ病や、強迫性障害も少なくないですね。腎臓や泌尿器に問題はないのにいつまでもおねしょをしている子、やせなきゃいけないと思い込んで拒食症になる子……中学生くらいからさまざまな兆候が出始めます。しかし、児童精神科の医師が足りず対応できる場所が少ないんです。私は直接関わっているわけではありませんが、もしお子さんについて悩んでいらっしゃる方は一度相談してみてはいかがでしょうか。

認知症については、各医療機関との連携体制を重視しておられますね。

4

最近は近隣の大きな病院でも認知症患者のフォロー体制が少しずつ整いつつあって、例えば東京新宿メディカルセンターは包括ケア病棟を増やすことを予定しているそうですし、東京女子医科大学も専門医が在籍するようになりました。当院ではそういった医療機関と勉強会を通じて関わりを持ち、常に連携を取れるようにしています。地域の医師会で勉強会をしてもらったり、反対にこちらが出向くこともありまね。そうしてどんどん顔つなぎをすることで、患者さんを紹介できるようにしているんです。認知症で家族が1番つらいのは、徘徊や妄想などの認知症周辺症状(BPSD)です。内科医も精神科医も、もっと自分たちから関わっていかなければならない問題ではないでしょうか。私自身、忙しくてなかなか行動を起こせていないのですが地道に活動しています。

必ず受け取ってくれる人がいる、そう信じて情報を発信

スタッフは皆さん女性なんですね。

5

男性スタッフを受け入れないわけではないのですが応募自体があまりなくて(笑)、結果として全員女性スタッフになりました。みんな性格がすごく良い子たちで、患者さんへの接し方もやわらかいですね。私に注意されることも多いのですが、患者さんにはいつも笑顔で応対してくれているので、そこはいつも褒めています。スタッフの仕事も忙しいのですが、レセプト時期の残業では夜食を用意したり、歓送迎会や忘年会を開いたりしてコミュニケーションを取るようにしていますね。

診療の際に心がけていることはなんですか?

当院に来ていただいている患者さんの5年後、10年後が、他の病院にかかった場合とどれくらい違うのかは比べようがありません。だからこそ、その人の10年後がより良い人生となるよう、私たちが医療のプロとして細かくアドバイスしながら診療することが大事です。そうすることで合併症などを引き起こす確率も下がりますからね。それと同時に、医師任せではなく、患者さんご自身で自分の病気と向き合ってもらえるように意識を変えていくことも私の役割だと思っています。その成果なのか、ここに来られる患者さんは皆さん真面目に血圧などを測ってきて、ご自身の健康をきちんと管理しようとする方が多いんですよ。

最後に、クリニックからメッセージをお願いします。

6

医療費を払っているのは患者さんご自身なのですから、それを無駄にしないためにも、病気や医師ときちんと向き合ってほしいですね。クリニックとしては今後、医師会などを通して情報を発信して、地域の患者さんをサポートしていきたいと考えています。当院に通ってくださっている患者さんたちがいろいろな情報や知識を得られる機会を積極的に設けていきたいですね。発信していれば受け取ってくれる方はいますから、まずは自分の思いをきちんと伝えることが大切なのかなと思っています。

Access