青山 豊 院長の独自取材記事
青山内科ハートクリニック
(名古屋市昭和区/八事日赤駅)
最終更新日:2022/02/08
名古屋市営地下鉄名城線の八事日赤駅から徒歩約3分。山手グリーンロード沿いに、青を配色したロゴが目を引く「青山内科ハートクリニック」が見えてくる。青山豊院長は「八事日赤」の通称で親しまれる日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院の循環器内科に13年勤務。救急科外来にも対応しながら、心臓や血管の病気に数多く向き合ってきた。やがて心臓リハビリテーションの重要性を痛感。専用のリハビリテーション室を備えるかたちで開業した。その経緯や展望を青山院長に尋ねると、言葉の一つ一つから静かな情熱が伝わってきた。
(取材日2022年1月5日)
循環器内科で救急医療にも携わる
医師になった理由を教えてください。
子どもの頃に野球をやっていて、中学2年の時に肘が痛くてボールを投げられない野球肘になったことがあるんです。その際近所の整形外科を受診したんですけど、その先生が優しくて格好良い先生だったんですよ。野球ができない、日常生活もつらい気持ちの中、その先生が憧れの存在になったことが最初のきっかけでした。だからはじめは整形外科の医師になりたかったんです。それで高校で医学部をめざし、名古屋大学に入ったのですが、大学5年の実習で救急の現場に行った時、今にも亡くなりそうな患者さんのもとに循環器内科の先生がさっそうと現れたんです。生死のかかった状態の患者さんを目の前に、循環器内科の先生はテキパキと対応していく。その姿を見て自分も将来こうなりたいと思ったんです。
循環器内科ではどんな経験を積まれましたか?
大学卒業後、八事日赤に勤務し、心筋梗塞、不整脈、心不全などの救急医療に携わり、カテーテル治療などを含め多くの患者さんの治療を担当してきました。その後、名古屋大学大学院で研究を行い医学博士を取得した後に中津川市民病院に赴任しました。中津川市民病院で私は初めて心臓リハビリテーションに出合い、退院した患者さんが良い状態を維持し、社会に復帰し、再発を予防していくためには心臓リハビリテーションという長期的な取り組みが非常に重要だと実感しました。それで八事日赤に戻ることが決まった際に心臓リハビリテーション担当を志願したのです。
開業のきっかけは?
八事日赤に戻った時は、定年まで勤めるつもりでしたが、ハードな生活が続き今後の自分自身の体力に対する将来的な不安が生まれ、このままでいいのだろうかと考えるようになったのです。そんな折、東京などでは心臓リハビリテーションを行うクリニックが増えているという情報を耳にするようになりました。心臓リハビリテーションは一般にあまり認知されていませんが、心血管疾患を患った患者さんが適切な運動療法を継続して運動耐容能の改善を図ることで、予後に良い影響を与えるというデータがあります。そして僕の周りには対象となる患者さんがたくさんいる。にもかかわらず、スペースや時間、キャパシティーの問題で心臓リハビリテーションを提案できないことにジレンマを感じるようになりました。そこで、受け皿的な役割を担うクリニックを近くで開けないかと考えたんです。
心臓リハビリテーションの普及をめざす
心臓リハビリを特色とされていますが、どのような方が来院されますか。
心臓疾患は60代後半以降に増えてきますので、患者さんもその年代が中心になります。初診では40代、50代で動悸や息切れの症状を感じるようになった方も多くいらっしゃいます。また健康診断で心雑音や心電図異常を指摘されて、精密検査にいらっしゃる方も多いですね。もちろん、循環器疾患につながる高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の患者さんも定期通院されていますし、睡眠時無呼吸症候群や喘息、COPD等の呼吸器疾患、急性疾患など内科全般も幅広く診ています。後は心疾患のアフターケアという特色を打ち出しているので、八事日赤をはじめ地域の病院から、一度心疾患を発症した方の紹介を受けることもあります。また、ホームページなどの情報を見て他県からの紹介で受診される患者さんもいらっしゃいます。
心疾患のケアや心臓リハビリをどのようにサポートするのですか?
運動指導だけでなく、自己管理の方法をアドバイスするようにしています。どんな生活、運動をしたらいいかなど、患者さんの生活に入り込んで指導をしています。それぞれの意味合いや必要性を理解すれば継続性にもつながります。私がよく患者さんにお伝えするのは「最大の目標は元気で楽しく生活すること」。そのためには入院を避けたいので、血圧や体重を測って毎日の自分自身の状態を把握しましょうとお話ししています。また、起こり得る悪い兆候をあらかじめお伝えしておいて、何かあった時にすぐに相談しやすい存在でありたいと思っています。コンタクトをとってもらえないことには問題も発見できないので、何かあれば早く受診していただける関係づくりを心がけています。ご高齢の患者さんには具体的なアドバイスを繰り返し説明し、ときにはご家族にも一緒に話を聞いていただきながら、病気や治療に対する理解を深めていただくよう心がけています。
リハビリ室は素晴らしい眺めですね。
この場所を選んだのは、山手通の景色を見ながら街中で気持ち良く運動できるイメージを抱いていただけるかなと思ったからなんです。一方で、リハビリテーションは安全も保たれないといけません。心臓にとって大事なのは有酸素運動ですが、どのぐらいの負荷でやればいいのかは、なかなかわかりませんよね。そこで心肺運動負荷試験を受けていただき、適切な運動負荷量を科学的に見極めています。さらにリハビリ室にカメラを設置し診察室から遠隔でリハビリ室の様子が見られるようにしていますし、心電図などのデータも診察室でリアルタイムに確認できるようにしています。心臓を患うと動くことに怖さが出るものですが、安全性に十分配慮しながら運動できる環境が整っていると自負しています。週1回はここで筋力トレーニングや有酸素運動をして運動習慣をつくり、自宅でも同じことを週に数回は行っていただくように指導しています。
診療環境の充実化と密な医療連携で地域に貢献
心疾患以外にはどんな診療に注力していらっしゃいますか?
高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は狭心症・心筋梗塞や不整脈など循環器疾患につながることもあるので、一次予防として早期から治療を行うことが重要です。生活習慣病は状態によってはいきなり薬を飲むのではなく生活習慣の改善を図りながら、家庭血圧のデータや血液検査をチェックして治療の必要性を再評価することもできます。生活習慣の見直しと必要最低限の薬物治療でしっかりと生活習慣病を改善することによって、その後の心血管病のリスクを低減させることができます。また現在は薬の流通の問題で内服薬が処方できないのですが、禁煙治療も積極的に行っています。喫煙は血管病に対してリスクが非常に高いので、禁煙の必要性をお話しし、治療をしながら禁煙の獲得をサポートしています。
検査設備やスタッフ体制も充実していますね。
適切な治療を行うためには適切な検査が必要です。当院では一般的な血液検査の項目は当日に結果を出すことができますし、心電図、レントゲン検査、呼吸機能検査なども当日にできますので、検査結果をもとに治療につなげることができます。結果を聞くためだけに後日再来院していただく必要もないので、患者さんの負担も少ないのではないでしょうか。またエコーに関しても検査日を設けて臨床検査技師に担当してもらうことで、検査の精度や効率を高めていますし、緊急性がある場合は当日に私が行います。一方、心臓リハビリテーションに関しては、専門知識を持つ看護師や理学療法士がしっかりとサポートし、質の高い心臓リハビリテーションの提供に努めています。
今後の展望についても伺います。
名古屋市内で心臓リハビリテーションに対応している施設は多くないので、もっと当院のことを知ってもらい、運動指導と疾病管理を2本柱に再発予防を行っていきます。勤務医時代は診療所から紹介を受け、病院の医師という立場で検査や治療に携わってきました。開業した今は、その病院での医療と診療所の医療、どちらもわかる立場として患者さんの健康を守っていかなくてはならないと思っています。当院の近辺には八事日赤をはじめ多くの総合病院がありますので、緊密に連携をとりつつ、患者さんにとってベストな医療を提供できるようにしていきたいと思っています。そして1人でも多くの方の健康寿命を延ばし、豊かな生活を送るための手助けを行っていきたいです。