宮崎 義久 院長の独自取材記事
みやざき整形外科リハビリテーションクリニック
(福岡市博多区/南福岡駅)
最終更新日:2025/04/18

南福岡駅から徒歩10分、車でも来院しやすい大通りに面した「みやざき整形外科リハビリテーションクリニック」は、2020年の開業以来、地域の健康寿命の延伸に力を注ぐクリニック。宮崎義久院長は、整形外科の中でも数少ない手外科の専門家として診療に取り組むほか、総合病院などに長年勤務し多くの症例に携わった経験から、症状を見極める力を高めるとともに、患者ととことん向き合う診療を大切にしている。地域のホームドクターとして「地域に溶け込み、患者さんとはご近所付き合いのように接したい」と話す宮崎院長。患者の話をしっかり聞くことで安心感へとつなげる診療姿勢、得意とする分野、働く世代への啓発など、柔和な笑顔と語り口が印象的な宮崎院長に話を聞いた。
(取材日2025年3月12日)
整形外科医の視点から健康寿命を延ばすサポートを
まずは、これまでのご経歴を教えてください。

大きな病院や労災病院で勤務していた期間が長かったので、高齢者から若い方まで、救急で運ばれてきた患者さんの診療や手術を数多く行ってきました。救急の現場では、瞬時にどうするか判断を下さなければなりません。状態をしっかり見極めて対応しないと、その患者さんの運命が変わってしまいます。重圧を感じるというよりも、目の前の患者さんを救いたいという思いで日々過ごしていました。大切にしてきたのは、治療や手術で絶対に手を抜かないということです。当院でも同様に、患者さんととことん向き合うことを大切にしています。患者さんは医師のことを信頼してくれているので、その期待に応えるように努力しています。
クリニックのコンセプトをお聞かせください。
当院のコンセプトは、地域にお住まいの方の健康寿命を延ばすお手伝いをするということです。近隣施設の児童や乳幼児、学生さん、働き盛りから高齢の方まで幅広い年代の方にご来院いただいています。既存の患者さんからのクチコミで来られる方が多いのも当院の特徴です。リハビリテーションに対しては、物理療法を行う機械は多く置いていません。機械よりも、リハビリスタッフが患者さんとマンツーマンで、人間同士の関わり合いを大切にしながらリハビリを進めてくれています。リハビリスタッフにはとても感謝しているんです。なぜなら、患者さんから感謝の言葉を多く頂いております。一生懸命やってくれる姿勢が、患者さんにも伝わっているのだと思います。リハビリがあっての当院です。
健康寿命に目を向けたきっかけは?

大きな病院で急性期の患者さんを治療していた時、高齢者の骨折もよく診てきましたので、まず患者さんが骨折しないようにしていきたいと考え、骨の密度や筋力を高めることを重要視するようになりました。当院では、骨粗しょう症には薬物治療に運動指導も取り入れつつ、筋力に関してはリハビリテーションで働きかけることで、転ばないような筋力と丈夫な骨づくりをめざしています。勤務医時代は、患者さんの骨折が治癒した時点で、近隣のクリニックにその後の経過観察依頼の紹介していました。そうすると、また近いうちに骨折して戻ってくる方も多かったんです。骨折を起こしにくい体質を作ることで、その悪循環をどこかで断ち切ることが大切だと思ったことも、開業に至った理由の一つです。
50代から取り組みたい勤労者ロコモティブ症候群対策
ホームドクターとして大切にされていることは何でしょう?

クリニックの場合、外来の患者さんの状態や生活の背景を詳しく知ることが大切です。なかなか難しいですが、カルテを見なくてもその患者さんの状態や合併症の有無などを細かく把握していることが理想です。そのため、患者さんの顔をしっかり見て話を聞くことを大切にしています。その方の悩みを軽く聞き流してしまうのか、それともしっかり聞いて一歩深入りしてみるか。一歩踏み込むことで「この先生に伝えれば、しっかり聞いて判断し行動してくれる」と患者さんに思っていただけると考えていますし、信頼感も違ってくると思います。ホームドクターとして、患者さんとはご近所付き合いのような感覚で接していますね。診療面では、骨粗しょう症の定期的な治療と検査を積極的に行っています。高齢者が骨折をすると歩けなくなって寝たきりになり、認知症につながる場合もありますから、いかに健康寿命と本当の寿命を近づけていくかということを重視しています。
働く世代の健康維持にも尽力されているとか。
少子化の日本では、働く人を確保するため退職の年齢が65歳まで延長され、さらに再雇用などで、勤労者の高齢化が進行しています。人間が立つ、歩く、作業をするといった運動のために必要な運動器の障害を「ロコモティブ症候群」と呼びますが、勤労年齢が上がったことで、勤労者のロコモティブ症候群対策が必須の時代になっています。ロコモティブ症候群を病気と捉えるのか、病気ではないと捉えるかは難しい判断になりますが、やはり末永く健康に、ケガなく働くという意味では、中年期以降の意識改革が大切です。例えば、ちょっとした腰痛で来院された方に対して、自宅でもできる運動やトレーニングの指導、ロコモティブ症候群について知っていただくなど、勤労寿命を延ばすための啓発を進めていくことが課題だと考えています。
勤労者のロコモティブ症候群の対策が必要な年齢は?

50代の約4割は、運動機能の低下の始まりを意味する「ロコモ度:1」が始まっているというデータも出ています。早い時期から対策を心がけておかないと転びやすくなる、働きにくくなる、ケガの原因になることがわかっているんですね。当院では、簡単なロコモ度のチェック方法や日常の運動に関するパンフレットなどを置いております。待ち時間の間にそれらを活用していただきたいと考えています。今後はリハビリテーション中にロコモ度のチェックを行う取り組みも進めていきたいと思います。また、企業にも意識していただき、ロコモ度チェックに取り組んでもらえたら、労働災害の防止にもつながるだろうと思います。
手外科の専門家としての診療にも注力
先生は手外科の専門家でもあるそうですね。

手の診療に関しては一歩踏み込んだこだわりや思いを持つようにしています。私がこれまで勤務した病院は、手を専門に診るところが多かったので、おのずと手についての症例を数多く経験することができました。当院では、もし症状が出たとしても、手術がすべてではなく、最初はブロック注射など、保存治療で様子を見ていくという進め方をしています。なんでもすぐに手術というのは、あまり良く思いません。私たち医療人は生涯で何度も手術を経験しますが、患者さんにとっては生涯で一度あるかないかですよね。どこまで手術を回避するか、あるいは手術を選択したほうが良い状態なのかを見極める力は養ってこられたと思っています。手術をしないで済むような、保存的な治療を基本にすることがクリニックの役割だと思いますね。
手に関する症状で悩んでいる方は多いのですか?
遠方から来院される患者さんや電話での相談もあります。当院のホームページに私が手の病気について書いたブログを掲載しているのですが、それを見て頼って来てくださるようです。手外科を専門とする医師は全国でも数が少ないので、患者さんが来院された時に「ここに来て良かった」と思える情報を、一つでも提供することを心がけています。「せっかく来たのに、ほかの医師に診てもらうのとそんなに変わらない」と思われると寂しいですから、何か一つでも手外科の専門家として貢献できればと思います。当院における手の治療の柱は、薬と注射での治療、リハビリテーションです。院内でのリハビリテーション以外にも、家にある物を利用した練習なども指導しています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

予防医学の推進と健康寿命延伸のお手伝いという意味で診療とリハビリテーションに力を入れ、骨粗しょう症の治療や筋肉量をどう高めていくか、体の内と外からの働きかけもより強めていきたいですね。膝や腰が痛いという患者さんを診るのは当然ですが、これまで経験を積んできた手外科の分野でも貢献していきたいです。保存的治療から手術の間に取り入れる再生医学に基づいた先進の治療も増えていますが、手外科での導入はまだ少ないため、クリニックレベルで取り組める中間的な治療として注目しています。早めの受診によって、早い解決が期待できますから、何か悩んだ時は声をかけてください。患者さんに応じた治療、ニーズに合った治療の提供を心がけていますので、安心してご来院いただきたいと思います。