野村 公志 院長の独自取材記事
のむら・笠原クリニック
(多治見市/多治見駅)
最終更新日:2026/09/14
先祖代々、多治見市笠原町で商売を営んでいたという野村公志院長が、2019年に開業した「のむら・笠原クリニック」。基幹病院の外科、消化器外科、救急科で研鑽を積んだ公志院長と消化器内科を専門に、緩和ケアや小児科の経験を積んだ妻の野村翔子副院長がそれぞれの専門領域を発揮しながら、救急医療から終末期医療まで対応しているクリニックだ。「何でも診る」という目標を掲げた開業以来、日曜診療も続けながら同院全体のアップデートにも努めている。同院のロゴマークにも笠原の特産であるタイルを用いるなど、生まれ育った笠原への愛にあふれている公志院長に、これまでの歩みや診療の特徴を聞いた。
(取材日2026年8月27日)
「何でも診る」ために外科、消化器外科、救急科で研鑽
先生は笠原のご出身だそうですね。

歯科医師の母をはじめ、先祖代々笠原に根づいており、この地への思いが強いです。院名に「笠原」と入れたのも、この地域の方々への恩返しの気持ちがあり、笠原のためのクリニックにしたいと思ったから。70代の母とは「命ある限り、一緒に地元のために頑張ろう!」と切磋琢磨し、医科歯科連携をしています。実はこの場所を選んだのにも理由があって、誰もが来やすい町の中心部であること、そして近くの山にある先祖のお墓から当院が見えることが決め手でした。モチベーションが上がるとともに、日々先祖への感謝の気持ちを再確認します。
先生が医師をめざし、救急科を選んだ経緯を教えてください。
子どもの頃、近所にあった藤井医院がきっかけです。私は、具合が悪くなると、すぐに藤井医院に駆け込んでいました。「何でも診てくれるお医者さんってすごいな」と、子ども心に尊敬を抱いていたのです。時を経て私が医師になった今の時代は、専門性を追求する傾向にあります。時代と逆行しているようですが、私がリスペクトしていたあの藤井医院のような「何でも診る医療」を貫くには、救急科しかないと考えたのです。内科、外科に分かれている今の医療現場で何でも診ることができるのは、救急科。しかし「専門性もあったほうがいい」という先輩方の助言も受け入れ、基幹病院で外科と消化器外科の研鑽も積み、初志貫徹で多治見市民病院では救急部を立ち上げ、責任者を務めました。当院を開業したのも、笠原町という地域には何でも診る医師が必要だと思ったからです。
「何でも診る」というのが、御院の方針なのですね。

はい。「何でも診る」という医療は、救急科での経験の上に成り立っています。また、翔子副院長は消化器内科が専門で、勤務医時代は私と同じく基幹病院で内科診療や胃・大腸の内視鏡検査を行ってきました。がんなどで苦しむ患者さんに最期まで寄り添う緩和ケア病棟にも勤務し、開業前には小児科で研鑽も積みました。2人の医師それぞれの専門性を生かし、どのような症例にも対応できるよう研鑽を積んできたことが当院の強み。「何でも診る」というのは、救急も含め病気の「入り口」から内科・外科の一般診療、そして訪問診療や看取りといった「出口」まで、それぞれ専門的な経験を積んだからこそ、できることだと思っています。
チーム医療で救急からリハビリ、内視鏡検査まで
どのような患者さんが多いですか?

土曜、日曜は救急の患者さんが多いです。例を挙げると、出血や骨折、やけど、薬物中毒、マムシに噛まれた、喉に魚の骨が刺さったなどです。多くは救急車を呼ぶほどではないケースですが、中には傷口から血が噴き出していたり、骨が露出しているなど重症の方が来られることも。止血をしながら、診察を待っている他の患者さんへの状況説明を行うなど、スムーズに対応してくれるスタッフには、本当に感謝しています。当院は救急指定病院ではありませんが、東濃地区の休日救急相談窓口でも紹介先のクリニックとなっています。
リハビリテーションの患者さんも多く来院されているそうですね。
リハビリの患者さんが多いのは予想外でした。そのため、診療放射線技師やリハビリスタッフを増員し対応してきました。効率化重視の時代ですが、高齢者の多い当院には機器導入よりも人の手が必要だと判断しました。肩、膝、腰を中心に、脳血管障害による手足のまひなどにも対応しており、多職種が連携できることが特徴。皆、自主性とやりがいを持って患者さんと接している、頼もしいスタッフですね。内科的な持病についても意識しながら、日常生活がどうしたら楽になるかを考えた指導で、「この人にリハビリをしてもらって良かった」と思ってもらえるようなリハビリをめざしています。リハビリ室には野球選手のサイン入りユニフォームを飾っているのですが、患者さんには選手の不屈の精神を感じてもらい「諦めずにリハビリを頑張ろう」と思ってもらえればうれしいです。
救急やリハビリ以外の診療についても教えてください。

内視鏡検査は、私も翔子副院長も行い、検査時の大腸ポリープ切除も可能です。胃がんや大腸がんは早期発見が重要ですので、健診で引っかかった方はもちろん、胸焼けや腹痛、また便通異常がある方には受けていただきたいですね。鎮静下での検査も可能で、鎮静から覚める時間が従来より短くなることが望める薬剤も導入していますので、検査後の予定も立てやすいかと思います。他には、おなかのヘルニアや肛門の外来も設けています。鼠径ヘルニアについては、長年にわたり専門的に研鑽を積んできた私が診察を担当し、適切な治療方針のご提案に努めています。また笠原でも高齢化が進み、訪問診療が増えています。緩和ケアや看取りにおいては、専門家である翔子副院長の存在が大きいですね。自宅での看取りはご家族にとっても感慨深い経験になると思います。温かい雰囲気の中で最期まで寄り添えることは、医療者にとっても意義深いものです。
初心を忘れず、これからも地域のために
日頃からスタッフの皆さんに伝えていることはありますか?

スタッフに常々、伝えているのは、医療における安全の重要性です。安心安全の意識がおろそかになったときは、私はクリニックを辞める覚悟で医療に臨んでいます。もちろん、その時は残った患者さんが困らないよう紹介状を書いて、最後まで責任は持ちます。スタッフに守ってほしいのは、医療に対する責任感。その上で「皆が主役になるクリニック」であることも大切にしています。例えば看護師が一番力を持っていて、事務がそれに従うというような力関係にはしたくなかったのです。当院のスタッフの中で一番多くの人数がいるのは、事務スタッフ。裏方といわれる事務の仕事こそが、実は大事だと思っています。当院では事務スタッフが診察に同席し、医師の代わりにカルテの入力をします。おかげで医師は患者さんとの会話に専念できています。
患者さんとの対話を重視されているのですね。
そうですね。クリニック経営の面では、雇用する人数は少ないほうが楽なのでしょうけれど、そういったことは考えていません。仮に自分が患者だったらどのようなクリニックに通いたいか、という視点で判断しています。中でもこだわっているのは、診察室に患者さんを呼び入れる時に、毎回「○○さん、どうぞ」と僕が呼ぶこと。患者さんが診察室に入ってきてから診察を始めるのではなく、待合室の椅子から立ち上がる様子も見たいのです。知り合いの人と夢中になっておしゃべりをしているなら、元気な証拠。整形外科の患者さんであれば、すぐに立ち上がれるか、足を引きずっていないか、そういった患者さんの素の部分を意識して見るようにしています。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

開業から7年がたちました。数多くの出会いにも恵まれ、思い描いていた医療が形になってきたと感じています。しかし、そこで満足するのではなく、初心を忘れずに「何でも診る」医療をこれからも実践したいと思います。東濃地区全体に目を向けると、三次救急病院は命に関わる急性の患者さんの受け入れに特化し、二次救急病院との役割分担をすることが非常に大切です。当院としては入院の必要のない患者さんをどなたでも受け入れ、一次救急としての役割を担っていきたいと思います。また、土日も休みなく救急患者を受け入れる医療機関が、当院以外にも増えてほしいとも考えています。待ち時間の問題など、患者さんにはご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、地域医療の発展のためにも、どうか温かく見守っていただけたらうれしいです。

