大井 雄紀 院長の独自取材記事
大井クリニック
(西宮市/苦楽園口駅)
最終更新日:2023/12/14
阪急甲陽線の苦楽園口駅から徒歩5分の場所にある「大井クリニック」。もともとは脳神経外科、整形外科、リハビリテーション科でスタートしたが、2021年からは整形外科を専門とする大井雄紀(おおい・たかのり)先生がクリニックを継承し、現在は整形外科・リハビリテーション科として診療を行っている。一般整形外科からスポーツ整形外科、得意とする肩関節まで、一人ひとりの患者に合わせた幅広い診療とリハビリテーションを提供し、患者も高齢者からアスリートまで実に幅広い。「患者さんによく天然パーマをいじられるんですよ。時には触ってこられる人もいて……」と患者とのエピソードを楽しげに話す院長に、日常のほほ笑ましい姿が想像できる。今回は同院が実践している専門性の高い診療や、それに伴う大切なコンセプトなど、話を聞いた。
(取材日2021年3月11日/情報更新日2022年11月17日)
検査、診療からリハビリテーションまで幅広く診療
クリニックの特徴を教えてください。
当院では、整形外科領域のすべての患者さんが安心して来られることを目標にしています。私自身は肩や肘といった上肢が専門ですが、首や腰、膝など、さまざまな部位の疾患を満遍なく診療していますので、患者さんの層が広いのが特徴です。やはり中高年の方が中心となりますが、スポーツ整形外科に力を入れていることもあり、午後からはスポーツをしている小学生や中学生がよくやって来ます。1階に診察室、手術室、MRIやエックス線室を集約し、2階はリハビリテーション専用スペースにして、患者さんが利用しやすいように動線を工夫しました。また、専門性の高い治療が必要な場合は、西宮回生病院や兵庫医科大学病院整形外科と連携した診療が行えることも強みの一つです。
中でも得意としている分野はありますか?
私自身、大学病院で長く肩関節専門の外来を行ってきたこともあり、肩の診療を得意としています。四十肩や五十肩と呼ばれている肩関節周囲炎や、板状の腱が切れてしまう腱板断裂、それによって軟骨がすり減ってくる変形性肩関節症などに対する診療ですね。私はかつて、たつの市にある信原病院で働き、肩治療のエキスパートである信原克哉先生のもとで肩関節について学びました。そこで学んだ関節造影という造影剤を使用した検査をもとに診断し、治療を行っています。四十肩などで肩が上がらず悩んでおられる患者さんたちに喜んでいただければと思いますね。また、腱板断裂や変形性肩関節症でリハビリをしても改善が見込めない場合は手術が必要なケースもありますが、その際は連携病院で私が手術を行うようにしています。
リハビリテーションにも注力しているのですね。
機能回復や再発予防のために、リハビリはかなり重要な分野だと考えています。当院では理学療法士や作業療法士が複数人常勤しており、それぞれの患者さんに合ったマンツーマンのリハビリテーションをしています。理学療法士の中には肩の仕事をやりたいとわざわざ探して当院に来てくれたスタッフもいるんです。難しい肩関節のメニューも熱心に勉強してくれるので、安心して患者さんを任せることができます。当院では、スタッフとの時間を大切にしており、毎週カンファレンスで共通理解を深め、患者さんの症状に対し、どうアプローチしていくかを常に話し合っています。また通えない患者さんを対象に、介護保険を使った訪問リハビリテーションも開業当初から行っています。3ヵ月に1回の来院は必要ですが、通院負担が減って患者さんも楽になったかと思いますね。
患者の思いを受け止めた治療を行っていきたい
先進機器も積極的に導入されていると聞きました。
はい。2021年には集束型体外衝撃波を導入しております。この機器は、欧米では多くの疾患で治療の第一選択肢になりつつある治療の一つです。よりピンポイントで炎症部の治療につなげることができます。当院で使用している集束型体外衝撃波治療器は、日本ではまだ浸透していない先進機器なのですが、「手術しかない」と思っていた人にも保存的治療での希望が持てればと、導入しました。また他にも、MRIはオープン型のものを使用しています。従来のドーナツ型に比べて圧迫感が少ないので、高齢者や小さなお子さんでも安心して検査できればと、採用を決めました。
診療時に心がけていることは何ですか?
まずは患者さんが何でお困りなのかを症状を見ながら判断し、患者さんの生活背景まで見据えた、一人ひとりに合った治療を行うことです。また、一見整形外科領域の症状であっても、肩の痛みの原因が胆石だったり、手足のしびれが脳疾患による可能性がありますので、そうした疾患をいち早く鑑別し、専門の医療機関へつなげることも重要です。正確な診断と適切な治療を行うには、患者さんを治すためのツールをいっぱい持っておくことが大切。当院が先進設備やリハビリテーションなどにこだわっているのも、そのためです。これまでの経験や知識だけに頼るのではなく、常にアンテナを張り、アップデートして先進的な医療を取り入れていくように心がけています。
スポーツ障害の診療も専門的に行っているとか。
そうですね。例えば、小学校や中学校など普通の学校にトレーナーはいませんし、整形外科の領域で悩んだ時はやはり近場のクリニックに相談という人がほとんどでしょう。野球やバレーボールなら肩や指、サッカーなら膝や腰と、スポーツの種類によって障害の部位も異なるため、幅広く対応しています。また、診療時には競技レベルに関係なく、初めに試合や大会のことを聞くようにしています。今回の試合は諦めて治療を受けるのも一つですが、これが最後のチャンスという場合もあるでしょう。例えば、「高校最後の試合で選手生命が終わってもいいからどうしても出たい」などという言葉を聞いたら、多少無理してでもなんとか治してあげたいと思うものです。もちろん無茶なことはできませんが、選手の気持ちを受け止めて、間に合うものなら間に合わせてあげる、そんな治療を考えるのも私の役割だと思っています。
みんなで支え合い、地域の健康寿命を延ばしていきたい
先生もスポーツマンだとお聞きしました。ご経験が診療に生かされているのですね。
学生時代から今もずっと野球を続けています。全国の大学ごとの整形外科が行う大学対抗親善野球大会で近畿地区予選7連覇をし、2016年には全国優勝も果たしました。ずっと全国1位に憧れていましたから、優勝した時は、それはうれしかったですよ。私もずっと投手をしてきましたので、ケガの苦労は知っています。最近は、野球選手ばかりでなく、サッカー選手など足の障害を診る機会も増えてきたので、足の疾患にも強い環境をつくりたいと考えています。その一つがインソールという靴の中敷きで、インソールをオーダーメイドしている企業と提携し、足に障害のある方の診療に活用することを始めました。足もとのインソールの非常に微妙な違いによって、荷重や姿勢、運動機能などに影響を与えることが期待できます。診療も19時までやっていますので、興味があればぜひ一度ご相談ください。
後進の育成にも尽力されているそうですね。
兵庫医科大学の学生の講義を行ったり、現場研修の場所として当院を活用してもらったりしています。私自身も長く兵庫医科大学に在籍してきましたので、自分がこれまで培ってきた経験が生かされるのであれば、協力できることはして、地域医療の向上に貢献できればと思っています。また、患者さんにも積極的に健康になっていただければと、さまざまな取り組みを行っています。SNSを活用して情報を発信したり、トレーナーによる動画配信サービスなどをご紹介したりもしています。
読者へのメッセージをお願いします。
平均寿命がどんどん延びる中で、ただ漫然と生きているだけというのでは、もったいないですよね。健康寿命を延ばし、何かやりたいことがあるのなら、それができるようにサポートしていくのが私たちの使命です。「夫婦でウォーキングやテニスがしたい。でも、膝が痛くてできない」というときには、その膝に対するアプローチは私たちにお任せください。痛みがあるから諦めるのではなく、やりながら痛みを取っていくことをめざします。少年時代からずっと過ごしてきたこの界隈。他のクリニックとも連携を取りながら、それぞれの得意分野で存在意義を高めつつ、みんなで地域を支えていく。そんな思いで今後も診療を続けていきたいと思います。