月山 国明 院長の独自取材記事
整形外科 月山クリニック
(大阪市住吉区/長居駅)
最終更新日:2025/05/29

阪和線の長居駅から徒歩1分、大阪メトロ御堂筋線の長居駅から徒歩3分という便利な立地に「整形外科 月山クリニック」がある。道路に面した平屋建て、バリアフリー仕様のクリニックで、車いすでもスムーズに利用できるように間口や通路の幅などに十分なゆとりを持たせた造りとなっている。院長の月山国明先生が日々実践しているのは「よく聞く・よく診る・よく触る」診療。患者としっかり話をして痛みや悩みを理解し、改善することを第一に考えている。また、地域の病院やクリニックと密に連携を取り、さまざまな症状に的確に対応することに努めている。月山先生に医師として大切にしていることや、地域医療に関わるクリニックの目標などについて聞いた。
(取材日2018年8月3日)
患者としっかり向き合って話をする
クリニックの診療ポリシーを教えてください。

患者さんの抱えておられる痛みを早期に緩和して、QOL(生活の質)とADL(日常生活動作)の低下を防ぐことを第一に考えています。そのためには、患者さんとよく話をして、丁寧に診察し、実際に触れて確認することが必要です。患者さんが感じておられる主訴と、実際の状態が一致しないことも多くあるからです。例えば、「歩行困難」と言いながら、普通に歩いて診察室に入ってこられる場合があります。よく話を聞くと歩けないのではなく、歩いていると膝が痛くなってきて、あるいは股関節が痛くなってきて歩くのがつらいということだったりします。また、脊柱管狭窄症で歩けないので手術をしてほしいという患者さんがおられ、結果的に膝に痛み止めの注射を打ち手術しなかったという例もあります。画像で診断すると確かに脊柱管狭窄症なのですが、よく話を聞くと歩行困難は脊椎ではなく膝が原因だったのです。
検査の結果だけでなく、患者さんの話をしっかり聞くことを重視されているのですね。
医療技術が発達して、整形外科でもCTやMRIなどの画像診断が普及しています。しかし、先進的な設備に頼りすぎている部分があることも否定できません。先ほどの患者さんのように、画像では異常が認められても、それがQOL・ADLの低下につながる症状を引き起こしていないなら、手術などの治療を行う必要はありません。異常があるから治すのではなく、困っていたり悩んでいたりするから治すのです。心筋梗塞のように、たとえ今は症状がなくてもすぐに何らかの対処をしなければ、取り返しのつかないことになる病気はたくさんあります。しかし整形外科の疾患は、生涯症状が出なければ治療の必要はありません。大切なのは、患者さんと真摯に向き合って、その主訴を正確に鑑別、診断することです。
手術をしない保存的治療に不安を感じる方はおられませんか?

具体的な症状は現れていなくても、病気を抱えていることには変わりはありませんから、丁寧に話をします。その方が抱えているのはどういう病気なのか、どんなことに注意が必要なのか、どんな状態になったら受診の必要があるのか、しっかりと情報を提供するとともに注意を促します。さらに、不安を抱えて毎日を送ることがないよう、もし何か問題が起こってから受診しても対応可能であることもきちんと伝えます。
痛みを緩和し生活を楽にさせたい思いで整形外科の道へ
医師をめざしたきっかけを教えてください。

子どもの頃から、父に医師を勧められたことが影響していると思います。父は医師になりたかったようなのですが、戦後の動乱の中で目標を果たせず、子どもたちにその思いを託したのでしょう。僕自身も科学的な分野に興味を持っていたので、特に抵抗感もなく医師を志しました。もし医学部に進まなかったとしても、エンジニアなど理系の道に進んでいたと思います。整形外科の医師もある意味、人体のエンジニアのような存在ですからね。
整形外科を選んだのはなぜですか?
当初は脳神経外科を志向していました。脳の仕組みに興味を持っていたし、憧れのようなものもありました。しかし、実際に研修を体験してみると、学問としては奥が深いものの、臨床ではできることが限られていたのです。そんな時、整形外科の先生の「整形外科は生死に関わるような診療科ではないけれど、患者さんの痛みやつらさを改善して生活を楽にするための診療科」という言葉を聞いて、「そういう考え方もあるのか」と思いました。生命を救うという格好良さはないのですが、患者さんの生活の質を向上させることも、やりがいのある仕事だと思えるようになったのです。その先生の言葉がなければ、整形外科の医師にはならなかったでしょうね。とはいえ、脳神経外科に対する興味を失ったわけではなく、大学院で脊椎の研究を選んだのは、脳や神経に対する興味からだと思います。
開業の動機を教えていただけますか?

病院では多くの手術を手がけていましたが、手術よりも外来で患者さんと接して、保存的治療を行っているほうが自分に合っていると気づいたんです。手術は嫌いではなく、むしろ好きで、患者さんに感謝していただけたら達成感もあります。好きだけど、怖い。手術を指導していただいた先生にそのことを相談すると、「それが普通。怖いと感じないほうがおかしい。そのうちに慣れるよ」と助言をいただきました。その後も「好き」と「怖い」という思いを持って手術を続けていたのですが、開業された先輩の先生方の話を聞いて、手術以外の選択肢もあると思い始めました。開業して患者さんとより濃密に接するのもいいなと思うようになったのです。
超高齢社会にしっかりと対応していく
リハビリテーションに力を入れておられますね。

当院の診療全体を100とすると、医師の診療が50、リハビリテーションが50と考えています。注射や薬で手術の後の関節のこわばりをほぐしたりするのは不可能です。また、患者さんには自主トレをお願いしますが、痛みが伴うとやはり手加減してしまうのでリハビリは欠かせません。リハビリの目的は痛みや動きにくさを改善するためですが、手段はできるだけ多いほうがいいので、運動・理学療法はもちろん、器具を使った物理療法、さらに必要であれば装具療法も取り入れています。ただし、器具を使う場合は過度に動かしすぎるリスクもあり、やはり人が行うリハビリテーションにはかないませんね。
先生のリフレッシュ法を教えてください。
筋力トレーニングが好きでジムに通い、ジムの人たちに誘われてマラソンにも参加しています。時間に少し余裕のある時期があって、家で自主トレを始めたのですが、毎日続けているうちにやらないと落ち着かなくなって……。それでジムに通うようになりました。実は以前はもっと太っていたのですが、ジム通いで体重も体脂肪率もぐんと落ちました。もっとも、今は毎日が忙しくてせっかく落としたのにだいぶ戻っている状態ですが(笑)。あとは3歳と5歳の子どもがいるので、休日はできるだけ一緒に遊ぶようにしています。
今後の目標について教えてください。
人生100年などといわれ、リタイア後の第二の人生も30年というスパンで考えるような時代です。長いセカンドライフを、痛みなどの問題を抱えて過ごすというリスクを避けるためにも、骨粗しょう症をはじめ、ロコモティブ症候群、フレイル、サルコペニアといった運動器の問題について、早い段階から予防の意識を持つことが必要です。さまざまな情報が飛び交う中、正しい情報を提供するための取り組みができればと考えています。大学院で脊椎を研究したので、脊柱管狭窄症についてはずっと関心を持っていますし、骨粗しょう症については研究会に参加するなどして知識のブラッシュアップに努めています。
読者にメッセージをお願いします。

受診を怖がらないでください。「悪い診断が出るのでは」「手術しなければならないのでは」と不安になる方が多いのですが、たとえ病気が見つかっても治療には多くの選択肢があります。放置して悪化したり、不安をずっと抱えていたりするほうが問題です。また、言いたいことはどうか遠慮なく言ってください。痛みなどがあるなら、それをきちんと伝えないと正確な診断ができません。「こんなことを聞くと怒られるのでは」などという心配もまったく不要です。そしてもう一つ、「固執しない」ことも大切だと思います。最近はいろいろな情報があふれていて、「自分はこの病気だ」と思い込んで受診される方がおられます。知識を持つのは良いことですが、自己判断は正しいとは限りません。もっと肩の力を抜いて楽な気持ちで受診し、医師やスタッフを信頼して任せてください。