橋詰 直孝 名誉院長 、鈴木 眞事 院長の独自取材記事
どんぐりクリニック
(川崎市宮前区/宮崎台駅)
最終更新日:2025/07/11

東急田園都市線・宮崎台駅から徒歩1分の「どんぐりクリニック」。糖尿病や不定愁訴を専門とする橋詰直孝名誉院長、循環器内科を中心として長年従事してきた鈴木眞事院長など、複数人のベテラン医師たちが交代で診療にあたるクリニックだ。どの医師も専門性に基づく診療を行うが、幅広くわかりやすい医療を提供したいという思いで地域医療に貢献している。にこやかなスタッフたちに見守られ穏やかな雰囲気に満ちた院内で、橋詰名誉院長と鈴木院長に診療にかける思いなどをたっぷり語ってもらった。
(取材日2024年4月26日)
専門性を持つ医師たちが地域のために幅広く診療
まず、開業の経緯などから教えてください。

【橋詰名誉院長】ここにはもともと、整形外科クリニックがあったんです。知り合いの先生がやっていたのですが高齢で引退することになり、新たに内科、リハビリテーション科を加えて2020年2月に継承しました。その後、すぐに新型コロナウイルス感染症が流行しましたが、患者さんが自宅から出ることなく翌日にはPCR検査の結果を入手できる独自のオンライン診療システムを構築し、対応しました。現在も感染症患者さんの隔離室はそのまま残し、発熱のある患者さんのための外来診療も継続しています。たとえ新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行しても、地域の安心のためには欠かせないと考えています。
こちらのクリニックの特色はどのような点ですか。
【橋詰名誉院長】さまざまな専門性を持つ長い経験を重ねた医師が複数在籍しているところです。現在、内科8人、整形外科8人の医師が関わっていて、ほとんどが元教授または現役の教授として研究を重ねてきた経歴を持つ医師であることも特徴的だと思います。とはいえ、決して高圧的ではなく患者さんの気持ちに優しく寄り添う医師ばかりなのでご安心ください。帝京大学医学部附属溝の口病院、東邦大学医療センター大橋病院などとの連携も非常にスムーズですが、当院そのものも「小さな大学病院」をめざしています。例えば、私は糖尿病を専門としていますが循環器の合併症も多いので、循環器内科を専門とする鈴木院長に相談できるのは心強いですね。
鈴木院長がこちらで勤務されることになったきっかけ、現在の診療体制などについてお聞かせください。

【鈴木院長】橋詰名誉院長とは東邦大学医療センター大橋病院で一緒に仕事をしていたご縁があり、声をかけていただきました。複数の医師がいるので、患者さんの症状によっては連携を取りながら診療できるのが、当院の魅力です。消化器疾患の可能性がある場合には消化器内科の先生につなぐこともありますし、逆に心疾患の疑いありと私がバトンを引き継ぐこともしばしばあります。ただ、どの医師も来る曜日が決まっていてなかなか会えない先生もいます。そのためカルテは誰が見てもわかるように丁寧に書くようにしていますね。その他、医師と患者さんの橋渡しをしてくれる看護師、診察室では話しにくいようなことも自然に聞き出してくれるリハビリテーションスタッフ、患者さんへの温かな声かけを忘れない受付など、スタッフ全員の力で支えられているクリニックだとしみじみ思います。
患者の目線に立ち、一人ひとりの話に丁寧に耳を傾ける
次に、橋詰名誉院長が医師を志した理由やご経歴をお聞かせください。

【橋詰名誉院長】とにかく昆虫を含めた生き物に興味があり生物学者の道も考えましたが、最終的に医師の道を選びました。東邦大学卒業後は、当時の東邦大学医学部第二内科講座で不定愁訴症候群の名称を提唱された、故・阿部達夫教授のもとで研鑽を積みました。不定愁訴は体調不良の時に出る症状で、潜在性ビタミン・ミネラル欠乏症、ストレス、更年期、月経、気象の変化などさまざまな要因が関与しています。当時の第二内科は教授に与えられたテーマだけでなく自由に研究ができ、私も糖尿病昏睡で搬送された妊婦の患者さんを契機に排卵障害をテーマで10年ほど研究を続け、視床下部の分泌障害であることを見出しました。さらにいくつかの大学の学部長も勤めましたが、76歳で膵臓がん手術のため、51年間の大学研究生活に幕を閉じました。しかし現在は体力も回復し、患者としての立場を経験したことから、改めて地域医療に少しでも貢献したいと思っています。
鈴木院長もこれまでの道のりをお話しいただけますか。
【鈴木院長】父が開業医だったので兄も私も自然と医師を志すようになりました。東邦大学卒業後は途中でアメリカへ留学した時期を除き、65歳まで東邦大学医療センター大橋病院に勤務しました。主に循環器内科では避けて通れない画像検査に従事していたので、たいへん多くの症例を診ましたね。循環器の画像診断の難しさは、静止画像ではなく絶え間なく動き続ける心臓の映像から判断しなければいけないところにあります。現在も後進を育成していますが、独自技術なので一人前になるまで非常に時間がかかります。父の後を継いだ兄の診療所を週に1日は手伝う生活を30年以上経験し、地域医療にも貢献してきました。
お二人が診療で大切にしていることは何ですか。

【橋詰名誉院長】患者さんの立場になって考えることです。実は私も糖尿病を患い持続血糖測定器を装着しているので、数値に一喜一憂する気持ちもよくわかります。この測定器を導入しているクリニックはまだ少数かもしれませんが、高齢の糖尿病患者さんは自覚症状のない低血糖に注意する必要もあり、測定器を使って見守っていきたいです。今までの不定愁訴の研究を生かして健康サポート健診を始めました。
【鈴木院長】困っている方は誰でも受け入れ、しっかりと話を聞くのが私のモットーです。そのためにはまず、何でも話しやすい環境を整えることが欠かせません。ご高齢の方ほど「こんなことを言ったら怒られるかも」「ほとんど症状もないのに医療機関を頼っては悪い」などと遠慮しがちです。でも、診断の結果「病気じゃありませんよ」と笑い合えたら、それが一番ですよね。どんな小さな違和感でも気軽に来ていただきたいですね。
穏やかな雰囲気の通いやすいかかりつけ医
今後の展望についてお聞かせください。

【橋詰名誉院長】共働きファミリーも多いエリアですので、当院は土日も診療を行っております。そして火曜日を休診日としているのですが、この日を有効活用できないかと考えています。せっかく待合室が広々としているので、「介護カフェ」を開催して相談ができるようにするのもいいですね。また、リハビリルームを使って簡単な体操のレッスンなどもしてみたいですね。
【鈴木院長】プライマリケアクリニックとしてさまざまな病気を幅広く診ながら、循環器疾患が隠れていれば見落とさないようにしていきたいです。特にご高齢の方は元気に過ごしていても、よく調べてみると心臓に問題がある人も少なくありません。私が専門の一つとしてきた心臓弁膜症を患う人も多いのですが、必要があれば速やかに提携している大規模病院に紹介します。
これからどんな人に医療機関の受診を促したいですか。
【鈴木院長】たとえ20代、30代であっても健康診断で要チェックとなった項目があれば、放置せずにできるだけ早く受診してほしいです。心臓が後何年健康でいられるかは動脈硬化症、高血圧症、糖尿病の有無などで大きく変わってきます。血圧が高くても10年、20年はこれといった問題は表面化しないかもしれません。しかし、30年たった時には……という例をたくさん見てきました。一度ダメージを受けた心臓は元に戻りにくいことがあるので、そうなる前に一緒にしっかりと服薬管理していきましょう。
最後に読者へメッセージをお願いします。

【橋詰名誉院長】長い間、整形外科として地域で親しまれてきたクリニックなので、実は内科もあることはいまだに浸透していないかもしれません。整形外科の診察のついでに内科の相談もできますし、ぜひ気軽に活用してほしいです。不定愁訴に関しては食事や栄養のアドバイスも行っています。ご本人でもご家族でも、食欲がない、眠れない、イライラするなどの症状が続いているならば、一度いらしてください。設備面に関しても、解像度に優れた超音波診断装置、骨密度検査装置、エックス線撮影装置、各種リハビリマシンなど先進機器をそろえています。何よりも東邦大学第二内科講座が重んじていた「和をもって貴しとなす」という穏やかな雰囲気を大切にしながら、スタッフ一同で患者さんに接していきますので、身近なかかりつけ医として頼りにしていただければ幸いです。