島田 菜穂子 院長の独自取材記事
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道
(渋谷区/表参道駅)
最終更新日:2024/11/18
国内で毎年1万人以上の女性が命を落としているという乳がん。表参道駅近くにある「ピンクリボンブレストケアクリニック表参道」の島田菜穂子院長は、日本乳癌学会乳腺専門医のほか、国内でのピンクリボン運動の普及に寄与し、乳がんに関する知識の啓発に尽力してきた。同院でも、より多くの女性が不安やストレスなく検査を受けられるように、乳がん検診や婦人科検診を受けやすい環境づくりに取り組み、スタッフや検査室を拡充。一人でも多くの女性が速やかに安心して検査に臨めるよう環境を整えた。「健やかに長く美しく輝くためにも、ぜひ少し勇気を出して検査を受け、健康を守ってほしい」と語る島田院長に取材した。
(取材日2024年9月19日)
乳腺科を軸に婦人科も並行診療、夜間や土日も対応
個室を多く設けた特徴的な空間設計ですね。
デリケートな分野ですので、プライバシー保護には十分配慮しています。スタッフは全員女性とし、告知時の立ち合いなどを除き、基本男性は入室できないルールです。待合室を通らず入り口から直接入れる個室を設け、告知時などご主人と一緒に来られた際や、発熱の疑いがある方にはここで対応しています。乳がん術後の方は、特に人前で服を脱ぐことへの抵抗感が大きいもの。来院されたら個室の更衣室で着替えていただき、院内では検査着で過ごしながら、検査や診察の都度、それぞれの個室に入っていただく流れとしています。初診受付後はカウンセリングルームで看護師がお話を聞きます。医師の前では緊張して言いにくいことなどをお話しいただき、当日行う検査などについて詳しく説明する場です。
診療内容を教えてください。
乳腺科を軸に婦人科も並行して診療しています。乳がん検診と子宮がん検診を同時に受けたいという方も多く、女性の健康を全身的な観点でサポートするには婦人科と乳腺科の連携が不可欠です。例えば、乳がんの治療薬により子宮体がんのリスクが高まることがあります。一方、更年期障害に対するホルモン補充療法で、乳がんのリスクが高まることもあるのです。乳腺科と婦人科で情報共有を行いながらの健康サポートはあらゆる面で重要です。また近年注目されている「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」は乳がん、卵巣がんのリスクが高く、通常より若い年齢で発症しやすいとされます。婦人科と乳腺科の連携でこうしたハイリスクの方にもきめ細かい対応が可能です。
夜間や土日も診療されているのですね。
火曜・水曜は20時まで、月曜・金曜は19時まで、土曜と日曜も診療しています。医師増員により、患者さんが多く来院される土曜日は二診制としており、多くの方に受診いただけるように工夫しています。さらに、乳腺科と婦人科の二診の枠も設けており、乳がん検診と子宮がん検診を同時に受けていただくことも可能です。針生検やステレオガイドマンモトーム生検など高度な精密検査に対応しており、遅い時間帯や土日を希望される方のニーズにも応えています。
遅い時間帯や土日の受診ニーズが高いのでしょうか。
乳がんや子宮がんは、比較的若い世代が多く罹患する稀有ながんです。仕事や家事、育児で忙しい方が多く、退勤後や休日、あるいはパートナーの在宅時に受診したいという要望も少なくありません。セカンドオピニオンを求めて、泊まりで来院される地方在住の方もいらっしゃいます。できる限りニーズに応えるべく、診療枠を広げるとともに、術後など状態が安定している方に対してはオンラインでも対応しています。
新鋭機器と検査技師の技術で痛みの少ない検査をめざす
3Dマンモグラフィを導入されているそうですね。
日本を含めアジア人に多い「高濃度乳房」は、乳腺が発達しているため、通常のマンモグラフィでは腫瘍が映りにくいという弱点がありました。その点3Dマンモグラフィは多断面で撮影することで乳腺としこりの重なりの分離が図れ、鮮明な画像を捉えられます。隠れた腫瘍や石灰化を映し出しやすいため、異常がないのに要精密検査となることを防ぎ、異常と正常を適切に診断するのに役立ちます。しかも、通常のマンモグラフィとほとんど変わらない被ばく量で撮影時の痛みを軽減できるデザインなど工夫も多く、快適に乳がん検診を受けていただけると思います。以前からマンモグラフィを使いながら組織を採取する生検システムを導入しており、ごく早期のがんの確定診断の際に活用しています。
検査を受けるタイミングに迷ってしまいます。
一般的には40代からの女性に検査が推奨されていますが、乳がん遺伝子を持つ方はさらに若年でも発症することがわかっています。アメリカでは、家族に罹患者がいる場合、その発症年齢のマイナス10歳からの検査を指導されます。個々に即した適齢期があるので、まずはご自身のリスクを知るためにも、20代でも一度検査を受けてください。また、高齢になると「もう乳がんにはならないだろう」と検診を受けず、がんが進行していることも少なくありません。年齢が高くなればなるほど、治療が体の負担になりご家族の負担になります。少女の頃から年を重ねるまで、女性は生涯にわたり自分を慈しみ乳房に気を配ること「ブレスト・アウェアネス」が大切だということを知っていただきたいです。
スタッフさんについても教えてください。
乳腺診療では、医師だけでなく看護師や検査を行う技師にも専門性が必要です。当院の診療放射線技師、臨床検査技師は皆、マンモグラフィや超音波検査だけでなく乳がん診療全般について専門的に学び、知識と技術を兼ね備えていますので、より深みのある検査を実践可能です。各自が自己研鑽を重ねるとともに、定期的に院内勉強会を開いて検討が必要な症例についてフィードバックの機会も持っているほか、全スタッフによるミーティングも毎月開催しています。また、受付担当も含めたすべてのスタッフが、ピンクリボンアドバイザーの資格を取得し接遇向上に努めています。電話などで検査や病気についてお問い合わせいただくことも多いため、各自が高いレベルで対応できることをめざしています。
日々を楽しむために必要なことを知り、行動してほしい
診療方針をお聞かせください。
「患者さんの疑問や不安は解決できたか」といつも考えています。病気の有無だけではなく、症状がなぜ起きているのかを検査画像をお見せしながらわかりやすく説明し、すっきりした気分で帰っていただくことを心がけています。検査や診察に対して嫌な思いや疑問を残さず、異常がなかった方にはまた検診を続けていただき、異常があった方には前向きに治療に取り組んでいただけるようにと考えています。前向きに治療へ進めるように、病状や希望、地理的な条件にマッチする医療機関の選択肢をご提示できるよう、連携先を増やすことにも努めています。
乳がん診療やピンクリボン運動に関わることになった経緯は?
中学生の時に父が急逝した際、昼夜を問わず治療に全力を尽くし私たち家族を支えてくださった先生方に感動して「人の役に立つ仕事」と考え医師を志しました。放射線科医師になり、米国留学時に、アメリカでは乳腺のチーム医療において最初の重要な役割を担うのは放射線科医師であると知り、日本で実践したいと心に誓ったのです。アメリカでの乳がんに対する女性の関心と知識の高さには愕然としました。当時の日本では一般の方の関心は低く、乳がんの知識を伝える啓発活動も活発ではありませんでした。そこで、日本の乳がん検診にマンモグラフィが導入された2000年に、同志と乳房健康研究会というNPO法人を立ち上げ、ピンクリボン運動の普及活動を開始しました。2013年からは乳がんに関する情報提供・啓発の一環としてピンクリボンアドバイザー認定制度もスタートし、今ではピンクリボンアドバイザーは全国で約1万7000人に上っています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
乳がんは国内で最も罹患者が多いにもかかわらず、乳腺科の医師はいまだ限定的。特に、女性医師は限られているのが現状です。ライフステージに合わせて多様なフェーズで働くことを求められがちな女性ですが、スキルをキープしながら活躍を続けられるよう、当院が受け皿になれればと考えています。国内でのピンクリボン運動も25年目を迎え、世の中にも広く浸透しました。反面、受診率はいまだ3〜4割にとどまっています。キャリアに、趣味にと毎日を楽しく過ごすためにはヘルスリテラシーが欠かせません。今の自分にとって必要なものが何なのかを改めて考え、知り、学んで行動してください。まずは一歩を踏み出して良いサイクルにつなげましょう。
自由診療費用の目安
自由診療とは乳がん検診/4400円~、子宮がん検診/1万2100円~