早期発見と早期対応で症状の進行を遅らせよう
緑内障の治療法
千駄木みしま眼科
(文京区/根津駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
40歳以上の20人に1人が罹患しているといわれる緑内障は、視神経が障害されることにより徐々に視野が失われ、最悪の場合失明することもある病気。しかし、初期は自覚症状がないまま緩やかに進行するため、視野がかなり欠けてしまってから受診する患者も多いという。一度失った視野は取り戻すことができないが「症状が出る前に対応すれば、進行を遅らせて生活に必要な視力を維持していくことも望めます」と言うのは、「千駄木みしま眼科」の三嶋明香院長。長年、大学病院などで緑内障の外来診療・手術に携わってきたスペシャリストで、開業した現在もレーザー療法を含め緑内障に対応している。緑内障の進行の仕方や治療法、同院が取り組む診療などについて話を聞いた。
(取材日2020年6月9日)
目次
自覚症状に乏しい緑内障。進行を抑えるポイントは、定期的な眼科検診と治療の継続
- Q緑内障とはどのような病気ですか?
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A
▲些細なことでも気になることがあれば気軽に相談してほしいと語る
目から脳へ視覚情報を伝達する視神経が何らかの原因で障害され、視野が次第に狭くなり視力が低下していく病気です。日本人の失明原因の第1位とされています。とても緩やかに進行していくため初期は自覚症状がなく、視野がかなり欠けてしまって初めて気づくことが多いです。現時点では、一度欠けてしまった視野を取り戻す治療法はなく、将来的な視覚維持のためには早期に発見して対応することが重要です。特に注意が必要なのは、近視の方とご家族に緑内障患者がいる方です。近視が強くなると緑内障など視覚障害の原因になる病気にかかるリスクも高くなるといわれています。目の不調がなくても、40歳になったら年に1度は検診を受けましょう。
- Q原因は何でしょうか。また、予防はできますか?
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A
▲資料を用いながらわかりやすく丁寧な説明を心がける
はっきりとした原因はわかっていませんが、目の硬さである「眼圧」が高い状態が続くと、視神経が障害されて緑内障になると考えられます。ただし、眼圧が正常範囲内でも発症する「正常眼圧緑内障」もあり、日本人にはこのタイプが多いといわれています。このほか緑内障には、ステロイドの常用や外傷、ぶどう膜炎や糖尿病など、他に原因があって眼圧が上がり発症する「続発緑内障」があります。確実な予防法はありませんが、近視の進行を抑えることは、将来の緑内障を含めた眼科疾患発症リスクの低下につながるといわれています。
- Q緑内障はどのように進行していくのですか。
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A
▲定期的に検査を行うことにより、病気の見逃しを防ぐ
大きく三段階に分かれます。第一段階は細胞レベルでの変化で専門家が診てもわからない状態ですが、第二段階では視野には異常はないものの、検査上は緑内障の所見が見られる「前視野緑内障」という状態になり、やがて緑内障へと進みます。ですから前視野緑内障の段階からフォローを始め、時期を逃さずに治療を開始することが大切です。また、一般的に緑内障は視野の外側から欠けていきますが、近視のある方の場合は視野の中心から見えにくくなることが多いといわれています。医師は患者さんの日常生活に支障が出ないよう、今後どの部分の視野が悪くなっていくのかを予測しながら治療を進めていきます。
- Q治療法について教えてください。
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A
▲幅広い治療に対応している同院
現時点では根本的な治療法はなく、進行を遅らせることが治療の目的となります。治療法には薬物療法、レーザー療法、手術療法の3つがあり、緑内障のタイプや重症度、眼圧の程度などによって選択されます。薬物療法では、まず眼圧を下げるための点眼薬を使い、効果が不十分な場合は別の薬を追加したり、変更したりします。複数の点眼薬を使用しても効果が見られない場合は、レーザー療法や手術が選択されます。レーザー療法は痛みや副作用が少なく日帰り治療が可能です。手術療法は最終手段となりますが、眼圧が急上昇する急性緑内障発作の場合は緊急手術になることもあります。また、発作を予防する目的でレーザー療法が行われることもあります。
- Q治療を受ける上で気をつけることはありますか。
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A
▲早期発見・治療の大切さを改めて理解してほしいと語る三嶋院長
緑内障は治らない病気であり、治療は病状をできる限り維持するためのものです。症状が改善しないからといって点眼薬を止めたりせず、根気よく続けていきましょう。また、悪いほうの目ばかりを気にするのでなく、良いほうの目を守ることも大切です。片目の視野が損なわれても、もう一方の目でカバーできれば生活に必要な視力を維持することも可能です。患者さんが気になるポイントと医師が注目するポイントが異なることもありますが、治療への不安や疑問はそのままにせず、医師に確認してみましょう。ご自分の病状や目標とする眼圧、治療法の選択理由がわかれば治療継続の助けになると思うので、患者さまの不安に寄り添っていければと思います。