室賀 一宏 院長の独自取材記事
オペラシティクリニック
(新宿区/初台駅)
最終更新日:2026/10/15
初台駅直結の高層オフィスビルの7階にある「オペラシティクリニック」。院内へ入ると、落ち着いた雰囲気の空間が現れ、待合室には「生薬ミニ博物館」と名づけられたコーナーが設けられている。ここでは漢方薬の原料となるさまざまな種類の生薬が展示され、実物を見るだけでなく、匂いを嗅ぐこともできる。院長の室賀一宏先生は、長らく一般内科と腎臓内科で研鑽を重ねた後、漢方診療を本格的に学んだ経歴の持ち主。同ビル内の会社に勤めるビジネスパーソンと近隣住民が気軽に相談できる役割を担い、必要に応じて西洋医学と漢方を組み合わせた診療を行うことを特徴としている。「漢方内科ではエキス剤に加え煎じ薬も処方し、さまざまなお悩みに対応します」と語る室賀院長に、診療方針や診療内容、そして漢方について話を聞いた。
(取材日2026年8月9日)
生活習慣病などの内科全般に加え、漢方診療にも注力
院長就任までの経歴について聞かせてください。

獨協医科大学卒業後、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)第2内科に入局しました。大学院修了後、いくつかの関連病院で腎臓内科や一般内科の診療にあたりました。専門は腎臓内科ですが、患者さんがそれほど多くなかったこともあり、高血圧症や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を中心に、さまざまな疾患を診ていました。その後、医局を退職し、以前から興味のあった漢方を学ぶために複数の病院やクリニックで研鑽を重ねました。当院は、最初は非常勤で入職したんですよ。前院長が急きょ引退されることになって、2017年からは私が院長を引き継いでいます。以前は内科のクリニックでしたので、内科と漢方内科を標榜するようになったのは、私が院長になってからです。
診療方針とどのような診療を行っているのかを教えてください。
当院はオフィスビルの7階にあるクリニックですので、初台エリアで働くビジネスパーソンにとっての保健室的な役割を担っていると自負しています。風邪や腹痛といった急性期疾患や花粉症などのアレルギー疾患も診ますし、高血圧症や糖尿病、脂質異常症といった慢性疾患である生活習慣病の患者さんがなるべく良い状態を維持できるように努めています。また、私は日本東洋医学会漢方専門医でもあり、患者さんのさまざまな悩みに対して、漢方を用いて向き合っています。必要に応じて、西洋医学と漢方を組み合わせ、一人ひとりに適切な診療を行っていることも当院の強みです。近隣でお勤めの方と、お住まいの方とが半々くらいで来てくださっていて、お子さんや高校生もいらっしゃいますよ。
一般内科の診療において特徴はありますか?

当院では対応できない専門の診療が必要な場合に備えて、病診連携には力を入れています。例えば、胸が苦しいと飛び込みで来られた患者さんに心筋梗塞の疑いがある場合は、循環器の専門家がいる病院へ連絡して、治療を受けていただき、退院後は当院で診るといった対応を行っています。場合によっては、同日中に当院と連携病院の両方を受診できることもできますので、患者さんにとっての安心材料になっているのではないでしょうか。一般内科では私も生活習慣病を診ていますし、循環器と糖尿病・内分泌については、週1回の頻度で、それぞれ日本循環器学会循環器専門医と日本糖尿病学会糖尿病専門医の非常勤医師が診療を担当しています。
漢方を適切に使い分け、幅広い症状に対応
漢方診療に興味を持たれたきっかけは何だったのですか?

私の祖父と父が、ともに漢方を専門とする医師だった影響が大きいです。実家では、父が漢方専門の診療所を営んでいましたから、生薬を保管するための小さな引き出しがたくさん並んだ百味だんすもあり、子どもの頃から漢方薬には慣れ親しんでいました。医師になってからも、いつかは漢方診療に携わりたいと思い、医局を辞めた後に、日本漢方医学研究所附属渋谷診療所や新宿海上ビル診療所(現・新宿つるかめクリニック)など、5ヵ所の病院とクリニックをかけ持ちしながら漢方診療の研鑽を積みました。現在も新宿つるかめクリニックでは、月1回の頻度で漢方と腎臓内科の非常勤医師を勤めています。
漢方診療の特徴について教えてください。
西洋医学が病気の原因を臓器別に追究するのに対して、漢方は自覚症状や脈、舌の状態、おなかを触った感触などから体全体の乱れを診ます。ですので、不定愁訴といった西洋医学では解決できない問題にアプローチできることが大きな特徴です。体調が悪くなる原因とそれぞれの体の反応を考えて処方しますので、同じ症状の方に同じ処方を用いるとは限りませんし、逆に一つの処方でもさまざまな症状に対応できることもあります。また、西洋医学の薬に加えて、漢方薬を処方することが有用なケースも。当院では漢方内科を標榜していますが、内科だけでなく、婦人科、皮膚科、泌尿器科、整形外科など、ほかの診療科に関する症状で悩む患者さんも来院されています。
どのような症状に漢方薬を処方するのですか?

疲れなどの不定愁訴や風邪、胃腸虚弱、肩凝り、冷え症、便秘、不妊症、月経トラブル、更年期障害、アトピー性皮膚炎、ニキビ、花粉症、鼻炎など、幅広い症状に対応しています。新型コロナウイルス感染症の罹患後の諸症状に対応することもありますね。また、打撲などの痛みに有用な漢方薬もあり、例えば高血圧症の患者さんと話していて膝関節症で悩まれていることがわかると、漢方薬を提案することもあります。エキス剤、煎じ薬は、患者さんの希望や必要に応じて、処方しております。
めざすのは、患者が本音で話すことができる関係性
診療で大切にしていることを教えてください。

患者さんの話を丁寧に聞いて、自分だったらどうしてほしいかを基準に対応しています。特に漢方診療では、リラックスして本音で話してもらえるような関係性を築くことが求められます。なぜなら、生活習慣や日々の過ごし方によって、処方が変わることもあるからです。患者さんが「食欲はある」と答えても、実は一般的な人の半分くらいの量しか食事を取っていない場合、強い薬を出すと食欲がさらに弱くなるリスクも出てきます。なので、もともと小食の人には、胃腸が弱くても服用できる薬を出すといったことを考えなければいけません。患者さん本人の基準と医師から診たときのズレを確認するためにも、本音で話していただいて初めて適切な診断ができるのです。例えば、心療内科に通われている患者さんだと、話しづらいことも多いでしょうから、親身になって信頼関係を築くことがとても重要です。
漢方診療の理解を広げるための工夫や取り組みはありますか?
当院の待合室にある「生薬ミニ博物館」は、せっかく漢方診療を軸としているのだからと思い、患者さんに興味を持ってもらうために作ったものです。瓶の中に入れている生薬は、実家で余っていたものを持ってきました。また、東京科学大学歯学部で年に1回漢方の講義を行っているほか、放送大学でも講義を請け負っているんですよ。年に1回2日間行っている漢方入門の授業で、50人くらいの学生さんに開いています。去年は100人ほどの応募者がいたそうで、毎年授業を行った後は、受講者の何人かが当院に来てくださるなど、大きな手応えを感じています。
最後に読者にメッセージをください。

西洋医学、漢方診療を問わず、何か気になることがあれば気軽に来院してもらえる存在でありたいですね。「漢方薬だけ」、「西洋薬だけ」ではなく、患者さんの希望に合わせて診療します。生活習慣病も西洋薬と漢方薬を併用することで、改善が期待できることもあります。漢方薬は長く飲まないと効きにくいというイメージもありますが、風邪や下痢などの急性疾患は短期間での改善も見込めます。慢性疾患は比較的長い時間がかかりますが、改善が見られない場合は途中で処方を変えることも。漢方薬には、イボ痔や切れ痔に対しても紫雲膏という軟膏がありますし、虚弱体質の方に補中益気湯を処方することもあります。困った症状でも、ぜひ諦めずに相談してください。

