山口 健一 院長の独自取材記事
爪と皮膚の診療所 形成外科・皮膚科
(横浜市青葉区/青葉台駅)
最終更新日:2026/03/19
爪にトラブルが起きたとき、どこを受診すれば良いかわからない。そんな人たちが迷うことなく適切な治療が受けられるようにと2016年5月に開業した「爪と皮膚の診療所 形成外科・皮膚科」。山口健一院長自身が巻き爪で悩んだことがきっかけで爪の診療に打ち込み、専門である形成外科の診療だけではなく、皮膚科、整形外科といった他科の視点、靴職人やネイリストなど医療以外の職人の見解も取り入れ多角的に「足」を診ていく。「ここまで巻き爪を深く掘り下げた医師は少ないでしょうね」と自らを評し優しい笑顔を見せる山口院長。研鑽を重ねた技術と豊富な経験だけではなく、穏やかな口調で患者の不安を受け止める。そんな山口院長にクリニック開業の経緯や日々の診療についての他、今後の展望などを語ってもらった。
(取材日2026年1月29日)
形成外科の医師がたどり着いた、爪を診るという医療
最初に、医師になった背景を教えてください。

大学では将来に直結する学びを求め、医学部に強く惹かれました。当時よく読んでいた医療漫画の影響もあり、同世代にはそれをきっかけに医師を志した人も多かったと思います。作中のような天才にはなれませんが、患者さんに向き合う姿勢や覚悟だけは負けないよう、今も自分に言い聞かせています。形成外科を選んだのは、治療結果が目に見えてわかる分野だからです。傷痕や痛み、機能面を患者さんと同じ目線で確認できることから、ごまかしのきかない分野だと感じています。細かな作業や職人的な仕事が好きな性格もあり、結果に責任を持つ誠実な治療を常に心がけています。
開業のきっかけは、どのようなことだったのですか?
開業は、地域医療に貢献したいという思いからでした。皮膚科診療はもちろん、擦り傷や切り傷、やけど、ばね指、皮膚腫瘍の切除術など、多岐にわたる治療に対応しています。巻き爪についても、症状や状態を見極めた上で、手術や矯正を行っています。診療を重ねる中で、「爪を診てほしいが、何科を受診すれば良いかわからない」という声を多く聞いてきました。そこで、迷わず相談してもらえるよう、院名を「爪と皮膚の診療所」としました。医師がどれだけ勉強を重ねても、実際に救えるのは出会えた患者さんだけです。院名をわかりやすくすることで、より多くの方に医療を届けたいと考えています。
ご自身の経験から、爪と足を多角的に診るようになったとか。

爪の治療に強い関心を持つようになったのは、研修医時代に自分自身が巻き爪で悩んだ経験がきっかけです。半年ほど痛みが続き、「そのうち治るだろう」と考えていましたが、なかなか改善しません。炎症はわずかでも歩くのがつらく、最終的には先輩医師に手術をしてもらうことになりました。その後、巻き爪の手術療法を学び、さらに皮膚科で行う切らない矯正治療も習得。医師ごとに治療方針が異なることに疑問を抱き、両方を学ぶ中で、治療は爪の状態や背景に応じて選ぶべきだと実感するようになりました。また、なぜ爪が巻くのかを考える中で、足の骨や構造にも目を向ける必要性を感じ、形成外科・皮膚科に加えて、整形外科領域やインソールについても学んできました。痛みが出始めたら早めに、痛みがなくても気になった段階で診させていただくことが大切だと考えています。
痛みに配慮した爪の手術で、長引く痛みの改善をめざす
爪を専門に診る中で、日々感じていることを教えてください。

当院には、これまでに何軒も皮膚科を受診したものの、長い間症状が改善せずに悩まれてきた方が多く来院されます。数年前から爪が食い込んで痛みが続いている、血が出た状態がなかなか治らない、3軒ほど皮膚科を回ったものの「ここでは難しい」と言われてしまった、そうしたお話を伺うことは決して珍しくありません。巻き爪矯正を試したものの、思うような成果が得られず、「焼け石に水のように感じた」とおっしゃる方もいます。当院では、これまでの治療経過やご不安を丁寧に伺った上で、必要に応じて手術治療も含め、安心して治療を進めていただけるように体制を整えています。実際に、神奈川県内だけでなく埼玉・千葉・東京・静岡など関東近県から来院される方も多く、爪の治療で行き場を失っている方が非常に多いことを日々実感しています。
こちらでは爪の手術を実施されているのだとか。
当院では、症状によって手術を選択することができ、これまでも多くの手術を実施してきました。実は爪の手術については、医師の間で否定的な意見が少なくありません。「とても痛い」「術後の爪の形が悪くなる」「再発しやすい」「運動ができなくなる」といったイメージから、「今は手術をする時代ではない、矯正のほうが良い」という考えが広まっています。しかし、本来の手術は痛みが強くなく、見た目もぱっと見てわからない程度で、1〜2週間ほどで落ち着くことが見込めるものです。痛みに関しては患者さんの不安を減らすため、2026年の春頃から針を使わない麻酔の導入を予定しています。再発もほとんどなく、運動にもほとんど支障はありません。手術に不安が持たれる背景には、技術が更新されず従来の方法が続けられているケースがあることも影響していると考えます。爪を外科的に適切に治療できる医師は、限られているのが現状ではないでしょうか。
爪の痛みで悩む人が、適切な治療にたどり着くためのポイントはありますか。

爪のトラブルには、爪自体が強くカーブする「巻き爪」と、爪の形に関係なく周囲の皮膚に食い込み、傷や痛みが長く続く「陥入爪(かんにゅうそう)」があります。傷が治らず痛みが続く場合は手術の対象となり、巻き爪による苦しさが主な場合は矯正を選択します。ただし、矯正を行っても、原因に対処しなければ、時間とともに元に戻ってしまいます。爪は、扁平足や外反母趾、ハイアーチなどによって下からの力が不足すると巻いてきます。これらは整形外科の領域にあたり、皮膚科・形成外科・整形外科、それぞれの視点を踏まえて考える必要があります。また、平らなのに食い込むケースで特に多い原因は爪切りの失敗です。手術は15分程度で、翌日と1週間後に確認を行い、2週間ほどで終了します。
爪に向き合い続ける理由と、その先に見ているもの
院長が診療を行う中で、大切にしていることを教えてください。

患者さんの疑問や不安をできる限り取り除くことを大切にしています。他院で十分な結果が得られなかった方も多く、これまでの治療内容や困り事を丁寧に伺います。セカンドオピニオンとして「別の意見が聞けて良かった」と感じていただければ幸いです。一方で、最善の治療が行われていなかった可能性も忘れてはなりません。医師として生涯学び続け、その時点で最良の治療を追求したいと考えています。また、緊張して来院される患者さんが多いため、診察中は笑顔での対応を心がけ、極力背中を向けず、積極的に声をかけるようにしています。
開業から10年を振り返って、爪の医療の現状をどう感じていますか?
開業して約10年がたちましたが、爪の医療はまだ十分に進んでいるとはいえないと感じています。フットケアサロンが増え、医師ではない方が爪を見る機会は確実に増えました。その一方で、現場で困ったときに医学的に支えられる医師が、圧倒的に少ないのが現状です。爪の診療には、爪そのものを見る技術だけでなく、細かく繊細な外科の技術、さらに巻き爪に関する整形外科的な知識も必要になります。高い専門性が求められる分野です。フットケアサロンの増加によって、爪に悩みを抱えている方が非常に多いことは明らかになりましたが、その先で医療が必要になったときの受け皿は、極端に少ない。今後は、その受け皿となる医師を増やしていくことが、自分の役割だと思っています。
最後に、今後の展望についてお伺いします。

爪の治療に関することになりますが、これからはエデュケーターとして、爪を得意とする人たちを増やしていきたいと考えています。その一環として、講演活動にも力を入れてきました。ここ数年は、爪が得意な医師を増やす取り組みを続けており、少しずつ認知度が上がり、講演には多くの方が足を運んでくださるようになっています。医療の枠にとどまらず、靴職人やネイリストなど、足に関わるすべての人と交流し、専門的な知識を伝えていきたいとも考えています。どうしても手術が必要な方はいますから、痛みが少なく、術後変形の少ない手術ができる医師を増やしたい。治療方針の違いに患者さんが振り回される状況をなくしたい。その思いが、私が爪の医療に向き合い続ける原動力になっています。
自由診療費用の目安
自由診療とは巻き爪矯正/(1本片足)1万4300円~(税込)

