年齢・性別・障害も個性
対等な立場でオーダーメイドな治療を
ゆうかデンタルクリニック
(北九州市八幡東区/枝光駅)
最終更新日:2023/08/02
- 保険診療
「ノーマライゼーション」という言葉が広まって久しい。しかしそれを実現できる医療機関は、クリニックになるとなかなか難しいのが現状だ。「ゆうかデンタルクリニック」の佐藤夕香院長は九州大学病院に勤めていた頃、医科と連携して障害や基礎疾患のある患者の治療にも携わってきた。「医学的に注意すべき点には当然細心の注意を払いますし、患者さんともしっかり確認し合います。血糖値などの血液検査データ、処方されているお薬、どんな障害がおありなのか。それらはその方の“個性”であり、特別視するものではありません。誰もが心地良く通院し、歯と健康に興味を持っていただけるよう、人として心を尽くしていくだけです」と温かい笑顔で語る佐藤院長に、歯周病菌と全身疾患の関連性、また有病者や障害者の治療を行う際の心がけなどを聞いた。
(取材日2023年7月12日)
目次
疾患や障害の有無もすべて患者一人ひとりの個性。個々人の意思を尊重しながら治療をともに考えていく
- Q歯周病菌は全身の健康に影響を与えるそうですね。
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A
歯周病は糖尿病などの生活習慣病のほか、命に直接関わる脳卒中、また認知症などのリスクになり得るもの。研究結果も多数出ており、今やそれは歯科だけではなく医療全体にとってスタンダードな考え方になっているため、私もそういう認識で日々の治療を行っています。お子さんの場合は歯周病ではなく歯肉炎になりますが、基本的に歯周病や虫歯は誰にでも起こり得るもの。健康な方であっても、高齢になり何らかの疾患を抱えた方であっても、障害がある方であってもそれは変わりません。歯科が診るのは口腔疾患に限定されますが、体はすべてつながっています。誰であれ、お口の健康を守ることが全身の健康につながるのは間違いありません。
- Q貴院で行うプラークコントロールについて教えてください。
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A
もっとも大切なのは、お一人お一人の生活習慣です。規則正しい生活をする、喫煙をしないなど、診療科を問わず重要なことは、患者さん自身がご自分を大切にすること。その上で歯科で行うのがブラッシング指導、つまりプラークコントロールの具体的なアドバイスです。歯磨きをしたことと、プラーク(歯垢)がきちんと取れることはイコールではありません。だからこそ歯科で定期的にメンテンナンスを受け、「よく磨けるようになってますよ」「こうしたらもっと磨きやすいのでは?」と、無理強いをせず、患者さんの性格や個性に応じた提案をし、ブラッシングへのモチベーションを上げるサポートをしていくことが大事なのだと考えています。
- Q有病者や障害のある方と接する際の心がけを教えてください。
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A
お薬手帳や他科で受けた血液検査、骨密度検査の結果などをご持参いただき、治療に生かしています。中にはコミュニケーションが苦手な方もおられますから、これらは患者さんの背景を知るためにとても有用と考えております。また持病がある方、障害がある方、比較的健康である方、皆同等に接することを心がけています。「血圧が落ち着いてお薬減ったんですね」「血糖値はどうですか?」など各患者さんに応じた対話をしていく中で、私たちの品性や、必要に応じて医科の先生と連携を取っていることを患者さんは自然と見抜いておられるのだと感じていますし、そういう些細なことの積み重ねが信頼関係を築くことにつながるのだと思います。
- Q先生が自然とそうできるのはなぜでしょうか?
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A
私の人間性や価値観も大きなベースだと考えますが、医療人としてのベースになっているのは以前勤めていた九州大学病院での経験ではないかと思います。全身管理特殊歯科総合治療部にて医科の先生方と連携しながら、全身管理が必要な基礎疾患や障害がある患者さんの治療にも携わりました。この経験が今の診療に生きていますし、日進月歩する歯科治療を学ぶセミナーにおいても非常に役立っています。中にはこれまでの経験がなければとてもついていけない高度な内容のセミナーもあります。過去から現在に至る経験の積み重ねが治療中の受け答えを通じ、自然と患者さんは感じ取ってくださり、スムーズな対話、治療へとつながっていると感じています。
- Q先生は病気や障害を、必要以上に特別視してはいないのですね。
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A
健常者、障害者、有病者というラベリングよりも私が大切にしているのは、その方のキャラクター、つまり障害なども含めたお一人お一人の「個性」です。年を重ねてもどんどん口腔疾患の知識を求める方もおられ、治療のペースも患者さんそれぞれ。「どうすればこの方に、ご自分の歯と全身の健康に興味を持っていただけるだろう?」と常に考え、寄り添う姿勢を大切にしています。そうすることで障害のある方でも来院回数を重ねるごとに心を開いてくださると思います。誰しもが大切な存在。「自分なんてどうでもいい、健康じゃなくてもいい」なんて仰らずに、人と人として、ともに良い方向へと向かっていきたい。そう常々心にとどめています。