骨折しないで元気に暮らすために
検査から始める骨粗しょう症対策
足と歩行の診療所
(大田区/蒲田駅)
最終更新日:2025/04/11


- 保険診療
年々患者数が増加しているとされる骨粗しょう症。骨の形成と破壊という代謝バランスが崩れ、骨がもろくなった状態を指し、手をつくなどの軽い衝撃でも骨折する場合がある。骨折の場所によっては寝たきりになるきっかけとなってしまう可能性もあり、それを防ぐためにも早期に検査・治療を受けることが重要だ。吉原正宣先生が院長を務める「足と歩行の診療所」では、骨格や関節可動域などを診ることで足と歩行の悩みにアプローチする一方で、骨粗しょう症の検査・治療にも力を入れる。「私たちが望んでいるのは患者さんの骨が折れないことです」と話す吉原院長に、骨粗しょう症の基本的な知識や、検査・治療ではどのようなことが行われるのかなどについて話を聞いた。
(取材日2025年1月31日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q骨粗しょう症とはどのような疾患なのでしょうか?
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A
わかりやすく説明すると、骨がすかすかになっている状態です。もともと骨は破壊と形成を繰り返し、常に新しく作り出されています。それが何らかの理由で、骨の形成ができなくなったり、骨の破壊をしすぎたりしてバランスが崩れ、本来密な骨の内部に空間がどんどん生じてしまうのです。これが骨粗しょう症で、何かの拍子に尻もちをついたり、つまずいたりしただけで骨が折れやすいことが問題視されています。女性に多いのは、閉経後に女性ホルモンが減少することが影響しているからですが、原因は多岐にわたります。ご家族に罹患歴があるとかかりやすいですし、最近では糖尿病や高血圧症といった基礎疾患との関連性も指摘されています。
- Q検査は何歳くらいから受ければ良いのでしょうか?
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A
女性では特に40代以上に検査をお勧めします。生活習慣病、膠原病のような自己免疫疾患、甲状腺疾患、治療にステロイドを使う病気などを患っている人も検査を受けたほうが良いでしょう。新型コロナウイルス感染症の流行を経た今、体を動かすことや運動量が減った人も多く、年齢や性別に関係なく骨密度の低下に影響することを懸念しています。中には30代の男性が骨粗しょう症になる例もあります。骨粗しょう症は自覚症状がほぼないため、積極的に検査を受けようと思われない傾向にありますが、これまでに検査を受けたことのない方は受診の検討をいただきたいです。
- Q治療はどのように進めていくのでしょうか?
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A
背骨のエックス線撮影と骨密度測定、採血の結果を総合的に判断し、治療内容を決めます。薬は経口薬や注射薬など、それぞれ投与間隔や投与期間が異なるさまざまな種類があり、生活スタイルに合わせて患者さんが選べるケースもあります。並行して食生活の改善や運動の推奨といった指導を行います。骨に刺激があると代謝が促されるため運動は特に重要な要素で、患者さんの生活スタイルを聞いた上で、足りないものを補う運動を指導しています。原則として治療に終わりはなく、投薬、食事、運動など何らかの対策は続けていく必要はあると考えています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診からスタート
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既往歴や家族が骨粗しょう症だったかどうか、日頃の運動や食事の内容、仕事内容などを医師が細かく問診。最近になって運動量が減っていたり、転びやすくなっていたりする人は要注意。骨粗しょう症は自覚症状がほぼないため、同院では自治体実施の骨粗しょう症検診の存在を知ったり、周囲の人が骨粗しょう症で骨折したのを聞いたりして、来院する人が多いという。
- 2エックス線検査と骨密度検査
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背骨のエックス線を撮影し、背骨が曲がっているか、変形やずれがあるか、折れやすくなっているかなどをチェックする。大きな力が加わったようなことはないのに骨折しているケースも中にはあるそう。骨密度検査はベッドに仰向けの姿勢で横になり、背骨と股関節を測定。エックス線検査の結果はすぐに出るが、骨密度検査は測定後の解析に時間をかけて精密に行うため、1週間ほどの期間を空けて検査結果を聞きに行く。
- 3検査結果の説明、採血検査
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エックス線と骨密度の検査結果の説明。骨密度は20~40代の平均値に対してパーセンテージで表したもので、検査結果から将来どのようなことが起こり得るのかといった説明もある。骨密度が低い場合は採血検査へ進む。この検査では、骨を壊す破骨細胞と骨を形成する造骨細胞が働くことで生じる物質の指標である骨代謝マーカーを測り、どちらの細胞が優位なのかといったことを導き出す。
- 4治療内容を決定し、薬物治療をスタート
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これまでに受けた検査の結果を医師が総合的に判断し、治療内容を決定していく。現在、骨粗しょう症の薬は多くの種類が出ており、週に1回通院しなければいけないケースや、年に1回の点滴だけで良いという場合もある。医師と相談しながら、場合によっては自分の生活スタイルに適した薬を選べることもある。同院では併せて指導を行う運動や食事についても、患者の生活に応じて無理なく実践できる内容を提案している。
- 5定期的な通院と経過観察
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投薬される薬に応じて通院し、運動や食事にも気を配った生活を送り、まずは骨密度70%以上をめざす。4ヵ月に1回程度の頻度で骨密度の検査を行い、薬が合っているのかどうかを医師がチェック。期待した成果が得られなかった場合は、薬の内容を変えて治療を継続。ただし、骨密度が70%を超えたら治療をやめて良いというわけではなく、骨が折れない生活を維持するためには通院を継続し、定期的な検査が必要になる。