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矢澤 聰 理事長の独自取材記事

矢澤クリニック北本

(北本市/北本駅)

最終更新日:2023/09/12

矢澤聰理事長 矢澤クリニック北本 main

JR高崎線北本駅東口を出てすぐにある「矢澤クリニック北本」。機能強化型在宅療養支援診療所および在宅緩和ケア充実診療所として、訪問診療を提供し、通院困難な患者の「かかりつけ医」として、日常診療から難病まで包括的に診療していることに加え、一般内科の他に泌尿器科、脳神経内科、循環器内科、腫瘍内科等の専門の医師たちが在籍し、日常の悩みから各種がん、難病までフォローできる。「患者さんが可能な限り住み慣れた環境でご家族や地域との絆を保ちながら自分らしい生活を送れるように、生涯にわたるかかりつけ医になりたい」と話すのは、同院理事長の矢澤聰(やざわ・さとし)先生。今回は矢澤先生に、同院の診療体制や在宅訪問診療・外来診療にかける思い等、さまざまな話を聞いた。

(取材日2022年10月26日)

通院困難な患者の生涯のかかりつけ医に

開院を決心された経緯や訪問診療を始めようと思ったきっかけを教えてください。

矢澤聰理事長 矢澤クリニック北本1

在宅訪問診療に最初に出会ったのは、大学卒業後の亀田総合病院での初期研修の時です。その後、母校である慶應義塾大学病院の泌尿器科に入局し、数年後、医局に関連のある埼玉医科大学病院で勤務しました。そこでは、ご家族がお仕事を休まれて介護タクシーで半日がかりで来院され、短時間の診療を受けてお帰りになる患者さんや、夜間に救急車で遠くからいらっしゃり、尿道留置カテーテルだけ交換してお戻りになる患者さん等を数多く拝見しました。そうしたシーンを見るたびに、患者さんやご家族のご負担を少なくできないか考えるようになり、私が患者さんのお宅に伺って診療する在宅訪問診療を行うため開院いたしました。泌尿器科という専門性においても在宅訪問診療の現場で貢献できることは多いと考えたことも大きな理由です。

開院してどのような手応えを感じましたか?

開院当初、訪問診療の内容をご存じではない方も多く、患者さんのご家族から不安げにお電話いただいた際、診療内容やご自宅でのケア、保険診療等について丁寧にご説明し、お電話の最後に安心されたお声でご依頼いただくこともありました。お一人お一人に合った診療を行えることに、たいへんやりがいを感じながら必死に業務にまい進しておりました。母校や亀田総合病院の先輩後輩等、さまざまな専門医師が手伝ってくれるようになると、さらなる医療的ケアの拡充を図ることができ、最期まで病院での療養生活を想定されていた患者さんを、ご家族や訪問看護ステーションと協働することで自宅療養を可能とし、基幹病院等との連携が強化されました。今も泌尿器科、脳神経内科、循環器内科、緩和ケア科等を中心にさらにさまざまな専門医師が加わっており、今後もさらなる医療貢献をしていきたいと思います。

訪問診療と並行して、外来診療を始めた理由は?

矢澤聰理事長 矢澤クリニック北本2

通院困難な方に対する包括的なケアを実現するため在宅訪問診療をスタートしました。そのうち、通院できる方々から「自分たちの健康管理もしてほしい」という要望が増えてきたため、火曜の午前で外来診療も始めました。患者さんが通院できる時は外来診療を、入院が必要な時にはその方に最適と思われる医療機関をご紹介し、退院後は当院で再びフォローいたします。お年を重ねられて通院困難になった時には訪問診療に切り替え、継続的かつ一貫した診療をしております。長い時間をかけてご本人やご家族と信頼関係を構築することで、その方の価値観に沿った医療の意思決定もご支援でき、療養生活の場所等について相談しながら支えていくこともでき、生涯のかかりつけ医として役割を全うできるのではないかと思っております。

「一人一笑」。診察ごとに笑顔を見ることが目標

先生が診察で大切にされていることは?

矢澤聰理事長 矢澤クリニック北本3

当院の訪問診療の特徴につきましてはホームページ内の「当法人の訪問診療」をご覧いただければ幸いです。在宅訪問診療は、ご家族や当院のスタッフが同席することが多いですが、茶の湯でいう「一客一亭」の世界に似ているところがあると思っています。一見すると毎回同じようなことの繰り返しに見えますが、一度として同じ診察はありません。患者さんは体調不良や不安を抱えていらっしゃるので、診察して処方箋を出して終わりではなく、安心した笑顔を毎回見られるように努め、「来てもらって良かった」「また来てほしい」と思っていただく、「一人一笑」を目標に一回一回の診察を大切にしています。もちろん外来でも同じ気持ちです。

患者さんとの会話の内容も丁寧に選ばれているとか。

訪問診療でも外来診療でも、患者さんとの会話はラジオの周波数を合わせるように話題を選ぶことを意識しています。年齢や性別、お仕事やご興味等によってご関心が異なりますので、患者さんごとにチューニングを合わせることができるよう、医療の面も当然ながら、社会的課題、歴史や文化、芸術等についても学び、人間力を磨くことも意識しています。そうすることで医師と患者さんという関係以上の信頼関係が構築されていくと感じています。

患者さんとのエピソードでは、どんなものが印象深く残っていますか?

矢澤聰理事長 矢澤クリニック北本4

患者さんとご家族ごとにストーリーがありますので、エピソードは数えきれないほどあります。例えば、長く当院の外来にいらしていた患者さんが、高齢になって体調を崩し通院ができなくなり、訪問診療に切り替えることは多々あります。その後、訪問診療で最期まで診療させていただき、患者さんが穏やかな気持ちでお看取りができたら、とてもうれしいです。ご家族から「今度は私たちが外来でお世話になります」とおっしゃっていただけたら、ご家族全員をケアするかかりつけ医として、医師冥利に尽きます。ご家族を診察しながら、患者さんを亡くされた後お元気で過ごされているか確認でき、たまには思い出話で盛り上がったりできます。そうすることが、悲しみの中にいるご家族を支えるグリーフケアにもなるのではと思っています。

地域医療を担う医師として、患者とその家族のために

こちらには多くの先生方が在籍されていますが、どのように連携を取っているのですか?

矢澤聰理事長 矢澤クリニック北本5

いつ、どのような疾患をお持ちの患者さんが、どれだけ多く来られても受け入れることができるクリニックでありたいです。質と量ともに担保しなければなりませんので、各専門性を持つ経験豊富な複数の医師と診療にあたっております。連携や診療の品質管理という点では、毎日、朝夕にカンファレンスを実施しており、各医師の診療後の振り返りを徹底しています。特に在宅訪問診療に関しては医師、看護師、相談員も含めて、患者さんの様子、今後の方針、急変時の対応等を毎朝確認してから患者さん宅に行き、戻ったら報告する。それによりチーム全体で情報の共有と方針の統一を徹底し、高水準の診療と管理満足度の維持をめざしています。また、最新の知見や業務改善、診療報酬等に関する情報共有の習慣をつくり、継続的な学習と相互研鑽を当院の文化として醸成しています。

研修医の先生や医学生のご指導にも携わっているそうですね。

医師としての倫理観、それはヒポクラテスの誓いまでさかのぼりますが、医師である以上、診療と研究と教育は、どのような立場でも実践する必要があると思っています。教育に関しては、病院での診療を行っている先生たちに在宅訪問診療の現場で実習、経験してもらうことは、先生本人にも今後診る患者さんに有意義であると思いますので、最大限協力しています。他にも、地域医療に携わる医師として地域や社会の役に立ちたいという思いから、医師会の活動、行政が行う地域包括ケアや在宅医療等をテーマにした講演、北本院では北本市地域包括センター運営協議会の会長職等、ご依頼いただいた際には可能な限りお引き受けしています。

今後の目標と読者へのメッセージをお願いします。

矢澤聰理事長 矢澤クリニック北本6

当院の将来的な目標やビジョンがある一方で、日々の診療の中で患者さんから言われた何げない一言にこそ重要な課題が隠れていたりします。その課題に取り組むことで次の展開ややるべきことの方向性が決まることがありますので、地域とともに成長し、必要とされるクリニックでありたいです。患者さんの言葉に真摯に耳を傾け、その言葉の背景にある心情や状況を意識しながら、日々の診療を一生懸命行うことが、患者さんに寄り添う医療だと思います。また、外来診療の場合はもちろん、特に在宅訪問診療の場合は、どのような状況が在宅医療に該当するか、保険診療の適用になるか等、わからないことも多いと思いますので、お気軽にご相談ください。これからも地域の患者さんとご家族を支えるクリニックであるべく努力を続けていきます。

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