大山 倫男 院長の独自取材記事
六ッ川内科消化器内科クリニック
(横浜市南区/弘明寺駅)
最終更新日:2024/10/31
京急本線・弘明寺駅から歩くこと約3分、平戸桜木道路に面した場所にあるのが「六ッ川内科消化器内科クリニック」だ。院長を務める大山倫男先生は横浜市立大学附属病院の消化器外科などで15年近い研鑽を積んだ後、開業した。もともとは大腸がんや胃がんなど消化器のがんを専門にしており、多くの症例を手がけてきた。その知見を生かし、現在は上部内視鏡や下部内視鏡検査を中心に消化器疾患のゲートキーパーとして地域医療を支えている。もともとは新潟大学で学び、東北の医療機関で活躍していた大山院長だが、ひょんなきっかけから横浜にやってきたのだという。そんな大山院長に横浜に開業したきっかけや、現在力を入れている内視鏡検査、消化器腫瘍を専門にしてきたからこそ感じる課題について、幅広く話を聞いた。
(取材日2024年7月12日)
消化器腫瘍を専門として10年以上の経験
そもそも先生はなぜ、消化器外科、中でも腫瘍を専門とする医師の道へと進まれたのですか?
医師をめざし始めたのは中学生の頃です。家族に薬剤師がおり、医療を身近に感じていたことが理由かもしれません。それからは勉強漬けの毎日。なんとか新潟大学医学部に入学することができました。とはいえまだ医学知識はありません。そんな私の脳裏に浮かんだのは「医師といえば外科だろう」という考えでした。外科として心臓外科などが花形ですが、私が思い浮かべたのは誰でも知っている大腸がんや胃がんなどの「がん」という病気でした。非常に端的に言えば、がんは外科的な治療を行い根治をめざします。人の命を救う、医師という職業を熱望していた私にとっては、非常に魅力的な領域に映ったのです。ですから、勤務先の医療機関もなるべく多く、手術の経験が積める医療機関を選びました。
最初は秋田にある医療機関で研鑽を積まれていたそうですね。
首都圏では一つの病院が担当するエリアはおそらく半径数キロ程度でしょう。一方で私もいた東北などの地方では、半径百数十キロ一円を担当する医療機関もあります。私が所属した仙北組合総合病院もそうした医療機関の一つでした。ですので担当する症例数は膨大でした。予定の外科手術もありましたし、当時は消化管穿孔など腹部の緊急手術も多かったです。毎日何件も執刀したことを覚えています。手術を担当した患者さんが退院していく姿を見ることでやりがいを感じていました。充実した日々だったと思っています。
その後、横浜市立大学附属病院に来られたそうですが、なぜ東北から横浜に?
私は、もともと東京の八王子市の出身です。実は2010年頃に東北の別の医療機関からお声がかかっていたのですが、家族が病気に倒れ、実家のそばに戻らなければいけなくなってしまったのです。そんなとき、声をかけてくださったのが横浜市立大学医学部の方々で、消化器・腫瘍外科学という領域で入局することができました。偶然の産物でしたが、医学部という組織に所属できたことで得られた経験として何より大きかったのが、患者さんと相対する時間や学ぶ時間を多く得られたこと、そしてバックボーンとなる知識を身につけられたことだと思っています。この経験があったおかげで手術の執刀に携わるだけでは培えない、医師としての厚みのようなものが備わったと感じています。
手術が必要な状態になる前に病変を発見したい
現在先生は、消化器関連疾患の地域のゲートキーバーとして尽力されていますね。
勤務医時代は、外科の医師として多くの消化器疾患の手術に携わってきました。手術で治すこと自体は素晴らしいことです。否定するつもりはありません。しかし、どうしても外科手術は侵襲が大きいんです。特に大腸がんや胃がんでは、10~15年ほど前は開腹手術が一般的でした。病変は取り切れたとしても、おなかを開いたことによるダメージは大きく、術後、腸閉塞といった重篤な副作用に悩む患者さんも少なくありませんでした。現在は侵襲の少ない治療法の研究開発が進み、消化器の領域でもESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)など内視鏡を用いた低侵襲な治療が広まりつつあります。とはいえ、患者さんの体に傷がつくという事実はかわりません。手術に至る前に何とか病変を発見し治療につなげられないか。そうした思いから開業に踏み切りました。おそらく、私以外にも外科医から開業に踏み切った先生はこうした思いを抱えているのではないかと感じています。
こちらのクリニックでは、特に内視鏡による消化器がんの検査・発見に力を入れていらっしゃいますね。
大学病院など大規模な医療機関は、紹介状を持って来院されることがほとんどです。一方でわれわれのようなプライマリケアを行う医療機関では、そうして選別される前の患者さんが訪れます。当院のような医療機関で早期にがんを見つけることができれば、極力大がかりな手術にすることなく治療を進められるのではないか。ESDのような低侵襲な治療で済ますことができるのではないか。そう考えて内視鏡検査に特に力を入れています。
腫瘍を専門にしてきた先生がそうしたプライマリな領域で医療を提供することの強みとは何でしょうか。
検査に力を入れていると、自覚症状はないもののESDなどの手術では処置しきれないサイズの病変が見つかることもあります。患者さんの中には症状がないのに手術が必要なのか、とお考えになり手術をためらう方もいる。私は消化器腫瘍を多く診てきましたから、経験とエビデンスをもって、患者さんに手術の重要性を、丁寧に納得いただくまで説明することができます。これは消化器外科として腫瘍の執刀に携わってきたからこその強みだと思っています。
40代が分水嶺。早めの胃・大腸内視鏡検査受診を
経鼻内視鏡の活用や鎮静剤を併用して検査を行うなど痛みの少ない検査にもこだわっています。
一人の医師として言うと、やはり内視鏡を使った検査はリスクが少なく簡便かつ、しっかりと病変が把握できます。ただ、普及した当初は内視鏡を通す管は太くて硬く、嘔吐反射や、局所麻酔が浸透していなかったことで痛みも出てしまっていました。ですから、痛い・つらいという印象を抱いている患者さんが多いのです。そして、内視鏡検査未経験の方も「きつい」と認識している。ですが、現在はハード・ソフト両面で進歩しており器具は細くなり、鎮静剤も活用できるようになっています。その結果、苦しくない、痛くない内視鏡検査がめざせるようになっています。このことを知らないままだと、検査を受けてもらえないですし、がんの早期発見にもつながりません。だからこそ、検査のハードルを下げるべく、苦痛の少ない検査にこだわっています。
内視鏡検査を受けてほしい年代、症状について伺います。
消化器の腫瘍を専門に診ているわれわれからすると、40代を過ぎたあたりが分水嶺になると思っています。一度はご自身の体をチェックし、メンテナンスを受けてもらいたいですね。技術の発展により、消化器のがんは早期に発見できれば命を落とす可能性が非常に低い疾患になってきています。私が駆け出しの外科医をしていた20年ほど前とは大きく異なる点です。だからこそ、できるだけ早く検査を受けていただきたい。私自身、外来に通常診療で来られた方が40歳を過ぎていたら、それとなく検査の重要性をお伝えするようにしています。
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
これからも、もっと気軽に胃・大腸の内視鏡検査を受けてもらえる方法がないか、模索していきたいですね。また、できるだけ手術に至る前の段階で治療をするには医師の努力だけではどうしても力が及ばない部分もあります。患者さんが自ら早期に受診し、検査を受けていただけるかどうかも重要な点です。そうした気持ちの醸成につながるよう、橋渡しのようなことができればとも感じています。そして、われわれが持つ知見や機材をフルに活用し「手術をしない」治療につなげられるようにしていきたいですね。胃や大腸など消化器のことで気になることがありましたら、いつでも気軽にご来院ください。