服部 高史 院長の独自取材記事
服部クリニック
(大阪市鶴見区/徳庵駅)
最終更新日:2021/11/08
JR東西線・学研都市線、徳庵駅からほど近いクリニックモールの2階にある「服部クリニック」。院長の服部高史先生は勤務医時代、大腸がんをはじめとする悪性腫瘍の外科手術や抗がん剤治療など数多く経験した、消化器外科のエキスパートだ。その医療スキルと知識を生かし、現在は「外科・内科の技術を持つ身近なかかりつけ医」として、消化器領域の治療をはじめ、生活習慣病の診療や痔の外科手術など、幅広い医療を提供し、患者の健康をサポートしている。診療モットーは、形式だけの医療ではなく、患者と真摯に向き合った医療を行うこと。「医師として」ではなく「人として」、真心で接する診療に日々取り組む服部先生に、地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2017年7月19日)
良心に恥じない、誠意ある医療を
医局時代、外科の道に進まれたのはなぜですか?
各診療科が専門化、細分化される傾向にある中で、多臓器にわたる疾患をオールマイティーに診察できる医師をめざすには、外科を学ぶのがいいのではないかと考え、大学卒業後は外科に入局しました。外科というと、けがなどを処置をする科と思われているかもしれませんが、実はがんの治療がメインです。当時の外科は、消化器外科を中心に、乳腺外科や呼吸器外科を包括する科でした。守備範囲が広いだけに研修医の頃は覚えることが多くて大変したが、経験を重ねていくにつれ、手術のみならず、術前・術後を通しての内科的疾患の管理、抗がん剤治療、麻酔、内視鏡や超音波検査といった検査、CT・レントゲンの読影など、幅広く対応できるようになりました。
高い技術が求められる外科手術は、苦労も多かったのではないでしょうか?
手術の技術というのは、経験を積めば積むほどスキルアップしていき、自分が直接患者さんを治している喜びを実感できるので、技術を磨くこと自体は大変だと感じることは少なく、やりがいのある仕事でした。むしろ、手術中に予期せぬことが起きた時に動じない精神力や判断力は、生きた経験からしか学ぶことができないもので、そういった力をつけられたことは僕にとって大きかったと思います。外科手術は人体に大きな負担を加えるので、その結果が術前よりも悪くなってしまっては意味がありません。手術に伴う合併症はある程度の確率で起こってしまうものですが、患者さんに任されて執刀する以上は、術後の合併症に対しても責任を持たなければなりません。責任と誠意をもって治療に取り組む姿勢は、今の診療にもそのまま引き継がれています。
勤務医時代の出来事で、心に残るエピソードはありますか?
当直で勤務していた時、夜中の2時くらいに1人の患者さんが来られました。1年前に乳がんの手術を受けて、その傷が痛むのだと言われ、まだ若手だった当時の僕は、「こんな夜中に来て、1年前の傷が痛いなんて」と内心思いながら、痛み止めを処方しました。それから数日後、病院の廊下でその方に会ったのです。乳がんが再発して抗がん剤治療を受けることになったそうで、「あの時は、ありがとうございました」とお礼を言われました。その感謝の言葉に、僕はショックを受けました。正直なところ、そのときは深夜ということもあり早く診察を終わらせたいという気持ちでした。われわれの仕事は、誠意がなくても、感謝されてしまうこともあります。だからこそ、感謝されることに恥じない仕事をしていこうと、その時に固く決意しました。
外科と内科の技術を持った、地域のかかりつけ医へ
開業に至るまでの経緯をお聞かせください。
医師になってからの10年間は、自分の技術を磨くためのトレーニング期間だったように思います。「早く一人前になりたい」という気持ちで走り続けていましたが、ある程度のスキルが身についてくると、自分の技術向上のためではなく、身近な地域医療でもっと患者さんの生活に入り込んで、自分の持てる力を発揮したいと思うようになりました。開業を意識するようになったのもこの頃です。その後、5年間ほど、100床規模の比較的小さな病院で勤務し、内科・外科の区別なく、トータルに診療を行いました。自分のめざす、患者さんに寄り添う医療のかたちが明確になり、2016年2月に開業しました。
開業の地に選ばれた「徳庵」は、どんな町ですか?
徳庵は人情味あふれる町で、人と人とのつながりが深く、かかりつけの患者さんがご自分の友達や家族に、クリニックのことを紹介してくださることも少なくありません。お年寄りの患者さんも多いのですが、当院は全面バリアフリーに対応しているので、診療室や処置室はもちろん、トイレにも車いすのまま入ることができます。年齢を重ねると、さまざまな病気にかかる可能性が高くなりますが、それを老化や気持ちのせいにして簡単に片づけてしまうのではなく、患者さんの訴えに丁寧に耳を傾け、心通う医療を提供するよう心がけています。
胃腸内科、外科、肛門外科を標榜されていますが、具体的にどのような症状、疾患を診てもらえますか?
風邪などをはじめとする一般的な内科から、胃炎、腸炎、逆流性食道炎、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症などの胃腸疾患、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病、アレルギー疾患の診療を行っています。胃腸は心身症的な影響を受けやすい臓器で、精神的なストレスや自律神経の乱れから胃痛や便秘、下痢が慢性化したりすることがありますが、明らかな原因がわからない不定愁訴に対しても、漢方薬も補助的に取り入れて、症状の改善に努めています。また、外科領域では、外傷、やけど、イボ、うおのめ、巻き爪の治療、痔や皮下腫瘤摘出などの日帰り手術など、日常生活で起こり得る疾患やケガの多くは当院で治療が可能です。もともと外科出身ですので、包丁で指を深く切ってしまった傷、スポーツや転んで傷口がぱっくり開いてしまった場合などの縫合治療は得意としています。
つくられた優しさではなく、真心で患者に接する
内視鏡やエコー検査など、検査項目が充実していますね。
地域の患者さんの健康を守るには、検査による病気の早期発見が大切です。当院では、胃・大腸の内視鏡検査、ピロリ菌感染診断のほか、外科時代に判読力を磨いた超音波検査では、腹部エコーだけでなく、前立腺がん、乳がん、甲状腺、心臓、血管のエコー検査まで幅広く行っており、内科に必要な検査の多くが受けられます。胃の内視鏡検査は、従来の口からカメラを挿入する経口内視鏡だけでなく、嘔吐反射が起こりにくい経鼻内視鏡を選ぶこともでき、希望者には麻酔を使った検査にも対応しています。また、大腸内視鏡検査でも苦痛に配慮していますので、検便で陽性反応が出た人や家系に大腸がんを患った人がいる場合は、ぜひ検査を受けに来てほしいと思います。
服部先生の診療モットーをお聞かせください。
僕が診療で心がけているのは、「何となくの治療をしない」ことです。この症状ならこの疾患だろうと頭から決めつけて、形式的に薬を出すのではなく、その患者さんにとって本当に必要かどうかをよく考えて、処方するようにしています。例えば、咳と痰で患者さんが来られた場合、必要があればその場で痰を染色して顕微鏡で確認します。痰の中に見える細菌のタイプによって有効と思われる抗菌薬が変わりますし、逆に抗菌薬が必要ないだろうということも推定できます。痰の中にアレルギーに関係する細胞を認めれば抗アレルギー剤が効く可能性もあります。これはほんの一例ですが、「こういう病態だからこの治療を選択する」という明確な姿勢を大切にしています。隠れた疾患を見逃さないためにも、患者さん一人ひとりに向き合う診療を心がけております。
最後に、地域医療にかける思いをお聞かせください。
外科の医師としておなかを開けるような手術を行っていた頃、開業したらせっかく身につけた手術から離れることになり、それは寂しいことだと思っていました。しかし、医師になって10年を過ぎた頃には、実際はそうではないことに気づきました。手術でがんを摘出して患者さんを助けるのも、内視鏡検査で早期発見して患者さんをがんから守るのも、どちらも人の命を救うという使命は同じです。距離が近いからこそ、患者さんの喜びや感謝の気持ちがダイレクトに伝わり、感動することも多いですよ。昔も今も、患者さんに向き合う姿勢は変わっていませんが、「プロとして親切に接する」から「人として真心で接する」というふうに意識が変わってきました。これからも、地域に寄り添う医療で、患者さんの健康をサポートしていきたいと思います。