患者が主体となって管理していく
透析治療を防ぐためのチーム医療
新北九州腎臓クリニック
(北九州市小倉南区/下曽根駅)
最終更新日:2024/12/13


- 保険診療
糖尿病などを背景に体内の余分な水分や老廃物を排出する目的の透析治療を受ける患者が増加している。「新北九州腎臓クリニック」は、この状況を早い段階で予測し、透析治療および糖尿病・高血圧症の診断から治療までを一貫して行うことができる環境を8年前に構築。病院や系列の「北九州腎臓クリニック」とも連携を図りながら、日本糖尿病学会糖尿病専門医をはじめとする各専門の医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、管理栄養士などのスペシャリストが協力・協働・補完する「チーム医療」に取り組んでいる。院長を務める海津嘉蔵(かいづ・かぞう)先生は未来の透析患者を減らすべく、患者の自己管理力を向上させるためのサポートに力を尽くしてきた。その同院ならではのチーム医療と診療フローとは? 海津院長に詳しく聞いた。
(取材日2024年10月22日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q開院から8年かけて行ってこられた取り組みを教えてください。
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A
当院は、透析治療を受けずに済むための予防に徹した腎臓病治療を行うことを目的に開院しましたので、糖尿病・高血圧症、腎臓病の診断と治療、そして透析治療までを一貫して行える環境を構築しました。そのため、各専門の医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、管理栄養士など、それぞれの分野に長けたスタッフが在籍し、患者さんのために協力・協働し、補完します。また院内だけでなく、小倉記念病院、北九州総合病院、九州労災病院などの病院や、系列の「北九州腎臓クリニック」との密接な協力体制も築いてきました。このような「チーム医療」に取り組んで8年経過し、われわれが目標とするある一定の結果を得ることができました。
- Q腎臓病だけでなく、糖尿病や高血圧症の診断・治療も行う理由は?
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A
糖尿病で高血糖の状態が続くと腎機能が低下し、糖尿病腎症を発症するリスクが高まります。腎不全で人工透析が必要となる前に適切な対策を講じる必要があるため、糖尿病の診療や治療も行えるようにしました。また、高血圧症については、血圧が上がれば腎臓への負担が増え、腎機能の低下にもつながるため、血圧のコントロールが重要になります。このように、腎機能に関わる糖尿病や高血圧症なども一緒に診ることができれば、より早期に手立てを講じることができると考えたからです。当院には糖尿病、腎臓病を専門とする各医師が在籍していますので、双方の治療をチーム医療によって行っていくことが可能です。
- Q独自で行われているチーム医療についても詳しく教えてください。
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A
各専門の医師の診断後、看護師による血圧・体重・体調管理・血糖などの指導、薬剤師の服薬指導、食事管理に関しては管理栄養士が指導します。また、看護師は院内だけでなく、薬局、他の病院、施設、ケアマネジャーなど院外との情報共有や調整を行うための多職種連携、さらに患者やその家族の意思決定支援なども担当。そして、各種検査を担う臨床検査技師、医療機器を操作する臨床工学技士などが協力・協働・補完していくのが特徴です。しかし、あくまでも主治医は患者さん自身。医師は戦略を練り、看護師、薬剤師、管理栄養士が戦術を伝え、それをマスターした患者さん自身が病気を治療していく。これが当院ならではのチーム医療です。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1糖尿病専門医による診療
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日本腎臓学会腎臓病専門医の医師、日本糖尿病学会糖尿病専門医の医師が在籍する同院では、糖尿病腎症をはじめ、糖尿病などの生活習慣病の状態も踏まえた診療を受けられる。同院はまず何よりも生活習慣の改善をめざす方針のため、初診では必ず医師から栄養指導の提案がある。診察の上、浮腫や肺うっ血などがあり入院が必要な場合や、病気の状態によっては系列院や病院に紹介されることも。
- 2糖尿病専門の看護師による指導
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「主治医は患者」という考えのもとで、自己管理力を高めるための指導が行われる。糖尿病患者の場合、看護師から血圧の測り方やインスリン注射の打ち方などを教わる。また、放置すれば壊疽など、足の切断につながりかねない事態が生じる恐れがある合併症「糖尿病足病変」を予防するためのフットケアの指導も実施。そのほか、定期的に開催される「糖尿病教室」に参加すれば、病気や治療に関する知識を深めることができる。
- 3腎臓病専門の看護師による指導
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腎臓病では、病気の基礎知識や治療の進め方などを知るため、医師、管理栄養士とともに看護師からも「腎臓オリエンテーション」を受ける。治療のモチベーション維持の観点から、血圧測定や体重測定などの自己管理に取り組む重要性を説明してくれたり、生活状況に応じたアドバイスをくれたりするのも同院の強み。腎臓病治療も自己管理が鍵となるだけに、手厚いフォローは心強いだろう。また定期開催の「腎臓病教室」に参加も可能。
- 4管理栄養士・薬剤師による指導
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腎機能を評価の上で、一人ひとりに適した1日の摂取カロリーとたんぱく質の量、塩分量に近づけるよう、管理栄養士によるアドバイスや指導が行われる。これまでの食生活を見直し、自分に適した食事の量や内容を把握することが重要だ。また厳格な治療をするためには、薬の種類や量も増えることが多いため、薬剤師から薬や副作用のリスクについて説明を受ける。誤った服用をしないために大切な指導なのでしっかり話を聞こう。
- 5臨床検査技師による指導
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糖尿病・腎臓病は体調管理が必要な病気。合併症のリスクもあるので、体の状態を把握するために定期的に検査を受ける。専門の臨床検査技師により血液検査、微生物検査などの検体検査や、心電図、脳派測定といった生理機能検査が行われる。特にエコー検査は入念に実施。また腎臓病では正確な腎機能の評価のために蓄尿検査も行われる。初診では事前に2Lの尿をためて持ち込むことになっており、タンパク質量などの成分が調べられる。