鷲尾 隆太 院長の独自取材記事
わしおこども医院
(神戸市中央区/みなとじま駅)
最終更新日:2025/02/10

ポートライナーみなとじま駅から歩いて約2分の場所に、「わしおこども医院」はある。2019年の開院以来、地域に根差した小児科クリニックとして風邪やインフルエンザ、肌のトラブル、おねしょや夜泣きなど小児科全般に対応している。やわらかい笑顔で親子を迎える鷲尾隆太院長は神戸市出身で、親しみやすい雰囲気だ。「子どものことを一番考えているのは親。その次くらいに考えている人でありたい」と、話す鷲尾院長は、診療時間外にもクリニックを開放し、育児の相談に応じている。子ども専門の訪問診療も担う他、病児保育施設も開設するなど積極的な取り組みを続けている鷲尾院長に、小児科医としての思いをたっぷりと話してもらった。
(取材日2023年10月30日/情報更新日2025年2月7日)
病気以外の相談にも応じ、子どもとその家族を見守る
小児科医を志した理由を教えてください。

一番は子どもが好きだから、という理由ですね。それに加えて、家族には聞こえの問題があり、小さい時から手話サークルに行ってました。そういう経験の中で、情報がしっかり伝わらない人たちの育児は大変だろうな、と感じていました。育児に困っている人や情報が行き届かない人の力になりたいと思い、医師の中でも小児科医になろうと考えました。特に子どもが病気になると不安になる方が多いですよね。そういった方の力になりたいと思いました。もう小学校の高学年くらいには、小児科医になろうと決めていましたね。
どのような経験を積んで、開業に至ったのでしょうか。
関西医科大学を卒業した後、24時間開いていた大阪の子ども病院で、小児救急を担当しました。その後、別の公立病院で新生児を診療し、また大学病院に戻って血液の病気を患う子どもたちを治療しました。神戸に戻ってきたのは、ポートアイランド内にある終末期の子どもを診療するクリニックの医師に出会ったからです。そこでは小児がんなどの難病を患う子どもの入院対応や、自宅で過ごす子どもへの訪問診療を行ってきました。2年勤めた後、一般外来の機能を担うため、当院を開くこととしました。地域を盛り上げたいという思いもありましたね。幅広い経験を積んできたことが、開業後にも生きているなと感じています。
どのような相談で来院する人が多いですか。

小児科全般に対応しているので、風邪や腸炎といった感染症から、アレルギーやお肌のトラブル、そしておねしょや夜泣きまでいろいろなご相談がありますね。あとは、体重が増えないといった悩みや食事のこと、一般的な食事相談にも来られます。かなり全般的ですね。当院は、月に2回は診療時間外の午後1~3時にもクリニックを開放していて、体重測定や親御さんの相談に乗っています。母乳測定もしていますよ。小児科の役割として治療も大事だとは思うのですが、子どもを中心としたその家族を見守るというのが大切なのではないか、病気以外のこともしっかりと見ていく必要があるのではないかと思っています。特に今は、核家族化が進んでいて相談できる人がいなかったり、ワンオペで大変だったり、という方もいらっしゃいます。新型コロナウイルス感染症で親同士の交流も少ないです。なのでクリニックがそういった役割も担えたらいいなと思っています。
「子どものためにできることは何でもしたい」を信条に
訪問診療にも対応しているそうですね。

はい、医療サポートが必要なお子さんに対して訪問診療に対応しています。お子さんのご家族までサポートしようと思ったら、やっぱり訪問診療があるほうがいいと思っています。外来だと、一部しか見ることができずわからないことも多いですよね。病院では泣いているけれど家だとそんな笑顔をするんだ、とかですね。ケアについては看護師が担うのが一番だと思っているので、連携を取りながら行っています。現在は神戸市内を中心に対応しています。大学病院で勤務していた時、元気で帰る子もいれば、残念ながら病院内で亡くなってしまう子もいました。神戸に帰ってからは自宅で、家族に囲まれながら過ごす子どもたちを見てきたこともあって、その大切さを身にしみて感じています。
診療する上で大切にしていることを教えてください。
子どもたちの元気のためにできることは何でもしたい、と思っています。僕たちの都合で「できません」というのは、その子にとってメリットはない。夜でも不安なことは出てくると思うので、病院の電話は自分の携帯に転送させているし、土日でも何かあれば相談に乗っています。子どものことを一番に考えているのは親ですが、その次くらいには考えている人でありたいですね。お母さんの不安な気持ちもわかるし、「どうしてあげたらその子のためにいいだろうかということを、親御さんと話すように心がけましょう」と、スタッフにも呼びかけています。今は医師が3人、看護師などのスタッフが13人います。立場は違ってもみんなプロなので、互いを尊重しながら日々活動しています。
子どもや親と接するときに、心がけていることはありますか?

目線をそろえる、ということですね。例えば、子どもと話す時でも立ったままじゃなくて腰をかがめるだとか、お会計の時にもお母さんが子どもをたくさん抱えて大変そうだったら、来てもらうんじゃなくってこちらから伺う、といったことです。また、親御さんはあらゆることを真剣に悩んでおられます。「いや、そんなこと大丈夫だよ」というふうには言いたくないなと思っています。その気持ちに同意して、「そういう時あるよね」というふうにお話を聞くようにしています。だからこそ、いつでも気軽に相談できる環境を整えておきたいと思っています。
病児保育施設も開設。子育てしやすい環境に貢献
病児保育施設も開設したと伺いました。

当院のスタッフの中には結婚や出産を考える世代の人もいて、彼らのこともフォローできたらいいなという思いもあり、2024年4月に、事業所内保育所を開設しました。その一環として病児保育施設も開設しました。子どもが風邪をひいた時に病児保育に預けたくても、島なのでどうしても遠い場所に行かなければならない、という話も聞いていたので、地域のために開きたいなと思いました。今のところまだ手探りの状態ですが、必要な方に利用していただけたらと願っています。
クリニックの内装でこだわったところはありますか。
パステルカラーを基調に、温かみがあるような雰囲気を意識しました。診察室や処置室、隔離室といった部屋それぞれをおうちに見立てて、クリニック全体はそれが集まった村、あるいは国、というイメージでつくってもらいました。「あんまり来たくない場所」とは思ってもらいたくないので、壁紙を貼ったり、季節によって変えたりと工夫しています。待合室も幅広くとっています。おもちゃは各部屋にも置いてありますし、待合室でもご要望に応じてお渡ししますよ。感染症対策のために、いろいろな子どもが同じものを使うといった状況にならないようには気をつけています。
休みの日はどのように過ごしていますか。

家族と出かけるか、家でゆっくり過ごすことが多いですね。8歳、6歳、4歳の男の子がいるので遊びに連れて行きますが、本当に大変ですよ。一日でも預かってほしいと感じる時、「お母さんたちもこういう気持ちなんだな」と思ったりします。自分にも子どもができてからは、ケガをしたら心配する親の気持ちや育児の大変さが、よりわかるようになったかなとは感じています。あとは、はやりのキャラクターなんかもわかるようになったので、子どもたちが好きなものも「知ってるよー」と、お話しできるようになりましたね。
最後に、今後の展望を教えてください。
もともと地域を活性化したいという思いがあったので、「このクリニックがあるから安心だな」と、思ってもらえるとうれしいです。皆さんのニーズを聞いて訪問診療に対応したり病児保育を開設することになりましたが、今後も、地域の方にとって何が必要なのかということを考えながら進めていきたいです。また、少子化が進んでいますが、その背景には子育てのしにくい環境があるのではないかと思っています。なので、子育て世帯が安心して過ごせる地域になるよう、何か貢献できたらいいなと思っています。併せて、横のつながりも強化していきたいですね。連携機関を増やして、家で過ごす子どもたちが安心して過ごせたらと願っています。これからも子どもたちとその家族のために、自分が貢献できることを考えながら、頑張りたいと思っています。