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根本 貴祥 院長の独自取材記事

くれないクリニック

(大阪市天王寺区/天王寺駅)

最終更新日:2022/08/01

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根本貴祥(たかよし)院長が2017年に開業した「くれないクリニック」は、在宅医療・訪問診療のクリニック。JR大阪環状線天王寺駅近くに事務所を構え、市内はもちろん東大阪、堺市まで、依頼に応じて自転車や軽自動車でフットワーク軽く駆けつける。術後や加齢に伴う在宅診療に加え、認知症の診療に力を入れているのが同クリニックの特徴。患者や家族が穏やかに生活できるよう、周辺症状への対応を中心とした治療を行うとともに、在宅介護を支える連携体制の立ち上げにも関わる。大阪警察病院で循環器内科の医師として長年勤務した院長だが、「患者さんの生活の場を訪れて、初めてわかることも多々ありました」と語る。訪問診療を始めた経緯や在宅での認知症介護の現状について、詳しく聞いた。

(取材日2018年3月29日)

高齢化社会でニーズが高まる訪問診療

訪問診療専門のクリニックにしたのはなぜですか。

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青森県にいた知人の依頼で、病院での地域医療を経験しました。青森県は高齢化がかなり進み、体が動かせず受診がままならない患者さんや、老々介護のご家庭が多く、医療側から出向かざるを得ません。大阪警察病院とはまったく異なる環境で、衝撃を受けました。同時に、このような状況は近い将来、大阪などの都市部でも起こると実感したのです。また、以前からご家族に認知症の方がいる知人に相談を受けており、認知症について勉強していました。医療側では、疾患に治療順位をつけるとすると、認知症に比べて心疾患や脳疾患などの身体疾患が優先されることが多いのですが、ご本人やご家族からすれば認知症になり、困ることが少なからずあります。医療側と患者さんの側にニーズのずれがあるのですね。そこで、青森からこちらに戻ってから、お世話になっている方も多く地の利のある天王寺区で、認知症と内科に特化した訪問診療型クリニックを立ち上げました。

「くれない」という名称には、どのような思いが込められていますか。

ひらがなで書けて、響きがやわらかく、ほっとできるような名称を探していたところ、「くれない」という言葉に出会いました。年を重ねても記憶力を鮮やかに保ち、人生を鮮明なものにしてほしい、という願いを重ねています。また、「夜道に日は暮れない」ということわざがありますよね。夜になってしまえば、暗くなるからと慌てて帰る必要はないという引き留めの言葉で、物事にゆっくり取り組もうというときにも使われます。認知症の患者さんやご家族にも、焦ったり慌てたりせず落ち着いて治療や生活に取り組んでほしいという思いから、「暮れない」を「くれない」とかけて、クリニック名にしました。クリニックのロゴマークは、デザインを考えてくださった方が「院長はハリネズミに似ている」と、作成してくだったものです。とても気に入っていますよ。

どのような方から診療の依頼がありますか。

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認知症は、ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員からご紹介をいただくことが多いですね。よくあるパターンは、現在介護を受けている方やそのご家族が、認知症や何らかの疾患を患っているようだが、医療的な支援を受けていないので一度診てほしい、というものです。また、知人や警察病院時代につながりのあった先生方からのご紹介です。認知症のほか、がんの末期や心不全、在宅酸素療法での治療中など、身体的な疾患で在宅治療をしている患者さんも多数診ています。保険診療で対応していますので、基本的には隔週で月に2回、訪問しています。地域は自転車で行ける近場から、軽自動車で堺市、東大阪まで出向くこともありますよ。

患者の家族、関連職種とのつながりを結ぶ

在宅で行う認知症の治療について教えてください。

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できることとできないことをはっきりさせながら、治療を進めます。認知症の中核症状、つまり記憶や判断力などの障害は、服薬で進行の速度を緩やかにするためのアプローチになります。しかし、患者さんやご家族の日常生活を大きく左右するのは、実は周辺症状なんですね。介護拒否や徘徊、暴力、幻覚、うつ状態といった周辺症状は、細かなさじ加減による適切な投薬で、回復の可能性を高めることが期待できます。住み慣れた自宅で介護や治療を続けるためには、患者さんだけでなくご家族や介護関係職、看護・医療関係者が、それぞれ無理のない形で関与し続ける必要があります。そこで私は、投薬や環境整備による周辺症状の改善を図ることに力を入れています。

看護師など他の職種とは、どのように連携をとるのでしょうか。

近いうちに事務所にスタッフが勤務する予定ですが、これまで当クリニックのスタッフは私だけでした。診療を始める際には、患者さんがお住まいの地域の地域包括支援センターや訪問看護師、ケアマネジャーの方などと連絡を取ります。最初のうちは、他の職種とタイミングを合わせて訪問し、ご家族と情報をすり合わせながら診療方針を定めていきますが、診療が軌道に乗れば、インターネットを介した電子カルテを使って常時診療内容や介護の様子を共有しています。在宅介護を継続するためには、医療、看護、介護、行政といったさまざまな立場との関わりが欠かせませんし、それぞれの職種ならではの得意分野があります。医師という立場だからこそ、複数の職種とのつながりをつくり、うまく軌道に乗せることも、大事な仕事になりますね。

ご開業から1年がたちましたが、手応えはいかがですか。

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周囲の方からは、「大変ですね」と言われることが多いのですが、私自身は、楽しさややりがいを感じています。患者さんが日々生活している地域や自宅に伺うことで、初めて見えてくる病気の原因があるのですね。それを知れば、医師としての関わり方も、自然と変わってきます。また、非常に厳しい生活環境にある方であっても、近隣の方を思いやったり助け合ったり、それをケアマネジャーさんが一生懸命サポートしていたり。考えさせられることも多いですよ。認知症の治療に関していえば、周辺症状は正しい治療によって大幅な改善が期待できますので、ご家族や関係者の方に喜んでもらえればうれしいですし、もっと多くの方に知ってほしいですね。

認知症の周辺症状の治療で生活が大きく変わることも

今日の認知症診療では、どのようなことが課題であるとお考えでしょうか。

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一言でいえば、認知症患者さんが身近にいる方といない方の「格差」が大きいことですね。認知症の方が身近にいれば、その大変さを痛感されています。ただ、「恥ずかしい」ととらえて隠してしまう場合があり、患者さんもご家族も必要な治療やサポートを受けていないことが多い。一方で、知らない方には認知症の実情が伝わっておらず、文字どおり「他人事」のままです。しかし、予防の観点から言えば、若い頃から認知症も意識した生活習慣を続けることも大事です。個人的には、血糖値の管理や睡眠管理が重要だと感じています。認知症を抱え込まず、適切な治療やサポートを受けてもらうため、また認知症のつらさや大変さを知り、若い頃から予防に努めてもらうためにも、認知症に対する認識の「格差」を埋めていかなければならないと思っています。

医師をめざした理由をお聞かせください。

私は宮城県仙台市の出身です。親族に開業医がいまして、幼い頃から働く姿を見ていました。「医師って、こんなに感謝される仕事なんだなあ」という印象をもち、自然と医師をめざすようになったのだと思います。その後、長野県の大学に進学し、勤務先は大阪、また先ほどお話ししたように青森県での勤務も経験しました。現在の事務所も、以前から頻繁に通っている飲食店の方とのご縁があって、お借りしています。さまざまな出会いや経験が、今につながっていますね。

最後に、ご家族や支援スタッフへのアドバイスをお願いいたします。

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認知症の中核症状を治すことは難しいのですが、周辺症状であればかなり改善が期待できます。そして、日常生活での困り事の多くは、周辺症状に関連しているのですね。これだけ高齢化が進んでいますので、認知症で悩んでいるご家庭は、当事者になるまで気がつかないだけで、実は非常に増えています。家族だけ、現在の体制だけで何とかしようと抱え込まず、ぜひケアマネジャーさんや地域包括支援センター、医療機関に相談して、必要な治療や支援を受けていただければと思います。当クリニックへご相談いただければ、これらの職種との連携もお手伝いできます。認知症を恥ずかしいと思わずに、どうか早めに動いてほしいですね。

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