木村 雅之 院長の独自取材記事
菰野きむら歯科
(三重郡菰野町/菰野駅)
最終更新日:2024/08/07

菰野駅近く、宿野中交差点先右手に「菰野きむら歯科」の駐車場が見えてくる。美しい自然に恵まれた地域の中心部となる住宅街に歯科医院を開いたのは、院長の木村雅之先生だ。院長は四日市市の出身で、九州の大学卒業後から三重県に戻り勤務。予防歯科に取り組んでいくために菰野町で開業した。幼稚園の園医を務めながら、歯科医院の少ない当地で地域医療を充実させるべく、奮闘を続ける木村院長。虫歯治療に頼りすぎず、患者自身が自分の歯をしっかり守れるようになるため、時間と回数をかけた丁寧な治療と生活指導を行っているのだそう。その診療に対する想いについて聞いた。
(取材日2020年3月10日)
永久歯でも患者の年齢によって虫歯の進み方が違う
開業までのご経験を教えてください。

誰かの役に立てることがうれしいと感じるほうなので、学生時代から医療系に進みたいと思っていました。九州歯科大学に進んで2010年に卒業し、三重県に戻って2つの歯科医院での勤務医経験の後、2016年9月に開業しました。勤務していた歯科医院で働いているうちに見えてきたことがありました。虫歯や歯周病になる人はなるし、ならない人はならない。虫歯を治療してもまた戻ってくるのが予想できる患者さんがいる。同じ人が繰り返し虫歯になり、最後には歯を失うというのはどうしてなのか。丁寧な治療をしているつもりなのに、僕はいったい何をしているんだろうと思うようになったんです。そうしていくうちに、自分のやりたい歯科医療の形がはっきりしたんですね。勤めていると自分のやりたい治療ができるわけではないので、それなら独立しようと考えたんです。
興味深いお話です。同じ人が繰り返し虫歯になるのはなぜでしょうか。
虫歯や歯周病になる原因は一人ひとり違いますが、原因追究せずに、単純に治療だけを終わらせれば、当然これらは繰り返されます。患者さん自身がリスクをわかっていないと良い治療になりませんので、歯科用CTや位相差顕微鏡も導入しました。唾液検査は虫歯の進行スピードを把握するのに役立てています。虫歯菌の状態を見て、虫歯が何本もあるけれど菌が悪さしているわけではなさそうだ、それなら食生活はどうなのか、歯磨きができていないのか、それともまた別の理由か、など詳しくお話を聞いて確認します。そして「これを改善すれば、自分はよくなっていくんだ」と理解していただけるよう指導していきます。
予防歯科に注力されているのですね。

そうですね。原因追究をここまで徹底する歯科医院はあまりないんじゃないかと思います。子どもの場合、親御さんの訴えで一番多いのが1年も2年も歯科医院に通っているのに、きれいに治らないというご相談です。子どものほうが食生活の影響を受けやすいですから、食生活アンケートから親御さんへの食事指導を行います。一緒に治療を行うと、お子さんと同じ傾向が見つかることもあります。乳歯と永久歯でも虫歯の進行するスピードは違いますし、永久歯でも年齢によって違います。原因を見つけて、指導を含めて治療を徹底しないと、どんなに腕がいい先生が治療しても再び虫歯ができると思うんです。
記録を積み重ねて患者と共有、小さな変化も見逃さない
治療の流れを教えてください。

まずは問診で患者さんの訴えを聞いて、次に今までの治療経験をお尋ねします。小さな穴が開いていても、痛みがなければ治療を後回しにすることもあります。虫歯には進行性のものもあれば慢性のものもあるので、どの歯を先に治療しないといけないのか、見極める必要があります。ただし、痛みがあれば応急処置は行います。まずは歯石などの汚れをとり、歯磨きがしっかりできているかどうかチェックして、セルフケアで自分の口腔内を清潔に保てるように基礎体力作りを行います。当院では歯科衛生士は5人いて、担当制なので患者さんと二人三脚で取り組みます。こういう流れで進めているので、当院での治療は時間がかかる方が多いです。
治療は個室で行っていますね。
こだわったポイントです。削ったものはどれくらい飛ぶか、ご存じですか? 実験では5mも飛んでいるんです。ですから、治療は基本的に個室で行いますが、閉鎖空間になってしまうので圧迫感が出ないよう、ガラスの仕切りで天井を高くして、開放的な雰囲気にしています。衛生上のメリットだけでなく、プライベート空間になるので患者さんが打ち解けて話をしてくれるのも良い点ですね。診療台は5台で、僕が使うのは1台、ほかは歯科衛生士が使います。当院での治療は短い人でも30分以上かかるので、子連れでも安心して治療を受けられるようにキッズスペースを用意し、保育士がお子さんの様子を見ています。
診療の際の心がけを聞かせてください。

一つ一つの仕事を丁寧にすること、口腔内写真、細菌の数など患者さんの記録を取り続けることですね。そうすると変化がわかります。歯茎が下がってきたか、口内炎が大きくなっていないか、がん化していないか、変化を記録して見落としのないよう患者さんとも共有します。画像や数字など、見て違いがわかることは、患者さんにとっても理解しやすいと思います。そのために、モニターやタブレットなども診察台の数以上に用意しています。記録をするのも毎回同じスタッフです。検査一つにしても、例えば歯茎の検査でも、担当者の技量によって歯周ポケットの深さや出血部位が変わり、結果が左右されます。小さな違いを見逃さないことが良質な医療となるはずです。
自分が治療した口腔内は2度と壊させない決意
患者向け院内セミナーを定期的に実施されています。

虫歯の原因の6割から7割は食生活に起因するもので、歯磨きさえしておけば虫歯にならないわけではありません。そのための歯科衛生士からの指導と教育を行っています。一方で歯科医院の数は足りていません。みんなで知識を持ってもらえば、日常のケアで歯を守れるようになり、虫歯になる可能性を減らしていけます。そうすれば、歯科医院ではチェックをすることが中心になり、地域医療の負担も小さくなり、みんなが幸せになるのではないでしょうか。今後は、同じ志の歯科医院が増えてほしいですね。僕一人で取り組んでいても大きな変化につながりづらいですし、将来的には引き継いでくれる人も必要です。
この仕事のやりがいを教えてください。
患者さんの健康意識が上がっていくのを見て、歯科医師になって良かったと思うようになりました。虫歯にならないための診療に取り組んでいくことで、患者さん一人ひとりの人生に触れることになると、改めて実感したんです。普通の歯科医師は患者さんから感謝の言葉をもらって実感するのでしょうが、当院の場合は、僕よりも歯科衛生士さんたちが患者さんから「ありがとう」と言われることが多いんですよ。歯科衛生士さんたちは、年賀状やお手紙もたくさんもらっていますしね(笑)。
今までの歯科への印象が変わりそうです。

多くの方にとって歯科は「痛くなってから行く場所」なのではと思います。でも歯科の本質は歯を「治す」場所ではなく、歯を「守る」場所なんです。疾患にならないために通う場所だということをこれからもお伝えしていきたいと思います。また、歯周病などの疾患は全身にも影響を及ぼすため、「歯科を通して全身の健康に寄与していくこと」が僕たちの使命だと考えています。歯科衛生士さんたちのアドバイスや指導を通して生活習慣に対しての意識が改善されれば、将来的な疾患を防ぐことも可能だと思っています。歯を守ることができれば結果的に日本の医療費も抑えられますから、当院では予防歯科を通して一緒に日本への貢献もしているという気持ちも共有しながら、診療に取り組んでいます。
最後に読者へメッセージをお願いします。
予防歯科に通うなら、歯科医師や歯科衛生士に自分の弱点を知ってもらうことが大切です。そこを見つけて指導してくれる歯科医院を探していただきたいですね。僕自身は、自分が治療した口腔内は二度と壊れないようにという決意で、診療に取り組んでいます。それは僕だけの力では無理で、歯科衛生士やスタッフの力と患者さんのセルフケアを合わせて、初めてかなえられることなんです。何よりも患者さんご本人が頑張ったほうが、きれいな歯でいられる幸せを感じてもらいやすいと思います。時間をかけてしっかりと、丁寧に治療をしているので、忙しい方には合わないかもしれません。それでも、こんなふうに予防歯科に特化した歯科医院があってもいいんじゃないかなと思っています。「歯科医師が忙しくない歯科医院」というのがめざす姿かもしれないですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは唾液検査/5000円