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玉置 元 院長の独自取材記事

たまきクリニック

(新宿区/新宿駅)

最終更新日:2019/08/28

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新宿駅西口から徒歩約3分にある「たまきクリニック」は開院から30年以上、心の病を抱える人に寄り添い、数多くの患者を救ってきた。ベテランスタッフがそろった院内では、まるで自宅にいるようにゆったりすごせる雰囲気づくりがなされている。「病から立ち直る力は患者さんの側にある」という玉置元(はじむ)院長は、患者の自然治癒力を引き出すことをめざした精神療法を行っている。最短1日で絶大な効果を上げる認知行動療法、患者の見る夢を活用した診断など、その治療法は非常に特徴的。精神科を専門とする医師でありながら漢方にも精通し、西洋・東洋、双方の利点を生かした診療を行うと評判の玉置院長に、さまざまな話を聞いた。
(取材日2016年12月20日)

漢方にも精通し東西の医学を併用して最適な治療を提供

新宿駅にこれだけ近い繁華街で開院されたのはなぜでしょう?

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前職でこの沿線の病院に勤務していたのが、新宿で開院したきっかけです。それまで診させていただいていた患者さんが通いやすい場所、というのが大きかったですね。ここの前は、もっと駅から離れた場所で診療していましたが、遠方から飛行機や新幹線、高速バスを使って来院される方もたくさんいたので、患者さんになるべく負担をかけないように駅にもバスターミナルにも近い現在のビルへ移りました。移転当初、このあたりは銀行や証券会社、大きな書店などばかりの非常に静かな場所。今は当時の面影などほとんど残っていませんが、夜になるとむしろ寂しくて怖いくらいの土地だったんです。30年も経てば、街も変わりますよね。

そんなに長く、この道一筋でやってこられたのですか。

精神科の医師になってから、間もなく40年になります。ただ実は、大学に勤めていた当初、自分ほど精神科にふさわしくない人間はいないと思って悩んでいました。心のことなどまったくわかっていないのに、精神科の医師の肩書だけが付いてくる。患者さんと話すのが苦痛で苦痛で。ですから、大学を離れて開院する時は別の道を模索していて、興味をひかれた漢方の専門医院を始めようかと考えていたんです。そんな流れで、一時は漢方の勉強に没頭しましたが、何年かして世の中が「これからは漢方だ」と言い始めた頃、あるドクターから「漢方をやる人はこれから増えていくかもしれない。だけど玉置さん、あなたが本来やるべきは、精神科じゃないの?」と言われて、このままじゃいけないと思い直し、精神科の道へと戻りました。

今でも漢方はされているのですか?

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西洋医学と漢方医学、というより漢方医術を併用しています。漢方は大学でもやっていましたから、30年以上になるでしょうか。西洋医学だけ、東洋医学だけとこだわるドクターは多いと思いますが、要するに患者さんの症状が改善するなら、東か西かなど関係ないですよね。両方をわかっていれば、治療の選択肢はそれだけ増えますし、ひいては患者さん一人ひとりに最適な薬を選ぶことも可能になります。東西では、考え方からまず違っているんです。西洋医学では病名を付けてその患部を治療をする薬を出しますが、漢方ではその人の体質や体力の特徴である「証」というものを診て薬を決める点で大きく異なります。これは、部分は全体の表れ、全体は部分の表れと考える東洋医学ならではでしょう。

診るべきは患者の症状だけでなく「人生」そのもの

現代病ともいわれるうつ病の患者は、やはり多いですか?

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昔の肺結核のように、うつ病という病気が蔓延しているような印象をお持ちの方が多くなりました。でも、本当の意味でのうつ病の方は、そう多くはありません。たとえば、勉強を強要されたり過保護にされたり、逆に虐待されたりと、成長してゆく環境が非常に不自然な場合は、お子さんの心に必ず何かしらの影響を与えます。それで、心に不自然なところがあったり、傷や空洞を抱えながらも一生懸命生きていく。そのプロセスのなかで「体験された無力感」というものが、ある時期に何かのきっかけで吹き出してくると、一見、うつ病のように見えるのです。つまり、人の一生が関係する問題ですから、今出ている症状だけを診て「ああ、うつ病だな」と診断を付けるのは軽すぎると私は思います。もっと慎重に行うべきです。

過去について尋ねることから治療が始まるということですか?

そのとおりです。診るべきは患者さんの症状だけではなく「人生」そのもの。まずこれまでの歩みをじっくりと伺います。そうすると、人生という土台と今の状況や環境、症状が、何かのきっかけで結びつくことがあるんです。そのポイントを察知して、こちらが共感的に「あなたの人生のあの時の体験と、今回のこの体験とは、非常によく似ていますね」と解釈し、説明をしますと、患者さんのなかには、その瞬間に泣き出してしまう方もいらっしゃいます。でも、そうやって何十年も心の傷に悩まされていた方が、ここで1回話をしただけで、ほとんど良くなっちゃうこともあります。その後2、3回の治療で良い状態を保てるようになり、最終的には1ヵ月に1回の通院で大丈夫になる方も多いですよ。

1回の治療で改善することがあるのですか?

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精神療法の一種である認知行動療法は、一般的に時間がかかります。しかし、私の場合、患者さんによってではありますが、診察室に入ってきた瞬間にその方の背景がわかるケースがあるんです。目の動きや表情、しぐさなど表面に出ていることはもちろん、その方の醸し出す雰囲気まで総合して、うまく言えませんが私と患者さんの心の相互作用が働くような感覚で「お母さんがいなかったんだな」とか「お父さんの影が薄かったんだな」といったことが見えてくる場合があるわけです。こういうのをインターアクションプロセスといいますが、一瞬で患者さんの問題の背景を掴み取れれば、治療もスピーディーに進むのはおわかりだと思います。

アスペルガー症候群の治療や家族療法にも取り組む

力を入れている治療についてお伺いします。

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最近でいえば、夢を活用することです。といっても、ユングやフロイトのように夢を何かの比喩と考える夢分析をするわけではありません。心の問題の核になっている背景が、夢の傾向からだいたい掴めるのでそれを聞き出すわけです。夢を活用するようになったのは、発達障害の一種であるアスペルガー症候群の患者さんがきっかけでした。精神療法では患者さんと信頼関係を築くことが重要ですが、コミュニケーションが苦手なアスペルガー症候群の方は、それがなかなかうまくいきません。そこで、夢の内容から問題の傾向を掴み、ある程度慣れてきたタイミングでずばりと「以前、こういうことがあったんじゃないですか?」などと言い当てると、自分を理解してくれたと患者さんは感じ、そこから信頼関係を築きやすくなるわけです。治療効果が出てくると、夢の内容もどんどん変わっていくから不思議ですね。

往診もされていると聞きました。

往診という名の家族療法ですね。もちろん、お子さんと親御さんが一緒に来院されれば、院内でも家族療法は受け付けていますが、登校拒否や引きこもりのお子さんなど来院が難しい場合もありますから。家族療法では、ちょっとしたしぐさや動きなどで家族間の関係性をまず診ます。簡単に言うと、たとえば、父親の隣からすっと姉のそばに移動する子なら「お父さんと何かあるのかな」と推測したり、何か質問をすると答えるたびにその子は母親の顔をちらちら見ていたら「支配されるような関係なのかな」と感じ取ったりということを受け止めます。そしてその関係性を踏まえて、親御さんとお子さんの「間(あいだ)」が良い方向に向かうよう、気づきを促すわけです。

最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

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人間の健康を単純に言ってしまえば、要するに快食・快眠・快便なんです。このうち、心の問題に関連するのは、やはり快眠。眠りの質ですよね。だいたいうつ病というのも、最初は不眠から始まることが多いですから。以前は、入眠障害といって寝つきが悪いことが多かったのですが、最近は早朝覚醒といって朝早くに目覚めることからうつ病になっていく、というケースが増えています。入眠障害にしろ早期覚醒にしろ、眠りに関して何かおかしいなと感じた時、精神科や心療内科を受診すると、解決が早いかもしれません。治療の選択肢の1つとして、頭の片隅に入れておいても良いのではないかなと思います。

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