川上 英孝 院長の独自取材記事
かわかみ内科
(吹田市/岸辺駅)
最終更新日:2023/02/06

JR京都線・岸辺駅北口から徒歩3分の場所にある、内科・脳神経内科を標榜する「医療法人かわかみ内科」。大阪市立大学医学部を卒業後、関連病院などで救急医療や在宅医療に力を尽くしてきた経験豊富な川上英孝先生が、より密接に患者と関わりながら地域医療に貢献したいと2018年に開業した。現在は生活習慣病診療を中心とした一般内科から、専門の脳神経内科まで「断らない医療」に取り組む川上院長のモチベーションは、“町のかかりつけ医”として、脳神経内科医としての「使命感」。これまで取り組んできた医療や、現在取り組む「断らない医療」、専門である脳神経内科について、院内の感染症対策など、幅広く話を聞いた。
(取材日2022年10月14日)
“町のかかりつけ医”として「断らない医療」をめざす
ご専門分野や取り組んできた医療、開業の理由などをお聞かせください。

私の専門は脳神経内科で、開業前はもっぱら救急医療を担当していました。しかし大きな病院の救急医療は急性期の患者さんが中心で、その後のフォローアップができないことから、「患者さんはその後どうなったのだろう。転院先で良い治療が受けられているといいな」という思いが尽きませんでした。また外来診療においては、特に私の専門領域であるパーキンソン病や認知症など慢性期疾患の患者さんに対し、もっときめ細かに診て差し上げたいという気持ちもあったんです。ところが大きな病院では救急対応ほか時間的制約などもあり、なかなか思いどおりにはなりません。そこで急性期を乗り越えた方や慢性期疾患の方を受け入れ、こまめな薬の調整や生活習慣の改善指導、リハビリテーションの構築などができる場所をと考え、当院の開業に至りました。
2018年の開業以来、一般内科からご専門の脳神経内科まで幅広く「断らない医療」に取り組まれています。
口幅ったいことを申し上げますと、これまでの救急医療や在宅医療などの経験から間口の広い診療が可能であると考えていますし、「この病気は診られない」などとお断りしたこともまずありません。もちろん無責任であってはならず、自分だけでは難しいと判断した場合は速やかに専門の医療機関をご紹介させていただくのは当然のこと。しかし最初から「診られない」としてしまうと、地域の方々に貢献するという“町のかかりつけ医”としての使命が失われると考えているため、ファーストコンタクトを必ず取るよう心がけています。
現在の患者層について教えてください。

開業から時間がたち、クチコミなどから専門領域である脳神経内科の患者さんが徐々に増えてきていますが、一番多いのは生活習慣病の患者さんです。通院が必要にもかかわらず、仕事など時間的制約から外来時間の限られる医療機関を受診できていない方は少なくないと思います。しかし、当院は夜8時まで診療を行っていることから、今まで病気を放ったらかしにせざるを得なかった高血圧症や糖尿病の患者さんにもお仕事帰りに受診していただけます。これは大規模病院にはない、クリニックならではの持ち味だと考えています。専門の脳神経内科は、内科のあらゆる分野に精通していなければならないというのが私の考え。そこを常にめざして研鑽を積み、生活習慣病についても十分に修業してきたという自負があります。
専門の脳神経内科も受診増加中。片頭痛治療にも注力
ここからはご専門の脳神経内科についてより詳しくお聞きしたいです。

脳神経内科、精神科、心療内科などよく似た診療科があり、症状によってどの科が対応するか、厳密に区別することは難しい面もあります。脳神経内科は脳・脊髄・末梢神経・筋肉などの構造的な問題が対応範囲で、精神科は「脳の活動」が守備範囲です。例えば、脳梗塞が原因で認知症の症状が出ているケースでは、精神科というよりは、内科あるいは脳神経内科での治療が必要になるでしょう。MRIなど画像診断で異常が発見できず、かつ社会への適応が困難な場合は精神科の出番といえます。つまり脳神経内科は解剖学的・病理学的に何らかの所見があるとき、精神科なら脳の働きに異常があるときが、両科を区別する大きな指標となります。当院では、パーキンソン病、脳梗塞の後遺症などの高齢者の患者さんが多いですね。
最近では脳神経内科領域の患者さんが増えているそうですね。
体のしびれや歩行障害などを訴える患者さんのご来院が増加しています。この場合、変形性腰痛症・頸椎症などの方も多いのですが、脳神経内科領域ではパーキンソン病や脳梗塞などによる脳血管性パーキンソン症候群などが考えられます。また本来であれば救急車で搬送されるべき脳梗塞や脳出血の方が、自力で外来に来られることも。すぐに目の前の国立循環器病研究センターをはじめとする提携病院でMRIを撮ってもらい、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍の有無を確認します。大きな病院は外来時間や紹介状などさまざまな面でハードルが高いため、比較的受診しやすいクリニックで発見されるというケースは少なくないんですよ。
片頭痛で受診される患者さんも増加中とお聞きしました。

片頭痛は気候の変化、寝不足や寝過ぎ、月経前など、何らかのきっかけがあって発症し、長ければ数日間続き、会社や学校にも行けないなど生活に不都合を生じさせます。ところが「たかが頭痛だろう」と周囲からは理解を得られにくく、孤立してしまう方も少なくありません。現在は症状が出た際に用いる頓服薬のほか、頻度が高い方にご提案する予防薬など、患者さんと相談の上、適した薬を適切に使用して症状の改善を図ります。特に予防薬はたくさんの種類があり、保険診療ですが自己負担が高い、より重症の方の選択肢の一つとなる注射治療もご用意しています。頻度の高い片頭痛を、日常生活に支障がないくらいまで誘導することは、脳神経内科医師としての誇りでもあるのかなと感じています。
モチベーションは「使命感」。訪問診療にも取り組む
在宅医療にも積極的に取り組んでいらっしゃいますね。

神経難病の患者さんを中心に、認知症なども含めた通院困難な方のご自宅に訪問し、診療を行っています。連携している訪問看護ステーションの方々のお力を借りながら、24時間365日対応しています。医師は私1人のため大変なこともありますが、特に紹介を受けることが多い神経難病の患者さんは、その専門家である脳神経内科医こそが診療すべきだという使命感を持って診療にあたっています。現在は良い薬もたくさん出てきているので、副作用を起こさないように適切な薬を適切に処方し、患者さんが天寿を全うできるようにサポートしたいと考えています。神経難病も今は薬でのコントロールが可能となりつつありますので、不治の病と考えず、治療に取り組んでいただきたいですね。
感染症対策にも力を入れていると伺いました。
発熱や咳などの症状がある患者さんも、「絶対に断らない」をモットーに診療を行っています。一般の患者さんはロビーで、発熱患者さんは異なる動線を通って予備室でお待ちいただくなど、症状による分離を徹底しています。予備室でも対応できない高熱の患者さんが来られたときに備え、紫外線殺菌も可能な簡易陰圧ルームも整備しているのでご安心ください。また換気しながら冷暖房が効く空調装置を入れ、加えて休憩時間には窓を全開放して空気の入れ替えも実施中です。このほか会計での混雑を避けるためのキャッシュレス決済、スピーディーで書き間違いなどのリスクも減らせる二次元コードを活用した処方箋なども導入しています。
読者へのメッセージをお願いいたします。

地元の方々が必要とする医療を提供し、地域に貢献したいという思いで2018年に開業しました。現在は咳や発熱といった症状から、生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群の検査・治療、私が専門とする脳神経内科まで、幅広い診療を行っています。当院が理想とするのは、医学的にも妥当性があり、かつ患者さんも納得できる治療をめざし、患者さんやご家族の希望をできるだけ取り入れながら、予想される結果なども十分に話した上で治療プランをつくり上げていくこと。できる限り専門用語を使わず、わかりやすい説明を心がけながら、患者さん一人ひとりに応じた全人的な医療の提供に努めています。患者さんから見て、医師と合う・合わないといった相性の問題はあると思いますが、ぜひ上手に開業医院を活用していただけたらと考えています。