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下山 祐人 院長の独自取材記事

あけぼの診療所

(新宿区/曙橋駅)

最終更新日:2020/04/01

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新宿区に拠点を置き、16km圏内を中心に訪問診療を行う「あけぼの診療所」。救急医療をはじめ数多くの命の現場で経験を重ねてきた下山祐人院長が、2017年に開業した在宅診療専門クリニックだ。「診療パートナー」と呼ぶ看護師、言語聴覚士などの国家資格者らとともに、さまざまなサポートを迅速に提供できるよう努める。「患者さんご自身に自宅で自分らしく過ごしてもらいたい」「ご本人と家族が納得して前に進むお手伝いがしたい」と語る下山院長に、診療所の特徴や患者への想いを聞いた。
(取材日2018年12月18日)

患者の「困った」に迅速に対応する医療のプロ集団

在宅専門の診療所と伺いましたが、特徴や診療ポリシーを教えてください。

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当診療所は、病院と同じ役割を担える質の高い在宅医療を提供することをミッションとしています。在宅医療というと終末期の患者さんに対するもので、あまり積極的な治療を行わないというイメージを持たれるかもしれませんが、当診療所は通常病院で受けるような医療、例えば輸血なども行います。輸血のために通院や入院をするのは患者さんにとって大きな負担になりますから、それを在宅で受けられるいうのは、患者さんの大きな負担軽減となっていると考えます。安心して自宅療養していただくという点では、対応のスピードも大切です。連絡をいただいたらどんな状況でも断りません。患者さんが入院先から一時帰宅できるタイミングが限られていることもあります。そんな時にも手間取ってタイミングを逃すことのないよう日頃から各事業所と連携して、患者さんが安心してご自宅に戻れるよう、迅速に対応しております。

訪問する範囲や診療内容は?

基本的に当診療所から16km圏内が訪問範囲です。1日あたり60~90kmほど走っていますから、かなり広域をカバーしていますね。東京23区はもとより、23区外の東京都東地域の一部、埼玉県南地域の一部などです。練馬区・板橋区・豊島区の辺りが多いですね。診療内容としては内科や循環器科、形成外科、皮膚科をはじめ、入退院を繰り返す心不全、褥瘡などの大きな傷、認知症の患者さんも診ています。赤血球製剤や血小板製剤の輸血の他、中心静脈栄養、在宅酸素療法、モルヒネ注射なども行っていますし、あらゆる症状に迅速に対応するため、診療の際には大型の車にさまざまな機材を積んでいるんです。医療はもちろん、生活面の課題解決やご家族の不安と向き合うことも含め、総合的なサポートを提供しています。

在宅専門診療所を利用するメリットは何でしょう?

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第一のメリットは、自宅で自分らしく過ごせるということです。在宅だと病院とは異なり、患者さんは好きな時間に起き、自分で決めた食事を取り、私服を着て好きな時間に寝ることができます。在宅医療を選択することは、ご自身の生活すべてに対して家族と一緒に意思決定し、自らの選択を積み重ねた生活を送ることができる、ということです。さらに当診療所では、医療依存度が高い患者さんも多く診させていただきます。根本的な治療が難しい方でも、症状を緩和したり元気な状態をできる限り維持したりすることで、最期まで自分らしい療養生活を送れるようサポートできます。いろいろと不安を抱えておられる方には、安心できるまで何度でも話をし、一緒に解決法を見つけていきますので、ご家族も含め皆さんで納得して自宅療養に取り組んでいただけるのではないでしょうか。

本人や家族が納得できる自宅療養をめざす

訪問の際にはさまざまな職種の医療関係者も同行するそうですね。

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私たちは「診療パートナー」と呼んでいるのですが、看護師・言語聴覚士・理学療法士・作業療法士といった国家資格者と一緒に行動しています。診療パートナーとは、医師だけでなく「患者さんに寄り添うパートナー」という意味です。診療パートナーの仕事は大きく分けると3つあり、1つは医師の診療のサポート、2つ目は安心して療養生活を送ってもらうための環境調整、3つ目は患者さんやご家族の意思決定支援です。環境調整とは、例えば寝起きがつらい患者さんに介護用ベッドを入れる提案をしたり、手すりをつけたりする手配を行ったりしています。これにはケアマネジャーさんら他職種の方々との連携が必要なので、いろいろな医療・介護事業所と協力体制を築いています。一番重要なのは意思決定支援で、患者さんの本音をくみ取ったり、ご家族の意向を聞いたりして「自分らしい療養生活」の実現ができるよう、多くの選択肢を持ちながら行っています。

患者さんやご家族と向き合う上で先生が大切にされていることは何ですか?

当診療所で一番大切にしているのが、先ほども述べた「意思決定支援」です。医師はどのような方向性で治療を進めるか、考えられる選択肢を示さなければなりませんが、選んだ結果どうなるのか、何が良いのか決まった正解がないので、患者さんに一人で決めろというのは酷なことです。だからこそ私たちが一緒に決めるお手伝いをして、納得して前に進んでいただくことが重要になります。自宅療養の患者さんの中には余命宣告を受けた方もいらっしゃいますが、関係者が皆で一緒に考え、気持ちを一つにして臨むことが、ご家族が前を向いて歩んでいけるきっかけになるのではと考えています。

スタッフへはどのような気持ちで接しておられますか?

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日頃からコミュニケーションを密に取り、患者さんから急な連絡があった場合にも速やかに連携が取れるようにしています。当診療所の財は人ですから、すごく大事にしています。スタッフに気持ち良く働いてもらえないと、患者さんにいい医療は提供できませんから。私はMBA(経営学修士)も取得しているのですが、経営面や人材育成に関してはこの経験が大いに役立っているように思います。スタッフには知識向上のため勉強会などにも積極的に参加してもらっています。子育て中の医師もいますが、時にはお子さん連れで診療に出向き、診察中は別のスタッフが車で子守をしたりして、協力し合いながら頑張ってくれていますね。子育てや介護など、生活の変化にも対応しながら、長く働いてもらえる環境を整えていきたいです。

在宅医療を通じ家族の価値を実感

医師をめざした理由と、在宅に注力し始めたきっかけは何だったのですか?

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父が医師だったので医療は身近な存在ではあったのですが、進路を決められることへの反発心から最初は工学部に進学しました。ところが突然、父が亡くなってしまいまして。人の死を目の当たりにして、自分に何かできることがあったのではないかと感じ、それを機に医学部へ入り直しました。そして突然死と関わりの深い循環器を専攻したのです。卒業後はカテーテルを専門として血管の治療に取り組んでいたのですが、ある時訪問診療と出合い、在宅で病院と同じ診療が提供できる可能性を感じて在宅専門の診療所開設へと向かっていきました。医業へ進むきっかけが父の突然死だったので、医師としての私の軸の上には常に父がいて、親子・家族の関係がありました。在宅医療は「どうしたら家族が良い形で死を受け入れられるのか」ということに関わってくるので、まさに私が追求したいところだったのです。

在宅医療に携わってこられて、思い出深いエピソードはありますか?

これからお子さんに家業を引き継がなければならない方が余命1ヵ月と宣告され、在宅医療を依頼されたことがありました。私たちは輸血や点滴、投薬コントロールなどできる限りのケアを尽くし、その方は療養しながら6ヵ月にわたってお子さんへ必要な引継ぎを行い、その後亡くなりました。行ったケアは、ご本人の体の状態に合わせるのはもちろん、ご本人とご家族の気持ち、家業の行事のタイミングなど、さまざまな状況を加味しながら提供していきました。そのご家族はやるべきことを尽くし、納得してお父さまを送り出されていたので、自分の中でも特に印象深い出来事として残っています。私たちは常にご家族に寄り添い、しっかり話し合った上で診療方針を決めていきますが、ご家族ごとに、患者さんの病状はもちろん、考え方やニーズは千差万別です。その一つ一つにきめ細かく応えられるのも、病院での診療にはない在宅医療ならではの特徴だと思います。

今後の展望をお聞かせください。

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これまでずいぶんと悩みながら、良い在宅医療の形を作り出してきたと考えていますので、今後はそれをさらに洗練させて規模を大きくしていきたいですね。スタッフもさらに充実させたいです。多様な患者さんやご家族の心に真に寄り添える在宅医療を提供していきます。

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