背の伸びが心配な子どもに
低身長の治療は早めの相談が鍵
新川崎ふたばクリニック小児科・皮膚科
(川崎市幸区/新川崎駅)
最終更新日:2022/06/07


- 保険診療
子どもの成長とともに、気になり始めるのがその発育と発達。入園や入学を迎え、集団生活を送るようになると、同級生との差に悩みを抱える保護者も多いだろう。特に身長は、ひと目で差が目につくため、気になるケースも多い。「身長は一人ひとりの個性として受け止めることも必要。その上で、治療が必要な場合は、できるだけ早めにスタートすることが重要です」と語るのは、「新川崎ふたばクリニック 小児科・皮膚科」の佐藤清二院長。低身長や肥満、思春期早発症など、子どもたちの成長に関わる相談にも積極的に対応している。「ずっとクラスの背の順が一番前で心配」「他の子にどんどん身長を抜かされてしまう」など、身長に関わる相談を数多く受けている佐藤院長に、気になる低身長の治療について、話を聞いた。
(取材日2022年1月18日)
目次
子どもの身長の伸びが気になったら、早めの相談で適切な治療へつなげよう
- Q小児の低身長について教えてください。
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A
▲低身長や発育など成長に関連する代謝内分泌分野が専門の佐藤院長
身長の伸びを成長曲線に記録し、標準偏差値(SD)を見た時に同年齢の平均より2SD以上低い場合、低身長とされます。統計上、同年齢100人の中で2〜3人が低身長と定義されることになります。「クラスで一番身長が低い」と相談に来られる方が多いですが、一つの学年には、4月生まれから翌3月生まれまでのお子さんが在籍していることにも注意が必要です。同年齢での身長の伸びを比較するためには、成長曲線を描いてみることをお勧めしています。多くの場合、低身長と定義されても、体質によるものであり、病気ではありません。しかし、成長ホルモン分泌不全や染色体異常や内臓疾患に起因するものもあるので、医師による見極めが必要です。
- Q治療が可能な低身長について詳しく教えてください。
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A
▲院内は検診、予防接種、各種検査体制を整えている
成長ホルモンや甲状腺ホルモンなど、ホルモン分泌不全による低身長では、ホルモン補充療法が可能です。分泌不全により不足しているホルモンを定期的に補うことで、成長を促す治療です。ホルモン補充療法は、成長ホルモン分泌不全性低身長症に限らず、他の原因に起因する低身長にも行うことが認められています。具体的には、ターナー症候群やプラダー・ウィリ症候群といった染色体異常による低身長や、慢性腎不全性の低身長症、出生時に在胎週数の標準より小さく生まれ、成長が追いつかないまま低身長となるSGA性低身長症などです。これらの診断を受けた低身長では、保険診療での成長ホルモン補充療法が適応となります。
- Qどのような検査や治療を行っていくのでしょうか?
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A
▲こちらの成長曲線で身長の低さが病的なものなのかを確認する
まずは標準的な成長曲線との比較においてお子さんの成長を確認します。診察時に記入した成長曲線をお持ちいただけるよう、当院のサイトでは、手書き用の成長曲線シートのPDFデータを、男女別にダウンロードできます。成長曲線により2SD以上の差が認められれば、採血、手のエックス線撮影といった基本的な検査を行います。ホルモン補充療法では、1日1回皮下注射によりホルモンを補充します。ご自宅での注射というと抵抗感を示される方も多いですが、ごく細い針を使用するため、痛みはほとんどありません。初めは月に1度の通院で経過を観察し、徐々に間隔を開けていきます。一般的には6年程度続ける方が多いでしょうか。
- Q治療を始めるべき年齢やタイミングを教えてください。
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A
▲穏やかな笑顔で相談に乗ってくれる佐藤院長
思春期を迎える間に十分な治療期間をとることを考えると、小学校入学前に治療を開始することになります。近年、小学校では身体測定データをチェックするシステムがあり、学校経由で受診を勧められるケースも増えています。しかし、思春期までの期間が短いため、それでは少し遅いことも。できれば本来の体格が測定できるようになる3歳児健診をきっかけに、お子さんの成長を改めて確認していただきたいと思います。母子手帳には6歳までの成長曲線があります。身長差は個性であり、深く気に病む必要はありません。しかし、まれに「もう少し早く受診されていれば」と思わされることも。気がかりであれば早めにご相談ください。
- Q低身長の他、発育に関してどのような相談がありますか?
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A
▲病気だけでなく子育ての悩みに乗るプライマリケアを提供している
私の専門が内分泌ということから、当院では成長に関わる診療も行っています。低身長に続いて肥満の相談が多いです。特に新型コロナウイルスの感染拡大を受けての自粛生活により、体重の数値的には問題がなくともおなかだけぽっこり出た子が増えたことが気になっています。運動不足に起因するものでしょう。ほかに、思春期を早く迎えてしまい、女の子では小学校低学年でおっぱいが膨らんできたり、初潮を迎えたりといった子の相談もあります。思春期早発症は、男子では発見が少ないのですが、声や毛、体格などの変化により見つけられます。まれに治療を急ぐ基礎疾患などが隠れているケースもありますので、注意が必要です。