海津 嘉蔵 院長の独自取材記事
新北九州腎臓クリニック
(北九州市小倉南区/下曽根駅)
最終更新日:2024/12/20

JR日豊本線の下曽根駅より徒歩15分の場所に位置する「新北九州腎臓クリニック」は、「北九州腎臓クリニック」の分院として2016年に開院。海津嘉蔵(かいづ・かぞう)院長は、「多数治療目標達成型厳格治療」という患者の自己管理力向上をめざした外来診療の充実を目的に、透析療法だけでなく、透析にならないためのアプローチにもチーム医療で取り組んでいるのだという。診療は腎臓病、血液透析といった血液浄化療法、高血圧、糖尿病および内科全般と幅広く、各専門の医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、管理栄養士などさまざまなスタッフが在籍。同院が取り組むチーム医療とは? 優しい笑顔が印象的な海津院長に詳しく話を聞いた。
(取材日2021年7月17日)
腎臓病と糖尿病に特化した専門性の高いクリニック
こちらは「北九州腎臓クリニック」の分院として2016年に開院されたそうですね。

もともと「北九州腎臓クリニック」の前身である「阿部クリニック」を2014年に継承しまして、その2年後に医療法人を現名称に変更しました。その分院として「新北九州腎臓クリニック」を2016年に開院し、医療法人海の弘毅会という名のもと2つのクリニックを運営。私がこちらの分院の院長、本院では長男が院長として診療にあたっています。透析治療に加え慢性腎臓病や糖尿病、内科といった診療も行っています。
院長のこれまでについてもお聞かせいただけますか?
私は北九州で生まれ育ちました。その一方で、「将来は外国に行ってみたい」と、海外に想いを馳せる一面も。大学は親の希望もあり、関東の日本大学医学部へ進みました。その後は大学院に進学した後産業医科大学へ勤務し、腎臓疾患について深く学ぶためにアメリカへ2年間留学。帰国後は産業医科大学腎センターで副部長、社会保険横浜中央病院では副院長を務め、2014年に「阿部クリニック(現・北九州腎臓クリニック)」を継承というのが私のこれまでの歩みです。
数多くある中から腎臓という分野を選ばれた理由も教えてください。

日本大学医学部に腎臓の分野でよく知られる教授がおられて、その教授との出会いがきっかけでした。実際に学び始めると実に興味深い分野で、自分も腎臓学を学びたいと思ったのが理由です。予防から最終的な治療まで、透析や移植など、腎臓病は段階に応じた治療法があるという点にとても魅力を感じました。これまでも多くの腎臓病で苦しまれている患者さんを診てきましたし、当クリニックにも日々多くの方がおみえになります。透析治療を受ける方だけでなく、透析治療になる前の患者さんも多くおられます。当院は腎臓病と糖尿病の専門クリニック。腎臓と糖尿病は密接な関係があるため、私は日本透析医学会透析専門医の資格を持っています。また、糖尿病は日本糖尿病学会糖尿病専門医である海津梓奈子先生が、人工透析内科は日本透析医学会透析専門医の三谷博通先生が診療されています。
「チーム医療」で患者をサポートする外来診療に注力
腎臓病と糖尿病の関係性についてもお聞かせいただけますか?

糖尿病で血糖値の高い状態が長期間続くと、毛細血管の塊である腎臓の糸球体が障害を受けて腎臓のろ過機能が低下し、たんぱく尿が出るようになります。この状態を「糖尿病性腎症」といい、これも慢性腎臓病の一つ。つまり、糖尿病の合併症です。急に尿が出なくなるのではなく、段階を経て病気が進行します。そのため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要。現在は、糖尿病性腎症が原因で透析を受けるようになった方が透析患者の中では高い割合を占めています。それだけ、腎臓と糖尿病というのは密接な関わりがあるということを多くの方に知っていただきたいですね。糖尿病の中でも肥満、運動不足、ストレス、喫煙など生活習慣の影響で起こりやすくなるタイプの患者さんが年々増えてきていますので、透析をしなければならなくなる前に改善していくことをめざします。
透析治療だけでなく、透析しないで済むための予防にも力を入れておられるのですね。
ええ、透析予防には慢性腎臓病の早期発見・早期治療とともに、糖尿病・高血圧の治療も重要です。透析療法および糖尿病・高血圧の診断から治療までを一貫して、各専門の医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、管理栄養士など、それぞれの分野に長けたスタッフが協力・協働・補完する「チーム医療」にも取り組んでおり、それが当院の大きな特徴と言えます。特に慢性腎臓病の進行を遅らせることを目的とした外来では、患者さんとそのご家族に腎臓病の治療に対する理解を深めていただくためのオリエンテーションや、「チーム医療」で指導を行うことに力を入れて取り組んでいます。
それこそが、院長が長年取り組まれている「多数治療目標達成型厳格治療」なのですね。

はい。腎臓病治療は一つの病態を良くしただけ、また薬を飲んだだけで改善するものではありません。それぞれの病態に治療目標を定めて、治療目標を達成することが重要なのです。患者さんによって状態の程度が異なりますから、どこに力を入れて改善すべきか見極めた上で厳格に行う治療を「多数治療目標達成型厳格治療」といいます。治療目標は、患者さんご自身が自分の病気の主治医になれるようわれわれが支援、指導する。つまり、患者さんの自己管理力を向上させること。これが最大の目的です。そのために、患者さんの透析に対する不安を取り除き安心していただくことから始めます。次に正しい知識。ご自身の病気について学んでもらいます。腎臓病と向き合える基本的な知識を学んでいただくことが重要。多数治療目標達成型厳格治療を安全に行うことは医師だけではできません。それぞれの分野のスタッフによるチーム医療が不可欠だと考えています。
自身が主治医となり病気に立ち向かうためのサポートを
患者さんのモチベーションを高めるために、心がけておられることも教えてください。

患者さんがやる気になるためには、患者さん自身が良くなったと実感できること。その状態に導くことが患者さんのモチベーションを高める最たる手段ですから、われわれもその点を心がけてサポートを行います。患者さんやご家族に向けた腎臓病教室や糖尿病教室もその一つ。「腎臓病の貧血」「薬について」など、毎回テーマを変えて行っています。すでに透析で来られている患者さんもたくさんおられますから、信頼関係を築くことを最も心がけ、安心して治療に取り組める雰囲気づくりに努めています。当クリニックの患者さんは65歳以上の高齢者がかなり多いですが、その一方で学校での検尿で早期に発見できるケースも多々あるため、中には学生の方もおられます。ですので、患者さんの年齢層は幅広いですね。
では、ここでプライベートについてもお聞かせください。休日はどのように過ごされていますか?
時間がある時は近くのお寺に行って、散歩をしています。静かなお寺を散策すると気持ちも穏やかになりますし、ずいぶんと良いものですよ。時には考え事をしながら歩いたり。ウォーキングは約20~30分、早朝、出勤前にします。好きな歌を3曲くらい口ずさみながら歩くと30分程度続けられますからね(笑)。心身ともにリフレッシュできます。多くの方を診るためにも私自身、健康でなければなりません。歩くことは心にも体にも非常に良い影響をもたらしてくれますからね。これからもこの習慣は続けていきたいなと思います。
最後に院長が思い描く今後のクリニック像についてお聞かせください。

腎臓病治療をチーム医療で取り組むクリニックとして、今後のモデルケースになれる存在でありたいと思います。このように取り組んでいくことで、透析患者さんを減らせたという実績を築ければ、今後の医療にも大きく貢献できると思っていますのでね。人が腎臓病をどこまで改善することができるのか、医師としてそれを確かめたかったというのが、腎臓病治療をチーム医療で行う概念を導入し、実行した一番の理由。そして今、それがようやくかたちになってきています。チーム医療によるサポートを受け、ご自身が主治医となって病気に立ち向かっていただきたい。主体はあくまでも患者さん自身。そのためのサポートに徹します。決して一人ではありません。しっかりとお話を伺いますので、心配せずにいらしてください。私たちチームと一緒に頑張りましょう。