夫婦で支え合う不妊治療
医師も経験者としてアドバイス
井上善レディースクリニック
(福岡市中央区/天神南駅)
最終更新日:2023/02/20


- 自由診療
不妊治療は時間との戦いだという。女性の社会進出とキャリアアップがめざましい一方で、不妊治療だけではなく、不妊の原因ともなる婦人科疾患の治療のタイミングを逃している女性も多い。しかし不妊の原因は女性側だけにあるのでは決してなく、WHOの調査では男性の約半数に原因があるというデータも。「井上善レディースクリニック」の井上善仁院長も、男性として不妊治療を経験している1人だ。同院が大切にしているのは「個々の患者に対して“何ができるか”を追求する」こと。女性ではホルモン値の検査や、男性であれば精液検査などを行いながら、不妊の原因を見つけていく。性に対する社会の意識も変化していく中、夫婦で支え合いながら取り組む不妊治療を勧める井上院長に、治療スタンスや考え方などを聞いた。
(取材日2021年3月1日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q不妊の原因にはどのようなことが考えられますか?
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A
不妊では女性、男性、どちらにも原因があると考えられます。まず女性であれば排卵・卵管・子宮頸管に原因がある場合や、子宮内膜症などが考えられます。一方、男性で最も多いのは、精子を作る能力が低い、精子の運動率が低いといった造精機能障害です。原因の男女比はおおまかにそれぞれ40%ずつ、残り10%程度は双方に原因がある場合となります。不妊症は「1年以上、妊娠を望む男女の正常な性交渉があるものの妊娠しないこと」と定義されていますが、昨今ではいわゆるセックスレスも原因の一つとして無視し難いと考えられます。いずれにせよ、不妊治療ではご主人にも必ず来院していただき、ご夫婦そろっての治療が不可欠です。
- Q不妊治療を受けるために適したタイミングはあるのでしょうか?
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A
不妊治療にかけられる時間は年齢によるところが大きいんです。近年、晩婚化などで女性の結婚年齢は高くなりましたが、37〜38歳の方が不妊治療を1年すると出産は40歳近く。そのため極力妊娠までの治療期間を短くすることが重要です。一方で20代の若い方だと治療の時間に猶予があるようにも思えますが、卵巣予備能検査(AMH)の値が非常に低い方もおられます。ですから、すぐに結婚や妊娠の予定はないけど、いずれ子どもを持ちたいと考えるのであれば、早いうちにAMHだけでも受けていただいたほうが良いと思いますし、生理不順があれば早急に検査や治療を受けてください。先を見越した行動が治療の鍵になるのは間違いありません。
- Qクリニックで行っている不妊治療の特徴を教えてください。
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A
一般的な不妊治療から体外受精までクリニック内で対応しています。また、妊娠するものの流産を繰り返す不育症や反復着床不全の精査も行っています。ただ、同じ症状であっても生活背景はお一人お一人違います。不妊治療では適切なタイミングで来院してもらう必要もありますが、働きながらキャリアアップをめざしていく女性も増え、仕事で通院が難しいというケースもあるため、当院では不妊の原因を探った上で、仕事はどうなのか、時間的余裕はどれくらいあるのかといった点から治療方針を立てていきます。医学的な課題に加え、社会的な状況がどう絡んできているのか、その見極めは治療において非常に重要だと考えます。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1予約時間に来院し、問診票に記入
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初診はインターネットから予約。院内はホテルのようなラグジュアリーな雰囲気で、院長が好きな映画のキャラクターがいろんな場所に置いてあり、ほっとできる空間だ。一般的な婦人科問診票に加え、不妊問診票にも記入。仕事の内容からこれまでの治療経験、妊娠の希望時期、パートナーの不妊治療に対するスタンスなど、治療の手がかりになる情報について細かく答えていく。その後、超音波による内診などを行い、医師の診察に入る。
- 2問診票をもとにじっくりと話をする
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記入した問診票をもとに、今後の治療について話をしながら方向性を決めていく。治療の流れは大まかに、排卵日を予測して行うタイミング療法、次に人工授精、最終的に体外受精となっているが、体外受精は希望しないといった患者の希望もしっかりと聞き出していく。
- 3不妊の原因を明らかにする
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不妊治療で最も大切なのは、不妊の原因を見極めることだ。女性ではホルモン検査や卵管検査、頸管粘液検査などを行う。一方で男性では問診などのほか、精液検査を行う。男性不妊では精子を作る機能に問題があるケースが大半だが、心因性の勃起障害・射精障害なども考えられるため、男性の精液検査は必須だ。治療ステップを上げるためにも、男性側の協力は不可欠。夫婦で協力し合う姿勢が大切だという。
- 4希望を考慮し、治療方針を固めていく
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原因を探る中で子宮内膜症などが見つかれば、腹腔鏡での手術を行うこともあるという。不妊治療は年齢が上がるほど治療期間も短くなるため、年齢との戦いでもある。だからこそいたずらに1つの治療を繰り返すということはなく、どういった治療を何周期目で行うのかなど、治療スパンを決めることも重要だ。また体外受精を望まないなど、患者によって希望もさまざま。状況や希望に応じた治療法を、オーダーメイド的に提案していく。
- 5フォロー体制を整え、継続的な治療を
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短い期間で妊娠に至るパターンは非常にまれなこと。うまくいかないことが続く人も多いのが不妊治療だが、「出口の見えないトンネルのようなものだが、焦らずに治療を受けてほしい」と井上院長。たとえ結果が思わしくなくとも、すぐに医師やスタッフが患者のフォローを行う。時には別室でじっくりと患者の思いを聞くこともあるという。患者の思いに寄り添い、元気づけながら、継続的な受診と治療を行い、妊娠へと導いていく。
自由診療費用の目安
自由診療とは体外受精/30万8000円~、卵巣予備能検査/5500円