西崎 知之 先生の独自取材記事
新神戸ウェルネスクリニック
(神戸市中央区/新神戸駅)
最終更新日:2025/04/15

新神戸駅から直結するホテルの1階にある「新神戸ウェルネスクリニック」。広々とした院内は落ち着いた空間で、リラックスできる雰囲気だ。院長を務める関野秀継先生を中心に、先進機器を活用した人間ドック・各種健康診断をはじめ、消化器内科や婦人科を診ている同院。「病気になる前もなってからも、安心できる場所でありたい」との思いを全員で共有し、患者のために邁進している。2024年10月からは、認知症など脳疾患の悩みにも対応するべく、「脳の健康」を調べ、予防や治療に注力する部門を新設。この分野のエキスパートである西崎知之先生が新たに加わり、一人ひとりに合わせた「テーラーメイド治療」に力を入れている。今回は、同院ならではの特徴について西崎先生に話を聞いた。
(取材日2025年3月19日)
将来的なリスクも含め、認知症の早期発見・治療に注力
脳の領域の医師をめざしたきっかけやご経歴を教えてください。

体の中で脳は最も繊細かつ複雑で、未知の臓器です。私はそこに迫りたいと、脳神経外科の道を選びました。初めて脳を見た時、これが手足を動かしたり、言葉や感情をコントロールしたりするのかと不思議な気持ちになったことを覚えています。正常な脳が傷つけば、基本的に再生することはできません。出現した後遺症を完全に治すことも難しいでしょう。そこで、次第に治療の限界を感じるようになり、大学院で脳神経科学の研究を始めたのです。より多くの方の治療に貢献したいと志し、研究に重点を置いた臨床医をめざしました。大学院修了後は認知症治療の研究に従事するようになり、現在も当院で診療しながら、神戸国際医療交流財団で研究を継続しています。研究のための研究では意味がなく、成果を臨床の場に還元しなければならないという信念を常に抱いています。
先生が担当される脳疾患の外来の特徴をお伺いします。
私の外来では「脳の健康」を調べます。一般的な脳ドックから一歩進めた診療をめざし、認知症を中心に、頭痛やめまい、脳梗塞などの脳血管障害の診断も行います。アルツハイマー病では、その原因とされるアミロイドベータというタンパク質をターゲットにした薬が出てきたものの、基本的には症状の進行を抑えるための役割です。一度死んでしまった脳神経細胞は元に戻らないことを考えると、その前の段階でいかに早期介入できるかが重要です。例えば、軽度認知障害(MCI)の約半数は5年以内に認知症に移行するといわれますが、早期発見・早期治療により認知症への移行を軽減あるいは抑制につながる可能性が高まります。将来的な発症リスクも含めて患者さんの状態を調べることが大切です。
患者さんと接する時に大切にされているのはどんなことですか?

私の外来では、大半の患者さんが認知症の相談で来院されます。ただ、ご自分から「実は認知症が……」と切り出すことに抵抗感もあるでしょう。ですから、初診では「どうされましたか?」と尋ねず、世間話から始めます。そうした会話や、話す雰囲気を通じて、認知症の進み具合などいろいろなことがわかってくるものです。そこから質問を徐々に具体的にして、認知症の中核症状を確認します。時にはレビー小体型認知症を疑い、「幻覚はありませんか?」と聞くようなこともあります。それでも、常に気をつけるのは患者さんのプライドを傷つけないということです。検査も「検査をさせてもらえませんか?」とお願いする形を取り、「絶対に嫌だ」という方には無理強いしないようにしています。検査や健診を受けやすい雰囲気づくりを心がけるのは、当院の他の科も同様です。気軽に受診していただき、生活習慣病の早期発見や予防にもつなげていけたらと考えています。
豊富な知見と専門的な検査で「脳の健康」状態を診る
「脳の健康」を調べるために、どのような診療を行いますか?

認知症に対しては、問診をしてから、認知機能テスト(MMSE)、血液検査、頭部CT撮影を行います。中でも血液検査は、一般的な項目に加えて認知症のための項目も追加。今後の発症リスクの可能性も含めて診ていきます。新しい研究データも参照し、多角的な観点から早期診断につなげていけるのは、当院ならではの特徴だと自負しています。頭部の画像診断も同様で、海馬の萎縮度などを診て、アルツハイマー型認知症を含めたさまざまな認知症の診断に役立てています。また、認知症以外の脳疾患に関しては、血液検査、頭部CT、頸動脈エコーを用いて調べます。脳動脈瘤の疑いがある場合、CTアンギオグラフィーで確定診断も行える体制です。
治療について教えてください。
アルツハイマー病といった認知症の予防や治療を、既存の薬剤だけでカバーすることは現在のところ、残念ながら不可能と言わざるを得ません。私の外来では、それぞれの患者さんに合わせた「テーラーメイド治療」の提案を行います。食事や運動の指導もプランに組み込むことで、認知機能の維持・向上や全体的な健康をめざしていきます。なお、近年はアミロイドベータに加え、タウタンパク質もアルツハイマー病の原因の一つとして知られるようになってきました。タウタンパク質は脳内の神経伝達に必要なものですが、リン酸化すると「サビ」のような状態になり、神経回路に悪影響を及ぼすとされています。このリン酸化を抑制するための物質について、私も着目しています。
先生の外来には、どのような症状があれば受診すべきですか?

例えば、食事で何を食べたか忘れる、食事したこと自体を思い出せない、人の名前が出てこない、物をしまった場所がわからなくなる、といったことをはじめ、約束を忘れる、ちょっと前に言われたことを覚えていない、といった症状ですね。1つや2つではなく、5つ以上当てはまる症状があるかが目安です。他には、漢字が書けなくなった、計算、特に引き算が苦手になった、日にちや季節がわからなくなる、針表示式の時計の時間が読めない、薬の服用管理ができない。さらには、財布などが盗まれたと思ってしまう被害妄想や、実際にはいない虫が見える幻覚、怒りっぽくなるといった性格の変化。また、何事にもやる気が起こらない、夏に冬服を着たりするなども挙げられます。
一人ひとりに合わせた、先進的なテーラーメイド治療を
今後、クリニックがめざす方向性について教えてください。

認知症などに対する早期診断や、定期的なフォローアップに注力するとともに、先進の研究成果を取り入れ、常に先端の治療を提供することをめざします。例えば、神戸市の認知機能検診にしても、その後どうすればいいのか迷われる方もいらっしゃるでしょう。大切なのは、診断・予防・治療を一貫して診ることです。当院ではさまざまな知見を取り入れ、複合的なアプローチで一人ひとりに最適な治療のご提案を心がけています。高齢化が進む社会で元気に生きられることは、一つの財産といえるでしょう。健診や検査を通じてより健康な毎日を送っていただきたい、また、より安心できる診療も提供したいと思っています。多くの方の健康ニーズにお応えできるように尽力しております。
地域医療への貢献について、考えをお聞かせください。
地域はもとより、全国で悩みを抱えている方やそのご家族に当院を知っていただき、貢献できたらと思っています。特に認知症については、アルツハイマー病だけでなく、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などさまざまなタイプがあります。鑑別診断を行ってから、その方に合った「テーラーメイド治療」を行うよう努めていますので、ぜひご相談いただきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

認知症はれっきとした病気です。世間では恥ずかしい病気とも思われがちですが、病気に恥ずかしいも何もありません。認知症を病気として捉え、「予防や治療をしなければならない」と改めて認識すべきでしょう。病気になりたくてなる方は誰もいませんし、自分は大丈夫だと過信するのは危険です。大丈夫である保障や根拠はどこにもないからです。不治の病とされたがんは、早期に発見すれば完治も望めるようになってきました。認知症も同じだと考えています。すべての高齢者が人生を謳歌できるよう、認知症のない世界を実現することを使命として、今後も「脳の健康」状態を診るために先端技術を用いて早期診断や予防を支援していきたいです。また、クリニック全体でも「病気になる前も病気になってからも、安心できる場所でありたい」という思いのもと、予防医療を推進する医療機関ならではの診療をご提供します。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/4万6,400円~、脳ドック/2万5,300円~