野球肩や五十肩など原因はさまざま
肩の痛みの出方と治療法とは
あおと整形外科クリニック
(岐阜市/岐阜駅)
最終更新日:2024/03/08


- 保険診療
高齢者に限らず、デスクワークの多い会社員やスポーツを楽しむ人にも身近な症状である肩の痛み。いつものことだからと痛みを我慢したり、年齢によるものと諦めたりして、クリニックを受診せずにいる人も少なくないだろう。しかし、放置すると肩の動きが悪くなり、日常生活に支障を来してしまうこともあるという。「どんな疾患においても、早期の治療開始が治癒への近道です」と語るのは、「あおと整形外科クリニック」の青戸寿之院長。自身も学生時代に野球で肩を痛め、肩関節について専門的に学んだ経緯を持つ医師だ。肩の痛みといっても原因疾患はさまざま。どのようなメカニズムで痛みが生じるのか、各疾患における治療の進め方も含めて詳しく話を聞いた。
(取材日2021年3月31日)
目次
痛みのもとは肩関節周りの組織の炎症。薬物療法やリハビリテーションで症状の早期改善を図ることが重要に
- Q肩の痛みを伴う病気には、どのようなものが挙げられますか?
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A
▲痛みの原因や改善策について丁寧な説明を心がけている
一般的な病気としては四十肩や五十肩(肩関節周囲炎)が挙げられます。これらは加齢とともに肩関節周りの筋肉や靭帯が劣化し、炎症を起こすことで痛みが生じるケースが多いとされています。初期段階は痛みが強く、日常の生活動作に支障を来すほか、就寝時も痛みを伴うのが特徴です。痛みが徐々に落ち着くこともありますが、放置すると組織同士が固まり、肩の可動域が制限されてしまうこともあります。そうなると元の状態に戻すことは困難になるため、手遅れになる前に治療を受けることが重要です。また、スポーツをしている方だと野球肩や腱板断裂、腱板損傷もよく見受けられます。あとは、関節リウマチや拘縮などによる関節痛もありますね。
- Q野球肩の原因や治療法について教えてください。
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A
▲理学療法士によるリハビリテーション
野球肩の根本的な原因は、投球フォームのバランスの悪さにあります。腕を上げる角度や全身の使い方が適切でないと、肩に負荷が集中し、腕だけで投げるような形になってしまうのです。野球肩はボールを投げようとしてから離すまでの、特に腕をひねるタイミングで痛みが出やすいです。悪化すると手術が必要な場合もありますので、痛みを感じたら早めに診察を受けましょう。治療では鎮痛薬の処方や関節注射も行いますが、メインは理学療法士によるリハビリテーションになります。その目的はフォームの改善や肩関節の柔軟性の向上、筋肉の増強などです。もし症状が改善されれば、治療後も野球を続けることが可能です。
- Q四十肩や五十肩は予防できますか?
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A
▲けがのリハビリや健康維持のため設備を整えている
予防のために自身でできることはあり、まずは姿勢を正すことを心がけましょう。猫背になると前方に移動した肩に大きな負担がかかり、痛みが生じやすくなるためです。あとは、柔軟性が落ちないようにストレッチを習慣にするのが良いですね。具体的には、片方の腕をもう片方の手で掴んで内側に引っ張る動作や、肩甲骨を後ろに寄せたり前に開いたりという動きを繰り返す動作がお勧めです。発症したときは薬剤などで痛みの解消を図り、関節の動きが硬ければリハビリを実施します。四十肩などに限らず、肩に痛みがある場合は、痛みを取ってからリハビリという流れが治療の基本となります。その上で生活習慣指導も行い、予防につなげるのが理想的です。
- Q腱板断裂や、肩関節の拘縮についても伺います。
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A
▲診療を支えるスタッフのチームワークが良いのも同院の特徴
腱板とは、肩関節を安定して動かす上で欠かせない筋肉の複合体のことです。これがさまざまな原因で傷つくと、損傷や部分的な断裂を引き起こす可能性があります。炎症を伴うケースでは明確な痛みを感じる一方で、痛みを感じないケースでは肩を動かしにくい、疲れやすいなど別の症状がきっかけで発見に至ることも珍しくないですね。また拘縮とは、筋肉や腱板といった組織が炎症によって癒着し、関節の動きに制限がかかった状態を指します。肩だけでなくすべての関節に起こり得るもので、重症化した四十肩や五十肩には肩関節の拘縮が見られます。治療では初めにリハビリなどの保存療法を実施し、改善が見込めない場合は病院での手術も選択されます。
- Q痛みの原因が関節以外にある場合のアプローチも教えてください。
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A
▲肩関節について専門的な知識をもつ青戸院長
筋肉を包んでいる筋膜が癒着を起こして痛みが発生している場合、ハイドロリリースと呼ばれる処置を行うことがあります。これは痛みの緩和のために患部にピンポイントで薬剤を注入するものです。その際に当院では癒着を剝がすような工夫をしています。動きが硬い状態でリハビリをしても結果につながりにくいため、理学療法士からのフィードバックがあればハイドロリリースを施し、動きの具合を再評価しながら進めます。当院では処置の際にエコー使い、画面上で組織の様子を把握した上で注射を行うのが特徴です。エコーに映してから注射するまでの時間は数分程度で、打つ場所を視認できる分、精度の高さを追求できるのがメリットだと考えています。