吉村 直樹 院長の独自取材記事
大堀IBDクリニック
(世田谷区/池ノ上駅)
最終更新日:2023/06/13

京王井の頭線・池ノ上駅から徒歩約8分。閑静な住宅街を抜けた淡島通り沿いに「大堀IBDクリニック」はある。同院では潰瘍性大腸炎とクローン病などのIBD(炎症性腸疾患)の治療を重点的に行うとともに、消化器内科や肛門疾患の診療、内視鏡検査などを専門的に行っている。2021年7月から院長を務める吉村直樹先生は、東京山手メディカルセンターに長年勤務し、数多くの診療を行ってきたIBD治療のスペシャリスト。生物学的製剤などを用いた専門的な治療を得意としながら、かかりつけ医として患者に寄り添う診療に注力している。「気になるおなかの症状があれば、まずお電話一本、気軽にご相談ください」と、心強い言葉をくれた吉村院長に、これまでの経験から同院での治療内容などについて話を聞いた。
(取材日2023年4月10日)
潰瘍性大腸炎とクローン病の豊富な知見を地域に還元
まず、クリニック名にあるIBDとはどういった病気なのでしょうか?

潰瘍性大腸炎とクローン病に代表される病気で炎症が腸に過剰に起こる炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease)をIBDと呼びます。10~30代の若い世代に多く見られるのが特徴で、わが国でも患者数は年々増加しており、最近の調査によれば潰瘍性大腸炎は22万人、クローン病は7万人いると報告されています。IBDの原因はまだ解明されていませんが、遺伝的要因や食事、喫煙、ストレスなどの環境的要因、ほかに腸内細菌、免疫異常などのさまざまな要因が組み合わさって発症し、慢性に経過します。どちらも現在のところ、まだ完治させる内科治療法がないことから難病に指定されています。適切な治療を続けて症状のコントロールを図り、健康な方と変わらない日常生活が送れることをめざします。
こちらのクリニックの院長になられた経緯を教えてください。
もともとIBDの治療に力を入れている東京山手メディカルセンターに勤務し、多数のIBD患者さんの治療を手がけていたのですが、2018年より毎週土曜、当院の非常勤医としてIBDの診療を行うようになったんです。IBDは若い人に好発する病気ですから、私の患者さんも学生さんや働き盛りの社会人が多く、そういった方々は土曜受診を希望されるので、こちらで診察していたのです。東京山手メディカルセンターでは1日の患者数がとても多く、長時間お待たせしてゆっくり対話することも難しい状況が続いていました。そういう中、診察時間を十分とって一人ひとりの患者さんに寄り添ったIBD診療を行いたいという想いもあり、定年も近くなったのを機に当院の院長に就任した次第です。これまでの経験を生かしながら、IBD治療を中心におなかとお尻の地域のかかりつけ医として、気楽に利用していただけるクリニックにしていきたいと思っています。
長年、IBDの診療に携わってこられたのですね。

新潟大学卒業後、千葉大学医学部第二内科でIBDの診療と研究に従事し、学位取得後の2004年10月より東京山手メディカルセンターの前身である社会保険中央総合病院に入職し、炎症性腸疾患を扱う部門の診療部長として、潰瘍性大腸炎、クローン病ともに数多くの診療にあたってきました。また、責任医師として数々の臨床治験にも携わってきましたので、生物学的製剤の使用経験は豊富です。現在当院には、私が前医から診てきた患者さんを中心に、潰瘍性大腸炎が約500人、クローン病が約150人、併せて650人ほど(2023年1月~2023年3月)の患者さんが定期通院しています。
専門のIBD治療と併せ、一般消化器疾患にも広く対応
こちらではどのようなIBD治療が受けられますか?

潰瘍性大腸炎では薬物療法が中心となります。5-ASA製剤のほか、必要に応じて局所製剤も併用し、それでも炎症が治まらない場合はステロイドを投与します。ただし、ステロイドの使用に際しては2週間程度で評価を行い、症状の改善が認められない場合は、免疫調節薬や生物学的製剤、JAK阻害剤を導入します。クローン病も潰瘍性大腸炎と同様、まず5-ASA製剤を使いますが、潰瘍性大腸炎と異なる点は、生物学的製剤が治療の主役となっているため、ステロイドをスキップして当初から生物学的製剤を用いるケースも少なくありません。そのため当院には生物学的製剤投与のための点滴室も設置しています。「入院させない」を目標に、当院では外来で行える治療にすべて対応できるよう環境を整えていますが、再燃増悪して入院が必要な場合、CTや小腸造影検査が必要な場合は、連携先の東京山手メディカルセンターや東京医科大学病院にご紹介しています。
そのほかの診療についても教えてください。
当院は文字どおりIBDを専門とするクリニックですが、地域のかかりつけ医として、消化器疾患を幅広く診ています。下痢や腹痛、便秘など、おなかに何か不調があったときは気軽に相談していただきたいですね。また、消化器疾患を専門とするクリニックとして大堀晃裕理事長の専門分野である肛門外科をはじめ、胃・大腸の内視鏡検査にも力を入れ、細部まで鮮明に観察できる内視鏡を導入して小さな病変も見逃さないように注意しております。もし入院での手術が必要ながんなどが見つかった場合は、本院である「井の頭通りこう門科胃腸科」や連携先のNTT東日本関東病院に紹介しています。
女性の医師の診療日も設定されているそうですね。

痔などの肛門疾患においてはデリケートな部分を診察しますので、女性の患者さんは同じ女性のほうが相談しやすいかと思い、女性医師の診療日を設けております。また、中高校生の女の子の場合は男性医師には相談しにくいことも多いと思いますが、女性の先生に診てもらえることで診察のハードルも下がり、診断、治療もスムーズにいくかと思います。
迅速に対応できる環境を生かし、患者に寄り添っていく
先生がもともと医師を志したきっかけ、IBDを専門にされたきっかけを教えてください。

私は子どもの頃、おなかが弱くてよく近くの医院にかかっていたんです。田舎でしたから、医師は地域の名士で憧れる部分も多く、自分も「大きくなったらお医者さんになって病気で困っている方をたくさん助けてあげたい」と子どもの頃から思っていました。数ある専門分野の中でもIBDを専門としたのは、入局した千葉大学の第二内科にIBDを専門にしていた消化器内科があったからです。IBDの患者さんは若い方が多く、自分も年齢が患者さんと近いこともあって患者さん目線で話しているうちに通常の日常生活に支障を来している難病の患者さんたちを助けてあげたいという強い想いからIBDを自分の専門に選びました。学位のテーマはピロリ菌でしたが(笑)、学位取得後にたまたま社会保険中央総合病院の先生からお声がかかり、IBDを診るならやはり東京だと考え、以来17年間同院で外来、入院を含め多数の患者さんを診ることができたのは幸運なことでした。
診療においては、どのようなことを心がけていますか?
大きな病院ではとかく長時間待たされたり、電話しても担当の先生につながらなかったりすることも多いと思います。しかし、当院のようなクリニックであれば、小回りが利きますので困ったときも電話をいただければ私にすぐにつないでもらえ、即座に対応することが可能です。何より患者さんへの診察時間が十分とれるのが大規模病院にはない強みです。患者さんが不安を抱えずに通院できる環境を整え、地域のかかりつけ医として患者さんに寄り添った診療に努めています。
最後に今後の展望、読者へのメッセージをお願いします。

おなかやお尻が何かおかしいなと思ったときは、すぐにお電話ください。IBDという聞きなれない名前に敷居の高さを感じるかもしれませんが、個々の症状やライフスタイルを考慮し、一人ひとりに合った医療をご提供しますので、IBDでお悩みの方はぜひご来院ください。また、地域のかかりつけ医としておなかが痛い、下痢が続く、お尻から血が出ているといったちょっとした症状でもご相談いただければすぐに診察いたします。デリケートな部分を診察しますので、女性の医師をご希望の方は、女性医師が診察する火曜日にいらしていただくとよいでしょう。現在当院では、東京山手メディカルセンター、東京医科大学病院をはじめとした病院と連携していますが、今後は近隣のIBD専門以外の先生方とも連携を図っていきたいと考えています。病診連携、診診連携を強化し、一人ひとりの患者さんにゆとりを持って接し、満足していただける診療を行ってまいります。