柴村 英典 院長の独自取材記事
海田よつ葉クリニック
(安芸郡海田町/海田市駅)
最終更新日:2025/09/10
広島市と呉市をつなぐ国道31号沿いにある「海田よつ葉クリニック」。院長の柴村英典先生は、心臓血管外科・一般外科の医師として多くの基幹病院で30年近くにわたり経験を積み、地域のかかりつけ医として質の高い医療を提供したいという思いで2019年に開業。専門である循環器疾患をはじめ一般内科、生活習慣病の管理、けがや外傷の処置まで幅広く対応する。また、約20年も前から取り組んでいる下肢静脈瘤の治療や日帰り手術にも注力。自身の専門性と幅広い知見を生かし、地域に貢献したいと日々の診療に取り組んでいる。気さくで親しみやすい雰囲気で、「どんな小さなことも相談でき、役に立てる医師でありたい」と話す柴村院長に、地域医療への思いや得意とする下肢静脈瘤の治療について語ってもらった。
(取材日2025年7月17日)
内科から循環器疾患、下肢静脈瘤の治療まで幅広く診療
先生は心臓血管外科を専門とされていますが、開業するまでの経緯をお聞かせください。

心臓血管外科や一般外科の医師として、広島大学病院、市立三次中央病院、広島市立北部医療センター安佐市民病院、マツダ病院などで循環器疾患の手術や治療に携わってきました。循環器疾患には、高血圧症や心不全などの心疾患をはじめ、脳梗塞・くも膜下出血などの脳血管疾患や動脈瘤、静脈瘤などがあり、私は心臓と血管に起こる疾患全般について経験を積みました。心臓血管外科は、手術による機能の向上や患者さんの生活の質が上がっていく様子が早い段階でわかることが特徴で、そこに大きなやりがいを感じました。長く勤務医を続けていたのですが、定年を迎える頃になって「これからは何か地域の役に立てることをしたい」という思いが強くなり、2019年に開業しました。
こちらではどのような診療を行っているのでしょうか。
内科、外科、循環器内科、血管外科を標榜しています。内科では風邪や腹痛、生活習慣病などの診療、外科は擦り傷や打撲、外傷などの治療を行っています。私は総合病院の外科でさまざまな症例を診てきましたので、体調が気になるといった心配事、また何科にかかればいいかわからないといった症状にも幅広く対応できます。さらに足の血管がこぶのように膨れる下肢静脈瘤の患者さんも多く来院されます。特に脚を出す機会が増える初夏から夏にかけて、見た目が気になるので治療したいという相談が増えますね。患者さんは近隣に住んでいる方をはじめ、広島と呉の通勤圏なので、会社の健康診断で異常が見つかったので診てほしいという働き盛りの方も多くいらっしゃいます。
診療の際に心がけていることをお聞かせください。

やはり患者さんとしっかり話をすること、患者さんの訴えに耳を傾けることです。例えば足がむくむという症状でも、静脈に問題が隠れている場合もあります。ですから単に起こっている症状だけを診るのではなく、考えられる原因や隠れている疾患の可能性などを探り、早期に病気を見つけ適切な治療につなげることが重要です。そのためにも、患者さんが何に困って来院されたのか、不安なことは何かなどを丁寧に聞くことが大切です。私も話し好きなので、つい話し込んでしまうことも多いのですが、まずは患者さんが困っていることを一緒に解決したいという思いで診療しています。皆さんに安心していただけるような診療を心がけていますので、気になる症状があれば、どんな些細なことでもご相談ください。
下肢静脈瘤の日帰り手術で患者の負担を軽減
下肢静脈瘤について詳しく教えてください。

下肢静脈瘤は、簡単に言うと脚の血管の故障です。血液は心臓から全身を回ってまた心臓に戻りますが、足にある静脈の弁が故障することで血液が心臓に戻らずにたまってしまい、こぶのように膨れてしまう疾患です。良性疾患で命に関わることはないのですが、足がむくむ、ふくらはぎがだるい、痛いといった症状のほか、夜寝ている時に足がつるといった症状も起こります。また、湿疹や色素沈着などの皮膚炎を起こす場合もあり、悪化すると潰瘍ができたり出血したりすることもあります。下肢静脈瘤は女性に多く、妊娠・出産をきっかけに発症する場合のほか、立ち仕事をする人にも多く見られます。放置すると見た目の問題だけでなく日常生活にも支障を来すことがあるので、長引く足のむくみや痛み、しびれなどがあれば受診をお勧めします。
どのような治療法があるのでしょうか。
当院では血管内焼灼術による日帰り手術のほか、硬化剤を静脈瘤に注射する硬化療法、また弾性ストッキングによる圧迫療法に対応していて、疾患の状態や患者さんの要望に合わせて選ぶことができます。現在は体への負担が少ない血管内焼灼術を主に行っています。膝付近の皮膚に針を刺し、極細の高周波カテーテルを挿入して高周波による熱で逆流を起こしている静脈を閉塞することで症状の改善を図ります。術中、術後の痛みに配慮し、手術は全身麻酔で行います。説明や検査、麻酔を含めても所要時間は30分程度。眠っている間に終了します。術後は手術翌日、1週間後、1ヵ月後、半年後とこまめに経過をチェックしていきます。また手術の必要がない場合は医療用弾性ストッキングの着用を勧めています。締めつけることで血流の改善を促しますので静脈瘤の悪化防止に有用です。足首の運動やウォーキングを習慣にすることも下肢静脈瘤の予防に役立ちます。
ほかに、血管に関わる症状で気をつけることはありますか?

最も注意すべき疾患は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、それから脳梗塞や脳出血などの脳の疾患、足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症などです。特に心臓や脳の疾患は、兆候を見逃さず早期に治療を開始することが重要になります。例えば、足に違和感があって歩きにくい、歩くと足が痛む、しびれがあるなどの症状で検査をしたら足の動脈が詰まっていたというケースもあります。足の血管の異常が心臓や脳の血管にも影響を及ぼすことは十分考えられますから、痛みやむくみ、しびれなどが気になる方は早めの受診をお勧めします。特に高血圧症や糖尿病、高コレステロール血症などの方は、何かしら違和感があればご相談ください。速やかに検査をすることで早期発見・治療につなげることができます。当院では血管を調べる検査機器も取り入れていますので、気になる症状があればすぐに受診していただきたいですね。
地域のクリニックとして病気を「見定める」目を大切に
町のクリニックとして大切にしていることは何でしょうか。

地域のかかりつけ医は、症状を診て「すぐに治療する必要があるかどうか」という判断をすること、緊急性と危険性の高さを見極めることが最も重要な使命と考えています。医師になったばかりの頃、先輩に「一番大事なのは、診察でその患者さんに緊急性があるかどうかを見極めることだ」と言われたことがあります。その言葉は今も胸に残っていて、私の診療姿勢につながっています。心臓や血管の病気の中には命に関わる重篤な疾患も多いため、胸が痛い、おなかが痛い、足が痛いといって来院されたときに、隠れている疾患はないかを見定めることが私の役目だと思っています。特に高齢の方や持病がある方はリスクも高いので、常に疑いを持って診断をつけることが大切です。
今後の展望をお聞かせください。
どんな症状でも診る、患者さんの困り事を解決して差し上げるという姿勢は変わらず、日々の診療を地道に続けていき、地域の皆さんに信頼されるかかりつけ医になっていきたいと思います。「あのクリニックに行けばけがでも頭痛でもなんでも診てもらえて安心できる」と言ってもらえるようになれたらうれしいですね。新しい治療法や薬もどんどん開発されていますから、常にアンテナを張り勉強を続けて、患者さんの役に立てるよう努めていきます。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

私は常に「来る者拒まず、皆さんが困っている時に頼りにできる医師でありたい」と思っています。感染症や生活習慣病など内科に関わる症状や外傷、打撲などの外科的治療、腰痛までなんでも診療していますので、けがをした、痛みがある、胸が苦しいなど気になることがあれば気軽にいらしてください。足の痛みやむくみ、下肢静脈瘤に関しては大きな病気が隠れている場合もありますので「たかがむくみ」と自己判断せず、一度ご相談ください。どんな小さなことでも相談できる家族のかかりつけ医として、今後も皆さんの健康を守り続けたいと思っています。

