岡本 紀夫 院長の独自取材記事
おかもと眼科
(吹田市/豊津駅)
最終更新日:2023/12/14
豊津駅から徒歩3分のメディカルビル内にある「おかもと眼科」。2010年に開業して以来、一般的な眼科診療から検査・治療、病院への紹介まで対応し、地域とともに歩んできた。院長の岡本紀夫先生は、大学病院をはじめとする豊富な臨床・研究の経験を有し、論文執筆といったアカデミックな実績も多数。その一方で「目は全身を映す鏡」と捉え、患者へのわかりやすい説明を心がけるなど、話の端々から気さくな一面が垣間見える。妻である岡本知子副院長とともに夫婦で臨んで十数年。同院の診療の特徴や目に関する注意点などを、幅広い視点で活動する岡本院長にじっくり聞いてみた。
(取材日2023年12月1日)
網膜疾患を中心に、患者にわかりやすい診療を心がける
まずは院内のこだわりについて教えてください。
ここはビルの3階にあり、カーテンを開ければ梅田の高層ビル群がよく見えるでしょう。遠くを眺めてもらうことで、皆さんの目のコンディションがわかるというのもここを選んだ理由の一つです。眼科というのはそもそも目の具合の悪い方がお越しになりますから、院内環境に関しては安全性に配慮したバリアフリーです。機器のケーブル類は床下を通し、すっきりとした明るい雰囲気を保っています。フラットで引っかかりがないので思わぬ転倒なども防げますし、車いすや電動カートの方もスムーズに移動していただけます。また清掃もしやすいため、開業から10年以上たった今も床はワックスでピカピカです。
先生は網膜疾患がご専門とお聞きしました。
はい。大学や病院に勤務していた頃から網膜疾患の診断や病態説明、研究発表などを30年ほど続けており、特に網膜の断層画像を撮影する光干渉断層計(OCT)に関しては初期型の時代からずっと携わってきました。近年になってOCTAと呼ばれる新型の機械を診察室に導入し、造影剤注射を用いない非侵襲による眼底検査が可能となりました。また、これまで10分ほどかかっていた緑内障の検査も2〜3分と大幅に時間短縮できます。こうした検査をスタッフに任せる先生が多いのですが、検査というのは目的ありきで、自分なりに狙ったポイントを調べることが重要です。自分でやれば思ったとおりの画像が撮れますし、気になる項目があれば追加撮影も自由自在ですからね。
診察では、どのようなことを心がけていますか?
やはり一番は丁寧な説明です。口でお伝えするだけではなかなか理解していただけませんから、なるべくビジュアルで示してあげることですね。例えば白内障の場合、段階ごとの症例画像と患者さんの画像をモニター画面上で比較すれば、ご自身がどのレベルにあるかが一目瞭然です。また、今はペーパーレス社会とはいえ、ご年配の方にはまだまだアナログのツールが役に立ちます。症状や点眼方法などの説明ではイラスト入りの小冊子やリーフレットを用意し、大切な箇所にはマーカーを引いてお渡ししています。逆に子どもの場合、印刷物はなかなか読んでもらえません。私は学校医もやっていますが、QRコード入りのカードを渡して自分で動画にアクセスできるようにすると興味を抱いてくれます。このように、世代ごとに違うメディアを選択するのも一つのコツといえるでしょう。
子どもから高齢者まで「目は全身を映す鏡」
眼科医をめざしたきっかけを教えてください。
祖父が大阪市内に開業した眼科医院を父が継承した経緯もあり、長男の私が眼科医の道をめざしたのは自然な流れでした。近畿大学医学部を卒業後は大阪大学医学部の眼科学教室に入局し、大阪逓信病院(現・NTT西日本大阪病院)や兵庫医科大学などで臨床や研究に励みました。また、糖尿病網膜症など内科的疾患が関わる目の治療、白内障などの手術にも携わり、開業後も近畿大学の非常勤講師として後輩の指導にあたっていました。昔から「目は全身を映す鏡」といわれるとおり、ここではなるべく幅広い患者さんを受け入れて「全身を診る」というスタンスを大切にしています。検査データの見直しには相応の時間も必要ですから、私自身は手術を行わず、手術が必要な方には連携病院をご紹介するようにしています。
中には難しい症例の患者さんもおられると伺いました。
他院で治療を受けていて、治りが悪いと相談に来る患者さんが一定数おられます。そういった場合、目の疾患かと思ったら実は別の臓器の病気だったということもあるので注意が必要です。例えば、目を原発とする悪性リンパ腫。これは非常に特殊なケースですが目から全身へと発展していく病気です。それとは逆に、心臓付近の血栓が脳梗塞を引き起こし、それが原因で視野の一部が欠けるといった例もあります。体は元気ですから、要するに目だけに症状が出ているわけですね。超高齢社会に伴い、こうした疾患が今後も増えていくことも考えられます。白内障や緑内障になると、時として行動が不自然になり、周囲から認知症と思われてしまうケースもあるようです。目と全身は互いに相関しており、さまざまな病気や行動とつながっていることを、もっと皆さんに知ってほしいと思いますね。
子どもの視力低下にも警鐘を鳴らしておられますね。
パソコンやスマホの普及に伴い、近視の発症は年々低年齢化しています。私も学校にポスターを貼ったりパンフレットを配ったりして啓発や生活指導に努めていますが、ゲームや動画に夢中になる習慣をなかなかやめさせられません。電車に乗るとみんな下を向いてスマホをいじっているような時代です。大人がそのような状況では、子どもが言うことを聞かないのも無理はないでしょう。しかしその影響で、加齢による老眼と同じように目のピントが合いにくくなる、いわゆる「スマホ老眼」や、「スマホ内斜視」と呼ばれる後天性の内斜視が増えています。高層マンション暮らしや新型感染症の流行で生活がさらに内向化。公園ではボール遊びが禁止など、子どもたちに同情すべき側面も多々ありますが、近視になれば将来、緑内障や加齢黄斑変性になるリスクが高まります。これから先の人生は長いわけですから、しっかりと指導に取り組んでいきたいと思います。
幅広い視野で患者のリスクを減らしていきたい
先生はこれまで多数の論文を執筆していますね。
勤務医時代から続けているため、これまでに書いた論文や共著論文は和文・英文を含めて200編以上を数え、網膜疾患の論文は眼科領域の主要アーカイブ書籍に名を連ねています。論文には研究論文と臨床論文があり、大学と一緒にナノ粒子の点眼薬の研究にも取り組んだこともありますし、臨床に関しては、病診連携をしている病院と協力して報告することも。ここでの診療が大学の研究への貢献につながるわけですね。開業医でそこまでやっている例は珍しいと思いますが、数をこなせば書き慣れていくというのが正直なところです。おかげで角膜疾患や神経内科の知識も身につきましたし、より視野の広い医療を提供できるようになったと自負しています。
日々のご診療がお忙しいと思うのですが、プライベートはどのようにお過ごしですか?
妻も眼科の医師で、副院長として午前中だけ診療しています。年配の患者さんの話し相手になってもらったりと、行き届いた診療ができるのは彼女のおかげですね。プライベートはメカニカルなものが好きで、若い頃はレーサータイプの大型バイクで峠を走っていましたが、今はもっぱらスポーツセダンの運転ですね。バケットシートや軽量ホイール、高性能ブレーキが標準装備で、スパルタンなドライブ感覚が格別です。あと、父のコレクションのおかげでカメラも昔から趣味にしています。車もカメラも私の世代の憧れでしたから、ついつい没頭してしまいますね。
読者へ向けたメッセージをお願いします。
幅広く情報を集めながら、目を通じて全身を診るというのが当院の基本姿勢です。全身疾患がある方はもちろん、目で気になることがあれば不自由を我慢せず、ぜひ早めに受診してください。現代は超高齢社会。寿命は延びても体のパーツは衰えていきますから、思わぬ病気や症状に出合う確率が高まります。網膜の衰えで視野が狭くなったり、景色が色褪せたりする方もおられます。恐らく多くの皆さんが、いろんな症状と付き合っていくことになるでしょう。うまく眼科を受診して、できる限りリスクの少ない快適な生活を送っていただければと願っています。