大井 雄紀 院長の独自取材記事
大井クリニック
(西宮市/苦楽園口駅)
最終更新日:2025/04/21

阪急甲陽線・苦楽園口駅から徒歩5分の場所にある「大井クリニック」。もとは脳神経外科・整形外科・リハビリテーション科を標榜していたが、2021年に整形外科を専門とする大井雄紀(おおい・たかのり)院長が継承してからは整形外科・リハビリテーション科として診療を行っている。一般整形外科からスポーツ整形外科、得意とする肩関節まで幅広く対応し、一人ひとりの患者に合わせた診療とリハビリテーションを提供。高齢者からアスリートまで、多様な患者が訪れている。「患者さんによく天然パーマをいじられるんですよ。時には触ってこられる人もいて……」と患者とのエピソードを楽しげに話す院長の様子から、日常のほほ笑ましい姿が想像できる。取材では同院が実践している専門性の高い診療や、それに伴う大切なコンセプトなどの話を聞いた。
(取材日2021年3月11日/情報更新日2025年4月18日)
検査、診療からリハビリテーションまで幅広く診療
クリニックの特徴を教えてください。

当院は、整形外科領域のすべての患者さんが安心して来られることを目標にしています。私自身は肩や肘といった上肢が専門ですが、首や腰、膝など、さまざまな部位の疾患を満遍なく診ていますので、患者さんの層が広いのが特徴です。中高年の方が多いのですが、スポーツ整形外科に力を入れていることもあり、午後からはスポーツをしている小学生や中学生がよく来られます。院内1階には診察室、手術室、MRIやエックス線室を集約し、2階はリハビリテーション専用スペースにして、患者さんが利用しやすいように動線を工夫しました。また専門性の高い治療が必要な場合は、西宮回生病院や兵庫医科大学病院整形外科と連携した診療が行えることも強みの一つです。
特に得意としている分野はありますか?
私は大学病院で長く肩関節専門の外来を行ってきたこともあり、肩の診療を得意としています。四十肩や五十肩と呼ばれている肩関節周囲炎や、板状の腱が切れてしまう腱板断裂、それによって軟骨がすり減ってくる変形性肩関節症などに対する診療ですね。私はかつて、たつの市にある信原病院で働き、肩治療のエキスパートである信原克哉先生のもとで肩関節について学びました。そこで学んだ関節造影という造影剤を使用した検査をもとに診断し、治療を行っています。四十肩などで肩が上がらず悩んでおられる患者さんたちに喜んでいただければと思いますね。また、腱板断裂や変形性肩関節症でリハビリをしても改善が見込めず手術が必要なケースもありますが、その際は連携病院で私が手術を行うようにしています。
リハビリテーションにも注力しているのですね。

ええ。機能回復や再発予防のためにも、リハビリは重要だと考え尽力しています。そこで当院では理学療法士や作業療法士に常勤してもらい、患者さんとマンツーマンで行う、オーダーメイドのリハビリを実施。セラピストも複数人在籍して、野球やクラシックバレエなど、それぞれの得意分野を発揮しながらプランの提案をしてもらっています。より適切な治療・リハビリの提供をめざすために、毎週1度、私とセラピスト全員でカンファレンスを行っています。現場状況の確認と、一人ひとりの患者さんの症状に対してどうアプローチをしていくかなどを話し合うのです。スタッフは皆、とても熱心に対応・勉強してくれているので、安心して患者さんを任せられますね。また通院が難しい患者さんを対象に、介護保険を使った訪問リハビリも開業当初から行っています。3ヵ月に1回の来院は必要ですが、患者さんにとって通院負担が減って楽に感じてもらえていたら幸いです。
患者の思いを受け止めた治療を行っていきたい
先進機器も積極的に導入されていると聞きました。

はい。2021年に集束型体外衝撃波治療器を導入しました。この機器を用いた治療は、欧米では足底腱膜炎の治療の第一選択肢になりつつあります。よりピンポイントに、炎症部の治療につなげることができます。当院で使用している集束型体外衝撃波治療器は、日本ではまだ浸透していない先進機器なのですが、「手術しかない」と思っていた方にも保存的治療に望みを持ってもらえればと考え導入しました。そんな集束型体外衝撃波治療器を最近新たにもう1台追加したので、より多くの患者さんにご利用いただけるでしょう。またMRIはオープン型のものを使用しています。従来のドーナツ型に比べて圧迫感が少ないので、高齢者や小さなお子さんでも安心して検査できればと思い、採用を決めました。
診療時に心がけていることは何ですか?
まずは患者さんが何でお困りなのかを症状を診ながら判断し、患者さんの生活背景まで見据えた、一人ひとりに合う治療を行うことです。また一見整形外科領域の症状であっても、胆石や脳疾患が原因である場合もあります。そうした疾患をいち早く鑑別し、専門の医療機関へつなげることも重要です。正確な診断と適切な治療を行うには、患者さんを治すためのツールをいっぱい持っておくことが大切でしょう。当院が先進設備やリハビリテーションなどにこだわっているのはそのためです。これまでの経験や知識だけに頼るのではなく、常にアンテナを張り、アップデートして先進的な医療を取り入れていくように心がけています。
スポーツ障害の診療も専門的に行っているとか。

そうですね。一般的な学校にトレーナーはいないため、整形外科の領域で悩んだ時は近場のクリニックに相談という方がほとんどでしょう。そこで当院では野球やバレーボール、サッカーなど、さまざまなスポーツによる悩みに幅広く対応しています。診療では競技レベルに関係なく、必ず初めに試合や大会のことを聞くようにしています。しばらく休んで治療を受けるのも選択肢の一つですが、患者さんによっては「これが最後のチャンス」という場合もありますからね。例えば、「次が高校最後の試合。選手生命が終わってもいいからどうしても出たい」という言葉を聞いたら、多少無理してでもなんとか治してあげたいと思うものです。もちろん無茶なことはできませんが、患者さんの気持ちを受け止めて、間に合うものなら間に合わせてあげる、そんな治療を考えるのも私の役割だと思っています。
皆で支え合い、地域の健康寿命を延ばしていきたい
先生もスポーツマンだとお聞きしました。ご経験が診療に生かされているのでしょうか。

学生時代から今もずっと野球を続けています。全国の大学ごとの整形外科が行う大学対抗親善野球大会で近畿地区予選7連覇をし、2016年には全国優勝も果たしました。ずっと全国1位に憧れていましたから、優勝した時はうれしかったです。私はずっと投手をしてきましたので、けがの苦労は知っています。最近は野球選手ばかりでなく、足の障害などのサッカー選手を診る機会も増えてきたので、足の疾患にも強い環境をつくりたいと考えています。その一つがインソールという靴の中敷きで、インソールをオーダーメイドしている企業と提携し、足に障害のある方の診療に活用することを始めました。足もとのインソールの非常に微妙な違いによって、荷重や姿勢、運動機能などに影響を与えることが期待できます。診療も19時までやっていますので、興味があればぜひ一度ご相談ください。
後進の育成にも尽力されているそうですね。
兵庫医科大学や宝塚医療大学などの学生の講義を行ったり、現場実習の場所として当院を活用してもらったりしています。私自身も長く兵庫医科大学に在籍してきましたので、自分がこれまで培ってきた経験が生かされるのであれば、協力できることはして、地域医療の向上に貢献できればと思っています。また患者さんにも積極的に健康になっていただければと、さまざまな取り組みを行っています。SNSを活用して情報を発信したり、トレーナーによる動画配信サービスなどをご紹介したりもしています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

平均寿命がどんどん延びる中で、ただ漫然と生きているだけというのはもったいないでしょう。健康寿命を延ばし、何かやりたいことがあるのなら、それをできるようにサポートするのが私たちの使命です。「夫婦でウォーキングやテニスがしたい。でも膝が痛くてできない」というときには、膝に対するアプローチは私たちにお任せください。痛みがあるから諦めるのではなく、やりながら痛みを取っていくことをめざします。少年時代からずっと過ごしてきたこの界隈。他のクリニックとも連携を取りながら、それぞれの得意分野で存在意義を高めつつ皆で地域を支えていく。そんな思いで今後も診療を続けていきたいです。