大田 昌治 院長の独自取材記事
むさしのレディースクリニック
(武蔵野市/武蔵境駅)
最終更新日:2024/08/01
武蔵境駅南口から徒歩2分。武蔵境通りに面した「むさしのレディースクリニック」は2台の駐車場も備え、公共交通機関や自家用車でのアクセスも良く、妊婦や体調の優れない患者にも通いやすいクリニックだ。院長を務める大田昌治先生は、武蔵野赤十字病院の産婦人科で副部長として勤務経験のある医師。同病院と周産期ネットワークオープンシステムを結んでいることも特徴として挙げられる。患者にとってストレスの少ない環境での妊婦健診を心がけ、武蔵野赤十字病院だけでなく、近隣の病院や里帰り先での出産をサポートする。不妊治療や婦人科治療にも対応する他、スタッフのほとんどが助産師で、助産師相談ができる外来の体制を整える同院。助産師とともに取り組む理想の医療について、大田院長に聞いた。
(取材日2024年3月12日)
8人の助産師とともに患者の心に寄り添う医療を
明るくて、木を基調とした清潔感あふれる内装がとても心地良いですね。いつ開院されたのでしょうか?
当院は2016年に武蔵境駅の北口で開院したのですが、手狭になったのと産後ケア事業を拡充させるために2019年に現在の場所に移ってきました。自宅のようにリラックスできる空間にしたくて、スリッパを用意せず、フローリングを靴下や素足で歩いてもらう院内にしました。
どのような患者さんが多いですか?
ざっくり分けると妊婦さんが4割、不妊治療の患者さんが2割、その他の患者さんが4割といったところでしょうか。最近では、月経前症候群(PMS)や更年期障害の患者さん、子宮頸がんワクチンを希望する若い女性なども増えてきています。また、コルポスコープ検査など子宮頸部を詳しく診察する検査も用意しています。当院では分娩は行っていませんが、妊婦健診は通いやすいクリニックで受診して、分娩は設備の整った病院で行う仕組みのセミオープンシステムを採用しており、武蔵野赤十字病院と連携しています。武蔵野赤十字病院での分娩や同病院以外の医療機関での里帰り分娩を希望される方も多くいらっしゃいます。
診察室が4部屋ありますが、どのように活用されているのでしょうか?
当院では非常勤を含めると助産師が8人いて、それぞれが助産師相談を担当しています。診察室は助産師が使用することも多く、日常的にじっくり相談できる環境を整えることを大事にしています。外来では、医師である私の診察に加えて助産師が保健指導などをしていますが、患者さんが抱えているいろいろな悩みや不安を相談しやすいのではないかと考えて取り組んでいます。妊婦さん以外の患者さんへも、最初の問診は助産師が行っています。
こんなに助産師さんが多いクリニックは珍しいのではないでしょうか。
そうですね、珍しいと思います。当院の助産師は私にとって自慢のスタッフです。私が話す前後にさまざまな角度から患者さんを見て、理解してくれます。おなかが張りやすいなどの体の悩みに対してのアドバイスはもちろんのこと、産まれてくる赤ちゃんのきょうだいのことや食事についてなど、普段の生活に関するさまざまな相談にも乗ってくれます。特に、産後授乳、育児について悩まれる患者さんにとって、助産師は非常に大きな力になってくれるでしょう。
医師と助産師で患者にとってのベストを探る
助産師さんが多いことで、他に有益なことはありますか?
医師と助産師で見方が違うことって、結構あるんです。例えば、切迫早産の可能性がある患者さんがいたとして、医師は医学的な見地から「入院して絶対安静」などと言いがちですが、助産師は患者さんの症状だけでなく仕事や家庭の状況をトータルで鑑みますので、「できるだけ入院せずに対応できる方法はないか」などと考えたりします。医師と助産師の間でどのような対応が患者さんのためになるかと日頃から話し合っているので、患者さんにとって身近で現実的な提案ができているのではないかなと思います。
医師と助産師、異なる見地から患者さんのために議論できるのは素晴らしいですね。
ありがとうございます。助産師は医師とは違う分野でのプロフェッショナルな存在なので、その技術や知識を発揮してもらいやすい環境を、これからも提供していきたいと思っています。
開院前は、武蔵境にある武蔵野赤十字病院の産婦人科で副部長を務められていたんですね。
10年間勤務した武蔵野赤十字病院では、さまざまな分娩に立ち会い、がんの治療や腹腔鏡手術、体外受精なども行っていました。その前は山梨大学に付属する病院で先進の生殖医療を研究していましたし、そのすべてが今に生きています。健診で難しい病気が見つかったり、妊婦さんに少しでも危険な兆候が見られたりしたら、すぐに武蔵野赤十字病院にお願いしています。不妊治療でも原因によっては先進の治療が受けられる不妊専門のクリニックをご紹介します。時には内科を紹介することもありますが、大事なのはスピード感。妊婦さんや患者さんが適切な医療を受けられるよう、速やかに連携することを心がけています。同時に、大きな病院の混雑緩和につなげるためにも、できることはできる限りやろうというスタンスでいますので、不妊治療も人工授精までは当院で行っています。
こちらで提供している産後ケアとは、どのような内容でしょうか?
当院に併設されたゲストルームや入浴施設で、お母さんに心身ともにリラックスいただくとともに、経験豊富な助産師が赤ちゃんのお世話やヘルスチェックを手伝い、育児相談までできるサービスです。スタッフはみんな、妊娠から出産までのプロセスを把握していますので安心してご利用いただけます。出産後はホルモンバランスも崩れますし、赤ちゃんのお世話は本当に大変ですから、無理が続いているなと感じる時は、ぜひ産後ケアのサービスを活用してほしいです。武蔵野市民は一部費用の助成もありますよ。
気がかりな時に、気軽に頼られる存在になりたい
どんな時にやりがいを感じますか?
長らく診ていた患者さんで、おなかの中で大きく育った赤ちゃんを亡くされた方がいました。検査で赤ちゃんの心拍の動きが確認できなかった時、そのことをお伝えしたら、やはり言葉にならないほどのショックを受けていらっしゃいました。ずっと気がかりだったのですが、その方が再度妊娠された際、また私のもとに通ってくださり、今度はしっかりと出産のお手伝いができ、産後もサポートをすることができました。つらい経験を乗り越えた方とも一緒に生命の誕生を喜べることは、産婦人科医として非常に大きなやりがいだと思います。また、当院のような地域のクリニックでは、病院よりも継続的に患者さんと関わることができるのも魅力ですね。
地域のクリニックで診療されることでは、他にどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?
当院は医師が私一人ですので、患者さんの様子を一貫して診られるのは診察する上での魅力だと思いますし、患者さんにとってのメリットともなると考えています。患者さんの顔色や雰囲気の変化を察知することにつながるので、「いつもと違うかも」といったことに気づきやすいように思います。責任を持って患者さんを最後までしっかり診られるところにも、地域のクリニックで診療をする醍醐味(だいごみ)を感じますね。
開院して8年、どんなクリニックをめざしていらっしゃいますか?
地域に根差したクリニックとして、ちょっと気になることがあった時に「むさしのレディースクリニックに行ってみようかな」と思ってもらえるような存在になることです。開院して8年がたち、ありがたいことに少しずつ頼ってくださる患者さんも増えました。武蔵野赤十字病院を中心に地域との連携を深め、患者さんに合った適切な対応を行い、ストレスなく診療を受けられる体制をさらに整えることができればいいなと思っています。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
明らかな病気でなくても、婦人科系において何かしらのお悩みがある時は気軽にお話ししに来てほしいです。当院で解決に導けたり何かしらのアドバイスができたりするかもしれません。昔は月経痛もPMSも我慢する風潮がありましたが、耐える必要はまったくありませんよ! 悪化すると仕事や学校生活に支障を及ぼすこともありますから、気になった時には気軽に来てもらえたらいいなと思います。医師、助産師ともに患者さんをサポートいたします。