石渕 晃人 院長の独自取材記事
清泉クリニック整形外科 福岡
(福岡市東区/香椎駅)
最終更新日:2024/08/02
香椎宮前駅から徒歩3分、香椎参道沿いにある「清泉クリニック整形外科 福岡」。リハビリテーションや運動療法指導を重視し、スポーツに親しむ人へのケアにも力を入れる同院は、広いリハビリ室と充実した設備を整えている。2023年に院長に就任した石渕晃人先生は、産業医科大学病院整形外科で修練を積んだ経歴を持つ。「予防や患者の生活背景に寄り添うことの大切さを知ったこれまでの経験は大きかった」と語る。「心身一如」と刺しゅうが入ったユニフォーム姿でインタビューに応じてくれた石渕院長。健康な心は健康な体に宿り、体を元気にしていくことで心も元気にしていくというクリニックの理念が込められているそうだ。石渕院長に院長就任への思いや、同院の診療方針などについて聞いた。
(取材日2024年6月17日)
これまでの経験を糧に患者の人生に寄り添いながら診療
現職に至るまでの先生のご経歴を教えてください。
2010年に産業医科大学を卒業し、2年間の初期臨床研修を経て、産業医科大学の整形外科に入局しました。整形外科を選んだのは、私が長年野球をしていたこともあり身近な診療科だったからです。また、超高齢社会といわれる中で、高齢の方の生活の質の向上に貢献したいと思ったことも理由の一つです。大学病院の他に、関連の総合病院などに勤務しながら整形外科の専門修練を積みました。産業医科大学は、オフィスワーカーの健康のサポートに長年注力しています。私も鹿児島県に赴任した際は、多くの働く人への診療に従事しました。
鹿児島県でのご経験は、先生にとって大きな学びとなったそうですね。
クリニックや病院で働く多くの医師は、病気やけがをした患者さんに対して治療することが多いでしょう。しかし、鹿児島県で私が担っていたのは主に予防医学の分野で、健康に働いている方がこれからも心身を健康に保てるように導くことに特に注力しました。それまで働いてきた医療機関で診療しているだけでは気づくことのなかった、予防の大切さを再認識しました。また、鹿児島県の赴任先では長いスパンで患者さんと関わることが多かったので、その方の生活や人生も含めて診療しているように感じられました。この経験から、診療の際には患者さんが受診するまでの経緯や背景をより詳しくお聞きするようになり、より広く深い視点で患者さんを診ることができるようになりました。当院の診療でも、患者さんのお仕事の有無や職種などを考慮して、治療内容やお仕事への復帰のステップを検討しています。
こちらの院長に就任された思いをお聞かせください。
大学病院や総合病院は、どうしても難治症例や手術が必要な症例が集まってきます。ただ、その前の段階で保存療法をしっかりと行っていれば、回復が見込めるケースも少なくありません。手術となると患者さんの負担も大きくなりますから、手術に至らないような医療を提供していくことが大事だと感じていました。そんな時に、当院の前院長が退職されるとのことで声をかけていただき、2023年に院長に就任しました。前院長を慕っていた患者さんも多くいらっしゃいますので、そうした患者さんを大事にしながらも、新たな患者さんを受け入れていけたらいいですね。地域に密着したクリニックであるのは、今までと変わりません。「患部にとどまらない総合的な治療」を行い、足取り軽く帰っていただけるようなクリニックをめざしています。
リハビリや運動療法、運動部の学生へのケアに注力
「患部にとどまらない総合的な治療」について、もう少し詳しくお聞かせください。
注射や薬で患部の痛みの緩和を図ることはもちろん必要ですが、それ以上に、患者さん自身で治す力(自己治癒力)を高めていってほしいというのが当院の方針です。そのためリハビリや運動療法指導に力を入れ、広いリハビリ室を設けて設備も充実させています。リハビリや運動療法の際に重視しているのは、背骨です。背骨の並びが悪いと、体のどこかに負担がかかり、それが腰や肩、ひざなどの慢性的な痛みにつながるという考え方に基づいています。ですから、痛みや動かしにくさがある特定の部位に対するリハビリだけでなく、背骨へのアプローチも同時に行っていきます。患部の治療と体の中心となる背骨を整える体全体の治療を行っています。
リハビリを充実させるには、担当されるスタッフの力が重要ですよね。
もちろんです。リハビリを担う理学療法士、リハビリを補助するトレーナーは十分な人員を確保し、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドのリハビリメニューを組んでいます。医師、看護師、理学療法士、トレーナーによるカンファレンスも行い、患者さんの状況や治療方針を常に共有するようにしています。また、医療リハビリと介護リハビリ(デイケア)の連携を行い、若い世代から高齢者まで対応できる体制を整えています。スタッフ採用の際は、相手の話にしっかりと耳を傾けられるコミュニケーション能力を何よりも重視しています。患者さんと密に関わることが多い仕事ですからね。
若い世代に対する、スポーツによるけがや故障の治療にも力を入れているそうですね。
ええ、このあたりは学校も多いので、スポーツをしている成長期のお子さんや学生さんに対するケアにも重点的に取り組んでいます。けがの治療だけでなく、けがにつながりやすい要因を分析し、故障しにくい体づくりにも力を入れていますね。また、日常的にスポーツに関わる人に対しては、筋肉量や筋力の測定、関節の動きと筋肉の柔軟性のテスト、貧血検査などを行っています。客観的な数値で、ご自身の体の状態を知ることができます。測定結果を踏まえて、理学療法士が中心になり、体の使い方についてアドバイスをしています。理学療法士もスポーツ経験者がほとんどですので、ぜひご相談ください。
新しい治療方法も積極的に取り入れ、地域全体を元気に
患者さんに接する時に心がけているのはどんなことですか?
整形外科は、主訴のほとんどは痛みです。痛みの原因を探って、適切な診断をすることが治療の第一歩です。ですから、問診を丁寧に行うことを心がけています。生活背景も含めてお話を伺いながら、治療方針を立てていきます。ただご理解いただきたいのは、私どもの役割は「治療の手助け」をすることです。「患者さんが主体」となって、ご自分で体を動かしていくことが回復への近道だと考えています。
患者さん自身が治療へ前向きな気持ちを持つことが大切なのですね。
そうですね。クリニックに通ってリハビリを受けさえすればいいと思っていらっしゃる方も、時折見受けられます。もちろん回復へ導いてあげたいという気持ちでわれわれも頑張っているのですが、それ以上に大事なのは、患者さん自身が自分で治療への前向きな意欲を持っていただくことです。そのために、自宅でできる運動も指導しています。自分で自分の体をケアできるようになれば、再発防止にもつながるでしょう。それが最終的な目標ですね。
専門職に向けた勉強会や地域住民に向けたセミナーも積極的に開催していると伺いました。
専門職に向けた「背骨や骨盤に注目した理論」に関する勉強会を開催し、人材育成にも注力しています。地域の方に対しては公民館などに出向いて、痛みが生じる原因や体のケアのための方法をお伝えするセミナーも行っています。この辺りは一人暮らしの高齢の方も少なくありません。家の中に一人で閉じこもっていると体力が低下し、認知症が進むリスクもあります。リハビリに来られることで生活に張り合いが出たり、近所に住んでいる患者さん同士がばったり会っておしゃべりしたり、当院が憩いの場のようになったりしたら、私どももうれしいです。「けがや痛みの治療ができた」だけにとどまらず、香椎全体を元気な町にしていければという思いで日々診療しています。
最後に、ドクターズファイルの読者へメッセージをお願いします。
当院では、全身骨密度測定装置や、病態を可視化できる超音波画像診断装置、筋力測定装置など、先鋭の医療機器を取りそろえています。超音波で筋膜の状態を確認しながら注射をするハイドロリリースや、衝撃波を患部に照射して痛みを緩和するための体外衝撃波治療など、新しい治療法も積極的に取り入れていますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。医療は日進月歩です。これからも、患者さんのさまざまな症状に適した治療を提供できるよう、日々研鑽を積んでいきます。