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坂本 いずみ 院長の独自取材記事

さかもと内科腎クリニック

(名古屋市中区/栄駅)

最終更新日:2025/01/31

坂本いずみ院長 さかもと内科腎クリニック main

繁華街である栄に、多くの診療所や調剤薬局が一堂に会したビルがある。エスエル医療グループというこの医療モールに2020年1月に開業した腎臓内科が「さかもと内科腎クリニック」だ。坂本いずみ院長は、腎臓病の治療はもちろん、老年内科の診療にも注力。「腎臓病を患う方や、複数の疾患を抱える高齢者の主治医として、他の病気の治療や予防にも目配りして全人的な治療をしたい」と意義と展望を語る。腎臓病患者の実態を踏まえながら、総合的な医療をめざす坂本院長にその想いを聞いた。

(取材日2020年8月27日/情報更新日2025年1月27日)

腎臓内科の専門性を生かして開業

開業までの経緯について教えてください。

坂本いずみ院長 さかもと内科腎クリニック1

以前は総合病院で腎臓病と透析治療を担当していました。腎疾患の診療には、膠原病や老年内科の知識も必要なので、これらの分野の勉強もしました。急性期のチーム診療では、患者さんを助けるという一つの目的のため、医師やナース、医療スタッフと診療にあたります。パズルのピースが合うように治療がうまくいったときには強いやりがいを感じていました。そんな折、エスエル医療グループの腎臓内科クリニックである「鈴木内科」の閉院にあたり、先輩の鈴木善充先生から強いお誘いを受け、使命を感じて2020年1月に継承開業をしました。クリニックの役割は慢性疾患を安定させて合併症を防ぎ、生活習慣病の発症を予防すること、また重大疾患を早期に発見して急性期病院に引き継ぐことだと思っています。ギアを入れ替え、今後は開業医として地域医療のお役に立ちたいと思います。

こちらは、たくさんのクリニックが入った医療ビルなのですね。

35のクリニックと薬局が入っています。CTを備えたエックス線室や専門的な検体検査を行う検査設備もあります。それぞれ独立した専門のクリニックが総合病院に劣らないほどそろっており、ベテラン医師に継続的に診てもらえるところが魅力ではないでしょうか。エスエルグループの医師は、患者さんのため互いに連携していこうという気持ちが強く、必要に応じて検査結果の共有やお薬手帳の活用もしています。顔の見える関係ということもあり、医師同士、スタッフ同士もとても仲が良いんですよ。腎臓の専門家として他のクリニックの先生方にも必要としていただけているようで、そのことにも喜びを感じています。

患者さんはどのような方が多いですか?

坂本いずみ院長 さかもと内科腎クリニック2

いろいろな方が来られます。検尿異常や慢性腎炎は学生さんやビジネスパーソンが多いですね。オフィス街で交通機関のアクセスも良いので、安定した高血圧や糖尿病の患者さんが仕事の合間に受診されることもあります。慢性腎臓病は加齢による進行もあるので中高年の方が多く、つえや車いすでの通院もあります。栄在住の方も、県外から来てくださる方もいらっしゃいます。クリニック診療を始めてうれしかったのは、通院患者さんの多くが生活を楽しんでおられることです。病気のご苦労話ばかりでなく、趣味のこと、ご自身の生き方、これからやりたいこと、どう生きてどう最期を迎えたいかなどさまざまなことを話してくださるんですよね。このようなコミュニケーションを取りながら、一人ひとりの治療方針を患者さんと一緒に考えることが大切だと思っています。

腎臓病を中心に、複数の疾患を総合的にサポート

腎臓病とはどのような病気ですか?

坂本いずみ院長 さかもと内科腎クリニック3

尿を作るための臓器である腎臓にトラブルが起きると、余分な水や老廃物を体の外に出したり、ミネラルのバランスを取ったりすることが難しくなるため、進行するとむくみやだるさが出ることがあります。腎臓病の原因は、腎炎やネフローゼ症候群の他、糖尿病や高血圧といった生活習慣病などさまざまです。腎炎やネフローゼ症候群では、腎生検で診断して免疫抑制剤による特別な治療で完全寛解をめざすものもあります。生活習慣病による慢性腎臓病(CKD)は、長い時間をかけて進行し、やがて透析が必要となることもある負担の大きな病気です。初期には自覚症状がほとんどないため、判明したときにはかなり進行していることもあります。悪くなった腎組織は元の良い状態に戻ることはありませんので、とにかく早期発見が重要です。尿の泡立ちやむくみがある場合や、健診で血尿・たんぱく尿が指摘されたときはぜひ相談してください。

慢性腎臓病の治療はどんなものですか。

以前は血圧管理と食事療法が中心でしたが、2021年に登場したSGLT2阻害薬によって治療法が大きく変わりました。老年症候群の一つでもあるCKDと向き合い、多くの方が最期まで自分の腎臓で生活できることをめざしています。もちろん高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の管理も重要ですので、食事療法では塩分やたんぱく質の制限も行います。味つけのコツや外食の選び方など、専門の栄養士から具体的な提案も可能です。腎臓病が進行すると薬の制限や投与量の調整も必要になるため、歯科受診や感染症などの治療が難しいことも。そのため当院では、他のクリニックや病院と連携して適切な治療が受けられるよう調整もしています。その他、適度な水分補給や運動、禁煙も大切です。すべてを完璧に行うのは難しいと思いますが、生涯付き合っていく病気なので月に一度はご自身の病気と向き合い、無理なく着実に生活を整えていくお手伝いをしたいですね。

老年内科にも注力されているようですが、これはどんな診療科ですか?

坂本いずみ院長 さかもと内科腎クリニック4

加齢により、筋力や内臓の働きは衰え、視力聴力も低下するといった、いわゆる「老年症候群」が出てきます。さらに複数の病気を抱えたり、認知機能が低下したりして介護が必要になる方も。こういった状況に寄り添う専門の医療が老年内科で、高齢者の総合診療を担う科目ともいえます。コロナ禍の中では、多くの高齢者が感染予防のために運動不足となり、フレイル(筋力低下)や、孤独・不安の問題もありました。また高齢者の治療で考慮すべき点として薬の問題もあります。複数の病院で処方された薬の飲み合わせが悪かったり、行く先々の病院で睡眠薬を希望して飲みすぎてしまったり、腎機能が低下した小柄な方では通常量の薬でも多すぎたり。そのような場合には、主治医として全体をまとめるアドバイスをすることもあります。これまでの経験やキャリアを生かして、すてきに年齢を重ねていくことができるようお手伝いしていきたいです。

患者の知る権利を尊重したい

先生が医師をめざしたのはなぜですか。

坂本いずみ院長 さかもと内科腎クリニック5

子どもの頃から生き物が好きだったことと、「人の役に立つ仕事をしたい」と思ったのが医師になった理由です。多くの生き物に触れて、またその死をリアルに感じた少女時代の経験が、かけがえのない命の大切さを教えてくれたように思います。今でも生き物は大好きで、5人の家族と4匹の猫、そしてたくさんの花と暮らしています。

先生の医師としてのモットーを教えてください。

「わかりづらく難しい検査結果や患者さんにとって良くない情報であっても、きちんと理解してもらえるように丁寧に説明する」ということです。研修医の時、ある先輩医師はどんな患者さんにも検査結果をすべて丁寧に説明していました。「混み合った外来でここまで時間をかけなくても結果が治療につながれば良いのでは?」と私が質問したところ、先輩は「お金を払って自分の体をさらして検査を受けた患者さんは、すべてを知る権利があるのよ」と。当たり前のことですが、本当に感服し、私もその方針を守っています。

患者さんとの深いコミュニケーションを大切にしているんですね。

坂本いずみ院長 さかもと内科腎クリニック6

医師だけでは良い治療はできません。患者さんは病気と闘う仲間です。腎臓病は長く付き合っていく病気ですから、ご自身の病気について知ることはとても大切です。医師としての進路を内科に決めた時、先輩から「内科の医師には優しさが必要だけど、優しいだけでは駄目。その優しさは科学的な知識に裏づけられたものでなくてはいけない。一緒に勉強しよう」と言われました。患者さんにとって良くない話を伝えるときは特に慎重にお話しするようにしています。患者さんへの伝達の基盤になっているのは科学的な診療です。必ず根拠を持って治療をし、患者さんにも治療方針を理解していただくため丁寧にお話ししていきたいですね。疑問があれば気軽にご相談いただけるよう、まずは「話しかけやすい先生」でありたいと思っています。当院を受診された患者さんの期待に応えるためにも、今後も真摯に医療に向き合っていきたいです。

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