高木 優樹 院長の独自取材記事
糀谷こどもクリニック
(大田区/糀谷駅)
最終更新日:2024/11/20
糀谷駅南口からすぐの場所にある「糀谷こどもクリニック」は、大学病院レベルの診療を身近に提供することをコンセプトに開業した小児科クリニックだ。「人を相手とする仕事がしたい」と医師を志した高木優樹院長の専門は内分泌代謝科領域で、大学病院や基幹病院で診療に携わってきた。日本小児科学会小児科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医などの資格を持ち、低身長や肥満、小児糖尿病など慢性的な病気や成長に伴う悩みに直面する子どもと家族にも真摯に向き合っている。また、出産前からのアプローチで、地域の子育て世帯を支えることもめざす。「対話を大切に、子どもさんとご家族に寄り添うことを重視しています」と優しい笑顔で語る高木院長に、クリニックの特徴や成長ホルモンの不足に起因する低身長の検査などの詳しい話を聞いた。
(取材日2024年9月6日)
かかりつけ診療と低身長などの専門診療を並行して展開
「地域のかかりつけ」「子どもの専門的な疾患への対応」という2つの役割をお持ちだそうですね。
「地域の方が専門的な疾患を含めて気軽に相談できるクリニックをつくりたい」というコンセプトのもと、当クリニックは2017年に開業しました。当初めざしていた、ワクチン接種や定期健診、風邪などの症状に対応する一般的な小児科外来と、低身長や糖尿病、発達のご相談など専門的な疾患に対応する外来の2つの柱が、現在では地域の皆さんに浸透してきているように感じています。例えば低身長に関しては、成長ホルモンで治療可能なものかどうかを判断するために、大学病院などに入院して「成長ホルモン分泌負荷試験」という検査を行うのが通常です。しかし当院では、その低身長の検査を外来で行うことが可能で、患者さんとそのご家族の負担を軽くすることができます。低身長の検査、診断、治療までを一貫して一つのクリニックでできることが当院の強みのひとつです。
近隣の方だけではなく、都内全域、神奈川、千葉、埼玉などから足を運ぶ方もおられるとか。
低身長を専門に診てくれる小児科クリニックは少なく、仮に近くの小児科を受診しても多くは総合病院や大学病院に紹介されて診察や検査を受けることになります。やはり大学病院の敷居は高く、かなり程度の強い低身長の方でなければ紹介してもらえないということもあり、その結果、本来であれば治療できたはずの低身長の患者さんが見逃され、治療ができずにいる可能性があります。そういった患者さんやご家族の不安もあってか、都内全域、神奈川、千葉、埼玉などから「一度話を聞きたい」と訪れる患者さんがいらっしゃいます。一方で、近隣の学校や園などで講演活動も行っており、そうしたつながりから受診される地域の方も増えています。
出産前のパパママへのアプローチも始められたそうですね。
出産直後は昼夜問わず赤ちゃん中心の生活を強いられる中、生後2ヵ月からはワクチン接種のスケジュールも立てなければなりません。ただでさえ負担が大きい時期なのに、改めて予防接種の詳細や近くの小児科を調べることは大変なことです。当院でも、診療時の情報発信に取り組んでいますが、「生まれる前に知っておきたかった」という声を受けることが多いことを受けて、妊娠中の方やパートナーらご家族を対象に、出産前の段階からご利用いただける「プレママ」を対象とした外来を開始しました。個々に時間をとって、看護師や医師が近年複雑化している予防接種の疑問や産後の不安などにお応えしています。同時に院内ツアーも行い、赤ちゃん誕生後の受診もイメージしやすくなるという声をいただいています。産後のケアを一緒に手がけられる予定のお母さまと来院される方もいらっしゃいます。
ワクチン接種やアレルギー検査も負担の軽い方法で提供
ワクチン接種の相談には従来から注力されていますね。
ワクチンの種類はかなり増え、同時接種が不安な方、スケジュールをどうすべきか悩む方もいらっしゃいます。不安を払拭できるよう説明を行い、スケジュールなどを相談しながら決めています。特にこの数年で「ワクチン接種」自体に皆さんの関心が向くようになり、副反応への不安感、不信感を持つ方も顕在化したように感じます。私たちが懸念するのは、うその情報、間違った情報に振り回され、お子さんが本来接種すべきワクチンを受けられなくなってしまうこと。噂レベルの情報を盲信するのではなく、ワクチンについて不安なこと、聞きたいことはぜひ、私たちに一度相談してほしいと思います。それがお子さんの健康と命を守ることにつながるのです。今秋からは、注射が苦手なお子さんたちのために、点鼻タイプのインフルエンザワクチンも導入しています。また、留学や海外赴任などによる海外渡航前に必要となるトラベルワクチンへの対応も今後予定しています。
内分泌疾患について、もう少し詳しく伺えますか。
低身長や肥満、小児糖尿病、甲状腺の疾患、思春期が早すぎたり遅すぎたりするケースなど、さまざまな病気や症状を扱うのが内分泌代謝の分野です。いくつかクリニックを回ったけれどなかなか診断がつかなかった方が実は内分泌分野の病気であったというケースも存在します。成長ホルモンの不足による低身長だと診断できれば成長ホルモンの補充療法による治療が行えます。ただ、身長が伸びる時期にも限りがありますので、できるだけ早いうちに治療を開始することが望まれます。また、子どもの肥満は、糖尿病や脂肪肝を合併している病的肥満の場合もあり、全身管理が必要です。そのほか、福島第一原発事故以来注目されている甲状腺の病気も内分泌の領域です。
ほかにどのような検査を行っていますか?
指先から少量の血液で花粉・食物・動物アレルギーの有無を調べることができる機器も導入しました。アレルギー検査を行う場合、通常は肘から採血を行う必要がありますが、お子さんは注射が苦手ですから、指先からのわずかな血液採取という非常に負担の少ない方法で済むというのは、お子さん本人だけではなく、親御さんの負担も軽減できるので、非常に便利だと感じています。検査結果によっては舌下免疫療法などに進むこともあるため、お子さんのアレルギーが気になる方も気軽に相談できる環境になったと感じています。
親と子の不安に寄り添い、主体性を大切に治療を進める
診察で心がけている点は何でしょうか?
丁寧に説明することです。検査が必要な理由や、治療の意義、薬の働きなどは、保護者の方もしっかりと理解する必要があります。たとえ軽い風邪であっても、親御さんはとても心配されていることが多いです。どんな原因が考えられ、どういう対応をすべきかなど、納得できる説明をすることが、親御さんたちの安心につながるでしょう。不安を抱えて困っている親御さんのニーズをすくい上げるのも、地域のクリニックの大切な役割だと考えています。スタッフも同様に心がけてくれており、体調が悪いお子さんが病院という非日常の場になじまなくて泣いてしまうようなケースでも、親御さんと協力しながら辛抱強く向き合い、病院嫌いやトラウマにならないようにと心がけています。白衣が怖いお子さんもいるため、私は白衣を着ずに診察をしています。
今後の展望を教えてください。
専門性が高い医療を身近なクリニックで、という姿勢は変わりません。年齢に合わせて本人の理解も促しながら、主体性を大切にした治療を今後も提供していきたいと考えています。加えて、出産前から安心の子育てを支えるプレママの外来やトラベルワクチン、痛みの少ないインフルエンザワクチンなど、ニーズに応える医療には今後も取り組み続けていきたいですね。
読者に向けてひと言メッセージをお願いします。
ロゴに使用されているピンクとグリーンで入り口を分け、感染症リスクのある子とない子のエリアを完全に分離しました。また、予約システムやウェブ問診の導入により、院内での滞在時間をできる限り短縮しており、感染症の流行期にも安心して来院いただける体制を整えています。私のほかにも皮膚科とアレルギー、そして発達などの専門知識を持った医師の診療日も設けており、また、緊急性が高いと判断した場合は、早急に近隣の東邦大学医療センター大森病院や昭和大学病院などに連絡をし、高次医療を受けられるように対応しています。親御さんの小さな気がかりに、大きな病気が隠れていることもあります。どんな小さなことでも、お悩みがあれば遠慮なくご相談ください。