所 隆昌 院長、平澤 奈都子 先生の独自取材記事
藤クリニック
(一宮市/新木曽川駅)
最終更新日:2025/09/05
白が基調の院内の所々にインテリアの藤色が映える「藤クリニック」。外科医として数々の病院で研鑽を積んだ所隆昌(たかまさ)院長が、2016年に開業した。「患者のためになる医療」を第一に、専門だけにこだわらずリハビリテーションや訪問診療も開始。肛門疾患の治療も積極的に対応し、特に痔の治療では、他院の紹介を受けた患者や遠方からの患者も訪れるという。多様なニーズに応えるべく呼吸器内科と腎臓内科の外来を開設。管理栄養士も常駐し、食生活の相談にも対応する。呼吸器内科専門の外来は、一宮西病院の呼吸器内科で長年経験を積んだ平澤奈都子先生。所院長と平澤先生に、診療方針や患者への思いなどを聞いた。
(取材日2025年7月4日)
20年以上にわたる外科の経験を地域医療で生かしたい
初めに、所院長のご経歴や専門などをお伺いします。

【所院長】僕が名古屋大学医学部を卒業した当時、がんの根治をめざせる方法は外科手術だけだと考えられていました。そうした外科の特殊性に憧れ、外科の道に進みました。外科医として江南厚生病院や公立陶生病院などに勤務した後、名古屋大学に戻ってからは肝移植・肝臓外科を専門とし、藤田医科大学病院では肝・脾外科講師を務めました。その後、50歳を前にして開業を決意し、愛知県での勤務が長かったことから病診連携しやすいと考えてこの地を選びました。
50歳を前に開業を決意されたきっかけは何ですか。
【所院長】スポーツ選手に引退があるように、外科の医師にも定年があると僕は考えています。やはり、年齢とともにパフォーマンスは確実に落ちるんです。特に、藤田医科大学病院では肝臓手術の定型化に取り組んだり、肝臓の腹腔鏡手術など新しい手術に挑戦したりとやりがいを感じていましたが、手術で失敗は許されません。術後は急変時にすぐ対応できるようにいつも病院のそばで生活していました。そして45歳を過ぎた頃、体力の低下で限界が迫っている気配を感じたのです。管理職として働く選択肢もありましたが、臨床医として現場で働き続けたかったので、それには開業しかないと決意しました。
リハビリを診療に取り入れられた経緯を教えてください。

【所院長】大学病院時代、術後のリハビリを積極的に行うか否かで、術後の経過がまったく違ってくることを知りました。高齢の方は、手術後に安静な状態で長い時間を過ごすと、そのまま寝たきりになってしまうことが多いんです。そこで運動機能の衰えを防ぐためにリハビリを行うわけですが、開業して高齢の方も診療していくのであれば、リハビリテーション科は絶対に必要だと思いました。中高生のためのスポーツ外傷をメインとしたリハビリも行っていますよ。最近はスポーツ外傷に限らず、スマートフォンの見すぎなどで頸部の不調を訴える若年層が増えているので、そういったケースでも利用してほしいですね。
痔の治療にも対応されているそうですね。
【所院長】痔の治療に関わるようになったのは、肛門外科に力を入れているクリニックに、大学病院から派遣されて週1回アルバイトに行ったことからでした。痔にはイボ痔、切れ痔、穴痔(痔ろう)がありますが、当時、イボ痔の治療は切除手術が主流で、手術となると約1週間の入院が必要でした。ところが2005年に痔核硬化療法の薬が承認されてからは、注射による日帰り治療が可能に。とはいえ、今も切除が必要なイボ痔もあります。当院では切除する場合も局所麻酔を用いて日帰り手術を行っています。
呼吸器内科と腎臓内科の外来で多様なニーズに対応
専門の外来を設けていることのメリットについてお聞かせください。

【所院長】年を追うごとに主訴が多様化していく中、できるだけ多くのニーズにお応えしたいと、呼吸器内科の先生を週3回、腎臓内科の先生を週1回お招きしています。僕は肝臓内科の専門家なのでおなかが診られて、呼吸器内科の平澤先生は胸部が診られる、腎臓内科の二村先生は移植もされている先生なので体のだいたいの臓器が診られる、というように幅広いんですね。診られる病気の幅が広いのは患者さんにとっても当院にとっても大きなメリットだと思います。特に、高齢になるとあちこちのクリニックに行くことがだんだん難しくなるでしょうし、一つの場所で幅広く対応してもらえることは患者さんにとっても楽なのではないかと思いますね。
呼吸器内科の平澤先生のご経歴をお伺いできますか。
【平澤先生】大学卒業後、安城更生病院で初期研修をし内科全般を研修後、呼吸器内科を専攻、その後は一宮西病院などの呼吸器内科で経験を積んできました。現在も、他クリニックさんでも内科全般に加え呼吸器内科も診療する医師として外来診療をしています。呼吸器内科は、感染症、アレルギー、がんなど、肺を通して全身を幅広く診ることができるんですね。そこに惹かれてこの道を選びました。こちらのクリニックには4年ほど前から来ていて、現在は火・水・金の午前中に診療しています。
呼吸器内科にはどのような症状で来られる方が多いでしょうか。

【平澤先生】風邪の後、咳が長引き、肺に問題があるのではないかと心配して来られる方が多い印象ですね。こちらのクリニックには、先進のPCR検査機器が導入されていますので、1回の検査で15項目もの呼吸器感染症を一気に横断的に調べることができます。風邪や咳の原因が何かを調べることでスムーズな治療につなげやすいですし、原因がわかれば安心できるのではないでしょうか。流行している百日咳も15分程度で陽性かどうかの結果がわかりますよ。あとはアレルギー、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、睡眠時無呼吸症候群や、間質性肺炎の症状を定期的に診ているケースもあります。アレルギーは、何のアレルギーがあるかを知っていると避けたり対策ができたりするので、検査の需要が高いと感じています。
地域に根差し、幅広い年代の人々の力になりたい
診療の際に心がけていることは何でしょうか。

【所院長】地域のかかりつけ医として、診療科や専門にとらわれず、幅広い症状に対応するよう心がけています。もともとの専門は外科ですが、大学病院に勤務していた時代から一般的な病気の管理や応急対応は行ってきました。患者さんの中には何科を受診したらいいかわからない方もいらっしゃると思いますので、そういった相談に応じることもかかりつけ医の大切な使命だと思っています。
【平澤先生】よくお話を聞いて一緒に考えていくことを大事にしていますね。何に困っているのか、どうしたいと思っているのかというのは人それぞれ違っています。例えば、同じような症状でも、症状を抑えたい場合もあれば、症状自体はそれほど困ってないけれど、何か大きな病気があるのではないかと心配だから検査してほしいという場合もあると思います。薬がどうして必要なのか、どんな効果が見込めるのかなどもしっかり説明するようにしています。
新しく管理栄養士さんが常駐されるようになったそうですね。
【所院長】はい、食事指導をしてもらっています。「いつものお薬を出しておきますね」だけではなく、もう少し良くなるためにはこういうことをしてみるといいですよというアプローチも必要だと思ったんです。皆さんいろいろ悩んでいることはあって、食べているのに体重がどんどん減ることがあれば、食べてないのに体重がどんどん増えることもあります。そのような場合詳しく話を聞き、もし「食べているけれど栄養がないものばかり」といった問題点がわかったとしたら、もっとたんぱく質を取りましょうなどのアドバイスができますよね。管理栄養士さんに相談したいという目的で来院していただいても構いません。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【所院長】地域の皆さんがはつらつとした毎日を過ごせるよう、少しでも力になりたいと日々努めています。リハビリを取り入れている理由もそこにあります。また、現在いらしている患者さんが年齢を重ねて通院困難になったときにも対応できるよう訪問診療も行っています。定期的に来院している方が急に来なくなると心配ですしね。今後も幅広い年代の方たちに向けて健康づくりのサポートができるよう進化していきたいと思っています。
【平澤先生】こちらのクリニックは、新しい機械や新しく採用された検査など、患者さんにいいと思うものをどんどん取り入れていこうという形でやっています。いきなり大きな病院を受診するのは少しハードルが高いなというときなども、まずはこちらで話をしたり検査をしたりして、少しでも安心していただければと思います。

