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井出 雄一郎 院長の独自取材記事

ふくろう在宅クリニック

(各務原市/蘇原駅)

最終更新日:2022/10/18

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各務原市内の往診・訪問診療を行う「ふくろう在宅クリニック」は、JR高山本線・蘇原駅から徒歩約7分。落ち着いた住宅街が広がる幹線道路沿いに立ち、駐車場も完備している。井出雄一郎院長は、一般内科、循環器内科、救急医療を経て、在宅クリニックで終末期医療・緩和ケアを含む在宅医療に従事し、昨春開院。包み込まれるような、優しい笑顔と穏やかな語り口が印象的だ。「動き回ること、人とコミュニケーションをとることが好きな自分にとって、この仕事は天職」という井出院長に、在宅医療に取り組むようになった経緯や診療で大切にしていることなどを聞いた。

(取材日2020年2月13日)

患者に触れて心を通わせることを第一に

往診・訪問診療のクリニックということですが、院内はとても広々としていますね。

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医師は私一人ですし、外で仕事をしている時間が長いので、広いスペースは必要ないのかもしれません。でも、スタッフが気持ち良く働けて、心が和むような空間にしたいと思ったのです。明るい木目の雰囲気を大切に、スタッフ用のキッズルームもつくりました。スタッフの心にゆとりがないと、患者さんの心を和ませることはできないと思うのです。

医療機器など、他に重視したことはありますか?

ポータブルエコーは必要不可欠なので、こだわりのものを用意しています。時には、患者さんを他院に紹介したり、救急の外来にお願いすることもあるので、診断に必要な検査機器はきちんと良いものをそろえたい。患者さんに対して適切な判断や処置をすることにつながるのはもちろん、専門の医師に対してもしっかりした根拠をもってお願いすることが誠意だと思うのです。

日々の診療で大切にしていることや、患者さんとのコミュニケーションの深め方を教えていただけますか?

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一番大切にしているのは、触れること。患者さんの頭からつま先まで手で触ることですね。発熱や皮膚のかさつきなど触って判ることもありますが、コミュニケーションを深める意味でもきちんと触ってもらうと緊張がほぐれるだけでなく、患者さん側は診てもらっているという安心感をもつと思うのです。実際、患者さんの表情も変わります。「ここが痛いんですか?」ではなく「ここが痛いんですね」と、患者さんに触れ、気持ちに寄り添う診療を心がけています。また初めて訪問した時は、スタッフと、患者さん、そのご家族と皆で集合写真を撮り、次の診察時に渡しています。初診はケアマネジャー、訪問看護さんなどが集まって訪問しますが、その後は別々に伺うことになるので、「あなたを支えるチームです」という意味合いを込めて。人って、一緒に何かをすることで絆が深まると思うのです。写真を一緒に撮ることで、少しでも親近感が出ればいいなと思い始めました。

もともとは循環器内科を専門としてきたそうですね。

出身は福岡で、大学は埼玉の防衛医科大学校に進みました。母校の病院で研修中、憧れた先生が循環器内科にいて同じ道に決めました。2年間の研修後は、自衛隊医官として全国各地にある自衛隊の病院に勤務することになります。九州へ帰るつもりでしたが、配属先は札幌。一般内科の勤務ではありましたが、診察は風邪と水虫が多かったですね(笑)。週2回、心臓血管の専門病院でカテーテル検査にも従事するうちに、もっと経験を積みたいと思うようになりました。その後、総合犬山中央病院の循環器内科に移り、自分の技術も向上して患者さんを救うことにやりがいを感じていましたが、ふと他の分野に身を置いてみたいなと考え始めたんです。ちょうど、その頃大学の同期が在宅クリニックの院長をしていて、それからそこに勤務したのが在宅医療との出会いです。

みんなで協力し、幸せな在宅生活を送る手伝いを

実際に、在宅医療を始められていかがでしたか?

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もともと人と接することが好きなので、患者さんの家に行くのも患者さんと話すのも、自然体でできたし、自分に向いているなと思いました。また患者さんは多種多様な持病をお持ちで、重篤な疾患を抱える方も多い。循環器内科で心不全などの患者さんを診てきたことも生かせています。さらに仕事場は、カテーテルに従事した頃の病院の密室ではなく、ご自宅というオープンな場。ご家族がどう思っているかも見え、希望に沿った治療を行うので、急性期治療や循環器内科時代と違い、自分が行ったことに納得できる。そのことも自分に合っていてよかったです。ご家族と話す時、こたつで患者さんの若い頃や結婚式の写真などを見せてくれることも。そうした時間を共有することで、疑似的家族のような感じになっていく。医師と患者ではなく、親戚みたいに思ってもらえたらうれしいですね。前任地の時代がなければこの道へは進んでないと思いますし、感謝しています。

開業のきっかけと、この場所を選んだ理由について教えてください。

より患者さんの家族が見え、寄り添えるようなクリニックを自分でつくりたいという思いが強くなったからですね。車でも自宅から近くないと夜間対応ができませんし、このエリアには在宅専門のクリニックもなかったので困っている人も多いのではと考えました。クリニック名のふくろうは知恵の象徴として森の賢者といわれるだけでなく、「不苦労」「福籠」など幸せの象徴とされています。皆で知恵を出し合い協力し、幸せな在宅生活を送っていただくお手伝いができればとの意味が込められています。もともと動物好きで、ふくろうも大好きなんです。妻の実家は北海道のオホーツク海のほうなのですが、ふくろうが見られるんですよ。今では患者さんやご家族が「ふくろう先生」と呼んでくださる。親しみやすくていい名だと気に入っています。

先生が医師をめざしたきっかけについて教えてください。

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医師をめざそうと思ったのは、中学、高校時代くらいからですね。最初は、英語が好きで、外を動き回るのも好き。外交官に魅力を感じたのですが、何かの本で「人の役に立つことが仕事だ」というのを読み、もっと直接的に人の役に立てる仕事はと考えました。医師はありがとうと言ってもらえる仕事、まさに人の役に立つ仕事だと思ったわけです。こうして医師になった今、特に在宅医療の仕事は僕にとって天職だと思います。これからもっとよくしていきたいというアイデアもたくさんあるんですよ。

在宅医療をより身近なものとして活用してもらうために

スタッフについて教えていただけますか?

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看護師が常勤1名、非常勤1名。事務方は常勤2名、パート1名という体制です。優しいスタッフばかりで、訪問診療の準備から予定の調整まで診察以外は全部任せていて、本当に頼りになるんです。私を含め皆で大切にしているのは、「優しさ」です。特に、電話対応を優しくということ。電話をかけづらくしてしまうと、患者さんが悪くなってから連絡ということになる。顔が見えないのでよけい注意が必要で、電話をして良かったと思えるよう、些細なことも電話できるような雰囲気を大切にしています。

毎月、勉強会も開いているそうですね。

月1回、ケアマネジャー、訪問看護師とともに勉強会を開いています。例えばベッドについて学んだ時は、業者に介護ベッドの構造から説明してもらい、楽な寝方を教えてもらうなど。実際に上げ下げの操作をして、寝てみる。目を閉じたまま動かされると怖いですし、開けていたほうが安心だということが判ります。そうしたことを実感することで、より患者さんの立場になって考えることができます。最後にアンケートを取り、次回のテーマに生かすなどしています。みな熱心に集まってくれるので、続けていきたいですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

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在宅医療はまだ全然浸透していないと感じています。「頼みたいが、言い出しにくい」という壁を取り除くにはどうすればよいかを日々考えています。在宅医療を受けるには「通院困難な人」という定義がありますが、「行く意欲がわかない」という理由でも可能。そのことも十分伝わっていないと感じます。当院の看板を見上げている人は結構います。怖がらずにドアを開けて入って来てください、気軽に電話してくださいと言いたいですね。在宅医療を10年受けているという方も珍しくない時代です。終末期医療についても、つらくない生活、急降下でなくソフトランディングのお手伝いはできると思います。また、今後ディグニティセラピーといって人生の最終段階を迎えた、その人の“尊厳”を守るケアなどを周りの人に伝えるお手伝いをしていきたいと思っています。

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