橋村 裕也 院長の独自取材記事
はしむら小児科
(西宮市/西宮北口駅)
最終更新日:2025/09/18

ショッピングセンターの1階にある「はしむら小児科」。阪神・淡路大震災をきっかけに医師をめざした橋村裕也院長が、地域の小児医療に貢献したいと2018年10月に開業した。清潔感あふれる施設で、一般的な小児科の診療や予防接種、乳幼児健康診査、アレルギー疾患の診療を行うとともに、橋村院長が専門とする小児腎臓病や夜尿症といった疾患も対応しているのが特徴だ。勤務医時代に小児救急や新生児医療に携わるなど多くの経験を積んできた橋村院長は、穏やかな雰囲気の先生。開業に至った想いや今後の展望、普段から心がけていることなどたっぷり話を聞いた。
(取材日2019年1月15日)
家族と一緒に子どもの成長を見守る「町のお医者さん」
医師を志したのはなぜですか?

私は医師になるつもりはまったくなかったのですが、中学生の時、阪神・淡路大震災を経験して考えが変わりました。当時、神戸市東灘区にあった家は半壊し、私は体育館で避難生活を送りました。近隣の家々、住民の方々は、それはもう大変な状態でした。そのような中、「医師はいませんか?」という切実で悲痛な声をたくさん聞きました。そして、懸命に救援にあたる医師や医療従事者の方たちの姿を目の当たりにしました。自分も将来、医師として人を助けると決意したのはその時です。小児科を選んだのは、大学に入ってからです。子どもの病気を治すことにやりがいを感じたからです。子どもの未来を守りたいと思いました。大学卒業後は、小児救急で勤め、その後新生児医療についても学びました。
腎臓病がご専門なのだそうですね。
実は学生時代、腎臓疾患を理解するのがとても苦手だったんですよ。少しでも知識を増やそうと勉強を重ねていくと、腎臓は奥が深くて面白いと感じるようになってきたんです。苦手が高じて専門になってしまいました。腎臓の検査で皆さんになじみがあるのは、学校での尿検査だと思います。その検査で異常が出て、腎臓の病気に気づくというパターンが多いですね。小児で腎臓を患っている患者の数は、他の症例と比べるとそれほど多くはありません。しかし、それと同時に、腎臓病の専門的知識がある小児科の医師が少ないというのも事実です。そのため、早い段階で適切な治療が受けにくい。私は、そのような現状を変え、将来、お子さんや親御さんが大変な思いをしないように頑張りたいと思いました。
開業されようと思ったきっかけは?

開業する前は愛仁会の高槻病院に勤務していました。その時に、子どもが入院することはとても大変なことだと痛感しました。共働きの夫婦も増えている中、親が常時、子どもに付き添うのは、簡単なことではありません。子どもにとっても精神的なストレスは大きく、これまでの生活が一変してしまいます。しかし、入院するまでに適切な治療に出合っていれば、そのような大変さも回避することができるのではと思いました。病気が初期の段階で、病状を判断して治療を行うのは町の診療所の役割です。自分自身がその最前線の場所で適切な判断をして、患者さんの負担が少なくなるような治療を提供し、場合によっては適切な医療機関へ導きたい。そんな思いが次第に強くなり、開業に至りました。
地域から頼られる、「温かい診療所」に
どのような診療所にしていきたいですか?

西宮は、転勤族や若いご家族が移り住んでこられることが多い地域です。そのため、近くに頼る実家や知り合いも少なく、子育てや病気のことを教えてくれる年上の方との交流もあまりありません。だからこそ私の診療所は、困った時に頼れる温かい場所でありたいと思っています。例えば受付には、親しみやすく経験豊富な女性のスタッフがいます。子育てで悩む若いお母さんが、病気以外のことでも気軽に話し、相談できると思いますよ。また、来院しやすいようにいろいろな工夫をしていきたいと思っています。例えば、予防接種の受診。隔離室を設けて、予防接種専用の時間以外でも受けつけられるようにしています。私の妻も働いているため、共働きの方が子どもを予防接種に連れていくこと一つとっても、時間のやりくりが大変なのはよく承知しています。もちろん、専業主婦の方々もお忙しい毎日かと。少しでも来ていただきやすい環境を整えることも意識しております。
診察にあたって大事にされていることは?
ホームケアのサポートです。病院で医師から説明を受け、その時は理解したつもりでも、家に帰ってみると、実際どうしたらいいかわからないという経験をされた方はいらっしゃるのではないでしょうか? 私は、ただ診断するだけではなくて、今後どのような状態が考えられるのか、そのときはご家庭でどのような対処が必要か、どうなれば来院が必要か、など具体的に丁寧にお伝えするようにしています。病気は決して怖いものではありません。知っておくこと、理解しておくことで不安は軽減されます。現在、ショッピングセンターにてデジタルサイネージを掲示しています。ホームケアについて広く啓発を続けたいですね。
診察時に子どもへの対応で心がけていることは?

まず、診療所に温かい雰囲気があることを大切にしています。私を含め、スタッフの接遇や待合室のインテリアも明るく親しみやすくなっているように意識しています。レントゲン室も子どもが思わず入りたくなるような、明るくて楽しいデザインにしました。そして、診察時には子どもの年齢や個性を考慮しながら、臨機応変に対応しています。例えば、インフルエンザの検査や予防接種。理解できる子には、鼻の中に検査キットを何秒入れるか、なぜこの検査や注射が必要なのかなど事前に検査の意味や方法を伝えます。一方、年齢が低い子や長い間じっとしているのが難しい子には、本人が気づかないうちに、さっと済ましてしまうこともあります。そこは、勤務医時代にたくさんの子どもを診てきた経験が役立っています。
おねしょで悩んでいたらまずは適切な医療機関に相談を
気になるおねしょ。治療が必要かどうか判断も難しいです。

おねしょなのか夜尿症なのか、まずは判断が難しいですよね。違いは年齢と頻度です。一般的に、5歳以降で月1回以上のおねしょが3ヵ月以上続くと、夜尿症の診断がつくことが多いです。小学校高学年まで続く子もいて、自信をなくしてしまうこともあります。そのため、まずは相談できる医療機関を探して、相談していただきたいですね。夜尿症の治療の基本は生活制限です。夜の水分の摂取を減らすことから始めて、薬を使うかどうか決めます。当院では、腎臓の奇形の有無などを調べる超音波検査なども実施していますよ。薬自体は飲みやすく、寝る前に口の中に入れるだけです。飴を舐めるような感覚ですね。ただ、すぐ治るわけではなく、変化を感じることが望めるようになるまで時間がかかりますが、少しずつ夜尿の頻度は減っていくでしょう。そうして、子どもに成功体験をつけてあげることで、改善へとつなげていきます。
先生の趣味や休日の過ごし方についても教えてください。
休日にはゴルフや船釣りといった自然の中で体を動かすことが気分転換になっています。最近始めたのが船釣りで、乗合船に乗って沖に出るスタイルです。自分の船ではないのですが、釣り船に乗って海に出ると、日常とはまったく違う時間が流れていて、非常にリラックスできます。こうした趣味の時間があることで、診療にもより集中できると感じています。
最後に今後の目標や読者へのメッセージをお願いします。

地域の皆さんに、適切に医療を提供するのはもちろん、ホームケアや正しい医療知識についての情報発信も積極的に行っていきたいですね。おねしょは、子ども自身も親御さんも気にされることが多いですが、実は医療の力で改善できるケースも少なくありません。とはいえ、子育ての中で「誰に相談すればいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。おねしょは成長の過程で自然に治ることもありますが、頻度や年齢によっては治療の対象になることもあります。お子さんの体質や生活習慣、心理的な要因など、さまざまな角度から診ていくことで、適切な対応が可能になります。親御さんが一人で悩みを抱え込まず、気軽に相談できる環境づくりが大切です。おねしょに限らず、子育ての中での不安や疑問は、遠慮なく医療機関にご相談ください。皆さんが相談に来やすいように、私もいろいろな垣根を低くしていきたいと思います。