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日比野 賢嗣 院長の独自取材記事

ひびきクリニック

(大阪市城東区/深江橋駅)

最終更新日:2023/08/16

日比野賢嗣院長 ひびきクリニック main

大阪メトロ中央線・深江橋駅より徒歩10分ほどの場所に位置する「ひびきクリニック」。国立大阪医療センターや大阪府立成人病センターでがん治療や手術に携わってきた日比野賢嗣(けんじ)先生が、退院後の患者のアフターケアに力を入れたいと開設したクリニックだ。女性医師1人を含む3人の医師が在籍する同院では、外来診療に並行し在宅医療を行っている。「住み慣れたわが家で、その人らしく、家族と過ごしてもらうためのサポートをしたい」と語る日比野先生に、クリニックの診療方針や医療にかける思いなどさまざまな話を聞いた。

(取材日2019年11月7日)

患者に寄り添った診療を。その気持ちが在宅医療の道へ

こちらのクリニックは、3年半前に継承されたとお聞きしました。

日比野賢嗣院長 ひびきクリニック1

はい。こちらを開設する以前、私は谷町の国立大阪医療センターや森之宮にあった大阪府立成人病センターで消化器がんの診断や治療に携わっていました。このような大きな病院は抱える患者数も非常に多く、治療や手術が終わると患者さんはすぐに病院から出されてしまいます。末期がんの方や術後も治療を必要とする方を最後まで診てあげられないことが、私としてはつらかったんです。そうしたことから在宅医療に携わる医師になることを決意し、勤務先であった病院の沿線である中央大通沿いで開業する場所を検討していたところ、ちょうど後継者を探しておられる先生と出会いました。そこでそのクリニック自体を継承し、従来どおり外来診療も続けながら、念願の在宅医療もスタートさせました。

勤務医時代の患者さんへの思いが、先生を在宅医療の道へ進ませたのですね。

そうです。もともと内科を選んだ理由が、体育会系で手術がメインになる外科よりも、患者さんとコミュニケーションを取りながら治療を進める内科のほうが、人と接するのが好きな自分に向いていると思ったからです。大勢の患者さんを一度に診るのではなく、患者さん一人ひとりに寄り添い、患者さんの気持ちを尊重する診療がしたかったんです。消化器内科を専門にしたのは、消化器が体の大部分を占める臓器だから。胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓。その守備範囲が広いんです。また、消化器がんの中でも膵臓がんが近年増えており、肝胆膵領域がんに興味を持った私は数多くの症例を扱う成人病センターへ移籍しましたが、大規模病院では患者のアフターケアまでは手が回らない……というのが実態でした。

現在、先生が診ておられるのはどのような患者さんですか?

日比野賢嗣院長 ひびきクリニック2

城東区は住宅が多く、高齢化が進んでいます。昔からここに住んでおられる方が大勢いらっしゃって、皆さん気さくな方ばかり。訪問診療に行く途中で道ですれ違った方が当院の患者さんで、あいさつしてくださることもしょっちゅうです。一家族全員が当院に来てくださることもあり、クリニックでは2歳以上のお子さんから高齢の方まで幅広く診ています。在宅医療をしていることを患者さんもご存じですので、独居のご年配の方などは「通院できなくなったら、うちに訪問に来てよ」とおっしゃいます。このように外来が困難になり、ご本人またはご家族から依頼があって在宅医療を始めるケースも少なくありませんが、地域のケアマネジャーや訪問看護師など過去に一緒に仕事をした方から「先生、またお願いします」と患者さんを紹介されるケースが一番多いですね。その場合の患者さんは、がん末期や脳梗塞の後遺症で寝たきりの方、認知症の方などです。

3人の医師が、患者とその家族の健康と心に配慮

クリニックには、3人の医師がいらっしゃるのですね。

日比野賢嗣院長 ひびきクリニック3

はい。それぞれ消化器病、消化器内視鏡、糖尿病を専門とする常勤の医師が在籍しています。外来診療に関しては、担当する曜日、さらに午前・午後に分けて、3人で3分割しています。医師によって担当する曜日が決まっていますので、患者さんが医師を選ぶこともできます。在宅医療は365日24時間体制ですので、オンコール用の携帯電話で夜間や週末でも患者さんやご家族とすぐに連絡が取れるようになっています。夜間の急な往診というのは実際には多くないのですが、そうなるとご本人もご家族も不安になりますよね。予測できる症状に対しては、あらかじめ薬をご自宅に置いておくなど、日中の往診で工夫しています。

訪問診療の際、心がけておられることはありますか?

在宅医療には、がん末期の患者さんが結構な割合を占めます。病院だと好きなことができない、気持ちが休まらないと言って、ご自宅での療養を希望される方がほとんどです。ですから私たちも、患者さんが家でも安心して、できるだけ笑って過ごせるように心がけています。「いつでも私たちと連絡が取れますよ」と言うと、患者さんもご家族もほっとした顔をされますね。在宅医療をする上で、ご家族の力というのは大きなものです。ご家族の協力・理解を得ることが重要なのですが、ただ、危険な状態に直面すると「もう家では看られない」とおっしゃる方もいます。そうなると患者さんは病院に戻ることになり、私たちも残念な気持ちになります。逆に頑張り過ぎるご家族もいらっしゃいますので、そういう方には、「ご家族が倒れたりしたら、患者さんがご自宅で過ごせなくなりますよ。無理せず、うまく息抜きをしてください」とお声がけしています。

車だけではなく、自転車や徒歩で患者さんのご自宅へ向かわれることも多いとか。

日比野賢嗣院長 ひびきクリニック4

この辺りには昔ながらの長屋がたくさん残っており、患者さんの多くがそういったところに住んでおられます。車も小回りの利く小型のものを使用し、自転車や徒歩で患者さん宅へ向かうこともよくあります。訪問診療を始めた頃に用意したのは、家でも使える小さなエコーです。主に腹水の状態を把握するのに使用しています。車の中には点滴や薬など最低限必要なものを準備していますが、装備はできるだけ少なく、エコーのほかは聴診器と採血キットだけ。身軽に動けることが大切なんです。

住み慣れたわが家で、その人らしく生きるサポートを

患者さんとの印象に残るエピソードを教えてください。

日比野賢嗣院長 ひびきクリニック5

つい最近のことなんですが、在宅医療にとても熱心な娘さんがいらっしゃる患者さんを担当していました。最期までご自宅で過ごされ、私が看取りをしました。亡くなられてすぐに、娘さんが「先生に聞いてもらいたいものがある」とおっしゃるんです。それは、その方が亡くなられる1~2週間前に、私へのメッセージを録音したものでした。私たちは普段、患者さんやご家族の前では努めて感情的にならないようにしています。涙ぐんだりすることもないのですが、その時ばかりは患者さんへのさまざまな思いがめぐり、感極まって涙がこぼれてしまいました。

プライベートについても伺います。先生ご自身の息抜きには、どのようなことをなさるのですか?

ゴルフです。ゴルフは昔から好きで、学生の時にはゴルフ部に所属していました。勤務医の頃は忙しく、年に一度コースに行けるかどうか、という感じだったんですが、開業してからは医師会のメンバーに誘ってもらって2ヵ月に一度は行けるようになりました。大好きだったゴルフを始めるとゴルフ熱が再発してしまい、今では練習にも熱心に通っています(笑)。体にも良いですし、日ごろのストレスも解消されます。

訪問診療を考えている方にメッセージをお願いします。

日比野賢嗣院長 ひびきクリニック6

訪問診療では、患者さんの話をゆっくり時間をかけてお聞きするように心がけています。患者さんの希望をできる限り尊重し、長年住み慣れたご自宅で、安心して、その人らしく過ごすためのサポートをすること。それが私たちの理念であり目標です。当院には女性医師も在籍しておりますので、男性医師に話しづらいことは女性医師にご相談いただければ、と思います。費用は健康保険が適用されます。ご不明な点は、お気軽にお問い合わせくださいね。私は診療の最後にいつも、「ほかに何か相談したいことはありませんか?」とお尋ねしています。そうすると、「そういえば……」と患者さんがおっしゃってコミュニケーションが広がるんです。そうしたことを今後も大切にしたいと思っています。

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