岡田 拓也 院長の独自取材記事
あおぞら赤ちゃん子どもクリニック亀有足立小児科
(足立区/亀有駅)
最終更新日:2024/11/26
クリニック名が織り込まれたかわいいじゅうたんマットが迎え入れてくれる「あおぞら赤ちゃん子どもクリニック亀有足立小児科」。カラフルなキッズスペースやペガサスのイラストが飛び交うブルーの壁など、待合室は楽しい雰囲気だ。このクリニックは、足立区東和に2016年7月、岡田拓也院長が開業。名前には子どもたちが元気に青空の下で遊べるようにとの意味が込められている。岡田院長は日本医科大学小児科学教室時代の恩師が専門領域を尋ねられた際に答えた「小児科医は子どもが専門」という言葉を胸に、より良い小児科医療の提供をめざす。院長自身、3児の父だが「娘ができてから実体験を通じて話ができるようになった」と笑う。そんな岡田院長にクリニックへの思いを語ってもらった。
(取材日2016年8月1日/更新日2024年11月15日)
相談だけでも気軽に来られるために感染予防を徹底
開業にあたってどんな点にこだわられたのですか?
ここで開業する以前、北戸田のクリニックに院長として勤めていましたが、その時に自分だったらこんなふうにしたいと考えていたことが多々ありました。今回はそれらをできるだけ実現しています。一つは感染予防のために個室の診察室を8部屋設置したことです。受付を挟んで右側にある5部屋は風邪などの診察に使用し、左側の3部屋は予防接種や健診、喘息やアトピー性皮膚炎の定期受診などに使用しています。病院に行って感染症にかかってしまっては本末転倒ですから、相談事だけでも気軽に来院できるよう用途別に個室にし、診療の際は私が移動する形にしています。換気にも配慮して個室の空気が院内に流れないようにしています。また、子どもたちにとってクリニックは楽しい所と感じてもらえるように待合室は遊び場のような雰囲気にしました。広いキッズスペースを用意して、壁の下半分はマグネット仕様にして、マグネットのおもちゃで遊べるようにしています。
そもそもなぜ小児科医になろうと思われたのですか?
私が小さい頃から、祖父母が病気を患っていまして、祖父は小学6年の時に倒れ、祖母は3歳の時に倒れました。ずっと患者側の立場で育ってきたのですが、小学6年生の時に祖父を助けていただいたことが強く心に残っていて、いつか恩返しをしたいと思い、医師をめざしたのです。日本医科大学を卒業後、脳外科や心臓外科の選択肢もありましたが、重大疾患に陥ってからの医療ではなく、病気にならないための予防が重要と考え、予防医療を志望。予防医療には、乳児健診や予防接種などもあり、そこから小児科医へと進展しました。子どもの時の思いが28年間たってようやく実現した思いです。子どもたちには何も罪がないですし、誰も悪くない。なのに病気にかかってしまう。そんな子どもたちを何とかしてあげたい、病気にならないよう手助けしたいと思ったのです。
診療の際、心がけていることはどんなことですか?
お母さんたちは、お子さんが風邪をひいたり急に発熱したりすると、焦ってしまうと思います。しかし、子どもは保育園や幼稚園で集団生活を始めると皆さんだいたい2~3週間ほどで熱を出します。それは、それまでの生活で身につけてきた細菌やウイルスがその子によって違うからなんです。つまり、風邪を何度もひくことは情報を交換し合い、徐々に強い子に育っているのです。咳は細菌やウイルスを外に排出するためで、発熱は体が細菌と闘っているサインなので無理に下げることはない、ということもわかりやすく説明して、お母さんの気持ちをクールダウンするようにしています。私自身、3児の父ですが、小児科医として現場で診てきた経験からだけではなく、父としての実体験をもとに話せるようになりました。うちの子もそうですよ、と話すとお母さんたちも安心するようです。医療者として、親として、両方の立場で話せるようになりました。
病気の予防と撲滅のため予防接種に注力
お母さんたちとの信頼関係はどのように築かれているのですか?
一つは子どもの目線に合わせて診察をしています。背中を丸めて姿勢を低くしたり、しゃがんで診察したり。ずっと背中を丸くして低い姿勢をとっていますので、いつの間にか猫背になってしまいました(笑)。お母さん方へは専門用語は使わず、わかりやすい言葉を使ってお話ししています。例えば、細菌という言葉はばい菌に、真菌はカビと言い換えたりしています。難しい名称は使わないようにして、平易な言葉ばかりずっと使ってきた結果、専門用語がすぐに出てこなくて、紹介状が小学生が書いたような文章になってしまう恐れもあるんですけどね(笑)。
これからどんな分野に力を入れていきたいですか?
予防接種です。予防接種には公費で受ける定期接種と任意接種がありますが、任意接種は重要ではないから打たなくてよいと考えている人も多いのです。しかし、任意接種の対象となっている病気でも重症となる場合もありますので、受けていただきたいです。躊躇する方もおられますが、そんな時は、子どもたちの生活をロールプレイングゲームに例えて、「保育園には悪いばい菌が多くそれらと戦うためにより多くの武器を身につけよう!」と話しています。予防接種の大きな目的は病気予防ですが、もう一つ、病気の撲滅という目的もあります。一人でもかかってしまえば、感染が広がり病気の撲滅はできませんから。
院長の理想とする小児科医というのはどんなイメージでしょう?
子どもたちの顔と名前を覚えて、顔を見ただけですぐに体調がわかる、そんな小児科医ですね。顔色や表情などを見て、「あ、今日調子悪いな、いつもと違うな」ということがわかる医師。そして子どもたちも気軽にふらりと立ち寄れるようなクリニックが理想です。まだ開業したばかりですが、これから地域のお子さんや親御さん方と信頼関係を深めていきたいですね。
子どもの個性を大切に。一人で悩まず気軽に相談を
これまでで心に残っているエピソードはありますか?
前のクリニックを辞める時、子どもたちが手紙や絵などを贈ってくれました。3歳くらいのお子さんやきちんと文章のかける年齢のお子さんまで、ありがとうの言葉を添えて、いろいろ手作りしてくれました。その時はとてもうれしかったですね。中には泣いてしまうお母さんもいらして。その時の患者さんが、遠いところわざわざここに通ってくださっていて、とてもうれしく感じています。
お忙しいとは思いますが、プライベートの時間はどのようにお過ごしですか?
今は、休みの日はほとんど子どもたちと一緒に遊んでいることが多いですね。マンションの中にキッズルームがありまして、一日に何回も行って一緒に遊んでいます。以前は競技系のゴルフをよくやっていて、ハンディ7、ベストスコア71をマークしているのですが、最近はあまり行くことができません。先日は子どもに小さいクラブを与えて、少し遊ばせたこともありました。義理の父もゴルフをしますので、将来親子3代でコースを周れたら楽しいですね。
今後の展望についてお話しください。
将来、ぜひやりたいと考えていることが二つあります。一つは、病児保育と小児科クリニックの中間のようなシステムを構築していくこと。例えば、幼稚園で熱を出した子どもを当院で預かって診るというシステムです。そのために個室の診療室にはサークルベッドや監視カメラも設置しているのですが、実現するためには地域のさまざまな業種の方々との連携が必要と考えています。もう一つは、小児科クリニックを中心に育児関連の雑貨店や母親が安心して憩えるカフェなどが集まる、育児に特化したコミュニティースペースみたいなものをつくりたいと考えています。地域の行政とも協力して一緒に子育てを応援する、そんな場がつくれればと思っています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
お母さん方には一人で悩んでいないで気軽に相談に来ていただきたいですね。子育て本に書かれていることがすべてに当てはまるということはなく、子ども一人ひとり個性があります。子どもの成長や変化などは一生の中でその時、その瞬間しかありません。大変であっても、ぜひその瞬間を大事にして、楽しんで見守ってほしいと思います。かつて大学病院に入局した時の恩師が、専門分野を聞かれた時に「小児科医は子どもを診ることが専門」と答えられて、その言葉が印象に残っています。私も小児科医として、地域に暮らす大勢の子どもたちをしっかり診ていきたいと思います。