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富永 智一 院長の独自取材記事

小金井ファミリークリニック

(小金井市/武蔵小金井駅)

最終更新日:2019/08/28

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武蔵小金井駅から徒歩5分の場所にある「小金井ファミリークリニック」は2019年4月に開院。患者の一生に寄り添う診療をモットーとするクリニックだ。富永智一院長は家庭医療を専門とするドクター。ただ疾患を治療するのではなく、患者の背景を踏まえた上で、疾患が関わる問題を解決することに焦点をあてた、家庭医療に携わる医師ならではの診療を行う。富永先生に、まだあまり知られていない家庭医療や地域への思いを聞いた。
(取材日2019年3月4日)

病気の治療だけでなく、家族の問題の解消にも注力

この地域に長くあったクリニックを継いでの開院と聞きました。

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はい、もともとこの場所は40年近く診療を続けていた先生がいらっしゃったのですが、クリニックを閉められることになって。その先生から継いでほしいという話をいただいており、実際に地域の方や勤めていた「むさし小金井診療所」に来ている患者さんからも、クリニックがなくなって困ったという話を聞いていたんです。加えて、小金井市は医師会の雰囲気もとても良く、市とも協力しながら一緒に医療を良くしていこうと活動しており、地域に夢があるところ。一方、僕の専門である「家庭医療」は、地域に根差し、赤ちゃんとして生まれた時からご高齢になって亡くなるまで一緒に歩んでいくもの……と、いろいろな条件とタイミングが合って、この場所で開業することを決めました。

家庭医療とはどのようなものですか?

これは、カナダでの臨床実習中に先生が話されていたものですが、家庭医療に携わる医師は例えるなら「プリースト(司祭)」。「何のこと?」と思えますが、昔の司祭は、長く同じ地域にいて、地域のことをよく知っており、人々の困り事や悩みを聞き、体調の悪い人には調合した薬も渡す、地域の人々を導く存在でした。それと同じように、家庭医療に従事する医師は単に疾患を治療するだけでなく、患者さんの生活そのものに関わっていく存在です。経験を積み、患者さんのことがわかってくると、ちょっとした相談を受けるようになります。内容は、認知症のお母さんのことや親戚のこと、相続のこととさまざまで、その幅はどんどん広がっていくんですね。90歳、100歳近くでも現役で、患者さんに長く慕われている先生がいらっしゃいますが、患者さんがそこへ行くのは「この先生に相談したい」と思うからでしょう。それが家庭医療に携わる医師の原型だと思います。

家庭医療専門の医師と単科を専門とする医師の違いは何でしょう?

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家庭医療では、「疾患」だけではなく「家族全体」を診ます。疾患というのは、高血圧症とか認知症など、一つ一つ名前がつく病気のこと。でも、「認知症のお母さんが夜に徘徊してしまって、度々警察に保護されている。息子夫婦の奥さんは喘息気味で、旦那さんはタバコが止められない。3歳の子どもがいて、その子は予防接種が遅れている」という家族の問題は、疾患名で表すことはできませんよね。その家族を一つのユニットとしてみて、この家族の問題をどう解消するか、というのが家庭医療における考え方です。例えば同じ「膝が痛い」という症状でも、家族の状況や環境が違えば、患者さんの抱える問題は違ってきます。ただ疾患に対処するのではなく、患者さんから何が心配で、実際に何に困っているのかをしっかり聞き出して、問題の所在を把握した上で、対応していくのが家庭医療に携わる医師の仕事なんです。

判断の核は「本人・家族にとってどちらがいいか」

実際の診療は、どのように行うのですか?

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例えば「膝が痛い」と来院された方なら、現実には何に困っているのか、今日は何を求めて来られたのかを聞かないといけないですね。例えば、「エレベーターのない団地の4階に住んでいて、認知症のお母さんがいる。毎日デイサービスを利用しており、その送り迎えにお母さんを抱えて毎日階段を上り下りしなきゃいけないのがつらい」という事情があり、「もう年だからある程度痛いのは仕方がないけれど、このままはつらいので痛み止めがほしい」という話だと、痛み止めを出しても根本的な解決にはならないので、引越しや他の介護サービスの利用を含めて考える必要があります。「経済的に引越しは難しい」ということなら、それも織り込んだ上で「じゃあどうしようか」と相談していくわけです。そんなふうに、たとえ疾患があっても、その人が地域で長く幸せに生きていくにはどうすればいいか?を一緒に考えていきます。

家庭医療を行うにあたって一番大事なものは何でしょうか?

ヒューマニティーですね。先輩がよく「博識であれ」と言うんですが、患者さんの困っていることは、得てして医学的なことではないんです。だから、それについて自分が何も知らなければ、ジャッジもアドバイスもできません。例えば、糖尿病で検査数値が悪く、炭水化物を控えて禁煙するのが理想としても、「お正月ってお餅食べちゃうよね」とか「みんながタバコ吸ってると吸いたくなるよね」ということがわからないと、アドバイスなんて絶対できません。そうして共感できる物事を増やすには、まずは経験することですね。だから、研修医には「医学書を読む暇があったら遊びに行け」とよく言っています(笑)。また家庭医療は、患者さんからお話を聞かせてもらわないと始まらないので、話しやすい雰囲気をつくるスキル、お話を引き出すスキルも大切です。医学的な知識や技術は教えられても、この能力をどう育むかは結構難しくて、指導する側の課題の一つです。

訪問診療も行っているのですね。

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赤ちゃんからお年寄りまで、患者さんの一生に寄り添う診療は当院が最も大事にしているところなので、もちろん訪問診療も行っており、緊急時は24時間対応しています。訪問診療は、「疾患の治癒」をめざす病棟での治療と違って、たとえ疾患があっても、いかに幸せに自宅で過ごせるかをサポートするためのものと考えています。その中には、当然看取りも入ってきます。100歳の方の心臓が止まる時、それを「心不全」という病気だと考えて入院させるのか、老衰と考えて自宅で看取るのかは、本来、ご本人やご家族の思いによって決めるべきものです。医師にゆだねられたとしても、医学者であろうとしてデータで判断するのではなく、これまでの経緯やご家族の歴史、思いをできる限りくんだ上で、「本人にとってどちらがよいのか」から判断できることが、訪問診療では特に大切だと思っています。

何でも相談できる、何でも相談したい医師でありたい

先生が家庭医療に興味を持つようになったきっかけも教えてください。

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大学5年生の時に家庭医療専門の医師に出会ったことが、最初のきっかけです。その後、イギリスとカナダで臨床実習を受け、帰国後は、北区にある診療所で家庭医療に関する専門トレーニングを受けました。そこで実際に2組の患者さんのご自宅で診療をしたことが自分の運命を決定づけました。1組目は脳性麻痺のある旦那さんを介護しているご家庭で、往診に行くと奥さんが笑顔で迎えてくれてとても幸せそうで、そこで初めて、たとえ疾患があっても「健康」で幸せな人はいるのだと知りました。もう1組は、夫婦2人ともがんにかかり、ベッドで死期を待っているというご家庭で、その場で何もできない自分にとてもショックを受けました。こうしたつらい体験を通じて、自分としてできる限りのことをしたいという気持ちが芽生えていったのが、現在のような熱い思いにあふれた医師になれたきっかけだと思っています。

地域でどんな役割を果たしていきたいとお考えですか?

この地域の特徴の一つは、一戸建てに3世代で暮らしている方が多いこと。まずはそういった家族の問題を見ることが重要です。また高齢者医療、訪問診療もまだまだ足りていませんし、エレベーターのない団地に住む方の高齢化、認知症の方の増加など地域で取り組むべき問題もあります。病気をミクロに診ていくだけでなく、家族や地域、行政、社会といったマクロな部分にもアプローチしていくつもりです。

最後に、今後の抱負についてお願いします。

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初めての患者さんは「先生にこんなこと聞いていいのかな」と思いつつ、遠慮がちに質問されます。でも親しくなってくると「新聞に先生の出している薬駄目って書いてあったけど、本当にいいの?」という感じで、あっけらかんと聞いてくれるようになる。その変化がすごく重要なんですね。これからも、何でも相談できる、何でも相談したいと思える医師、患者さんが長くかかりたいと思ってくれるクリニックであるよう、力を尽くしていきます。

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