稲見 真木子 院長の独自取材記事
いなみ内科クリニック
(世田谷区/三軒茶屋駅)
最終更新日:2022/01/28
三軒茶屋駅前のにぎやかな通りから少し離れた静かな場所で2016年に開院した「いなみ内科クリニック」は、稲見真木子院長が得意とする消化器内科の診療をはじめ、風邪のような急性疾患から糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの慢性疾患まで幅広く対応している。中でも稲見院長が注力しているのが胃の内視鏡検査と、超音波検査によるスクリーニング、精密検査だ。内視鏡検査というと気後れしてしまう人も少なくないが、同クリニックでは経鼻内視鏡を導入し、患者への負担を軽減するべくさまざまな工夫をしている。検査の内容や重要性について稲見院長に話を聞いた。
(取材日2021年7月7日)
一般的な症状から専門性を要する疾患まで広く対応
こちらでは、主にどのような疾患に対応されていますか?
風邪のような急性疾患はもちろんのこと、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの慢性疾患、そして私の専門である消化器系と幅広く対応しています。消化器領域では、経鼻内視鏡と腹部超音波検査機器を設置し専門的な検査も行っています。生活習慣病についてはご相談も多いので、食事に関する相談も含めて積極的に診ていきたいと考えています。そのほか、禁煙治療や睡眠時無呼吸症候群の検査にも対応可能です。
発熱や風邪症状のある患者さんと、それ以外の患者さんの動線を分けているそうですね。
はい。風邪や胃腸炎などの患者さんはあらかじめ予約をしていただき、来院されたらスタッフが専用の診療室へと案内させていただいています。入口も一般患者さんと分けており、待合室で両者が一緒にならないよう工夫しています。発熱や風邪症状のある患者さんの対応の際は、医師・スタッフともに防護衣やフェイスシールドの着用を徹底し、感染症対策はしっかり行っていますので、安心して来院していただきたいですね。
先生のご専門の消化器内科の診療に、何か特徴はありますか?
できるだけ気軽に検査をお受けいただけるように、当院の胃の内視鏡検査では細くて患者さんの負担の少ない経鼻内視鏡を導入しています。経鼻内視鏡は挿入時に舌根部に触れないため「オエッ」という嘔吐反射が起こりにくく、検査中の会話も可能です。もちろん、鼻から内視鏡を入れるのが苦手な方は口からの検査も可能です。検査でピロリ菌感染が疑われた場合には検査を行い、陽性の場合は積極的に除菌治療を行っています。また、検査でがんなどの疑いがあれば組織検査を行い、要治療であれば適切な医療機関へ紹介させていただいています。さらに、体の負担が少ない腹部超音波検査も積極的に行っているほか、CTやMRIが必要になった場合はこちらから検査が可能な施設に検査を依頼し、その結果を当院でご説明することも可能です。
患者と同じ目線でわかりやすく一緒に協力する気持ちで
胃の内視鏡検査は定期的に受けたほうがいいのでしょうか?
胃に関して言えば、以前に慢性胃炎(萎縮性胃炎)を指摘された方やピロリ菌に感染している方、また除菌はしたけれど感染の既往のある方は、毎年胃内視鏡検査による経過観察をお勧めしています。ピロリ菌は高齢の方により多いですが、若い方でも感染していることがあり、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などのほか、胃がんを引き起こす原因にもなっています。最近はピロリ菌を除菌された方が増えていますが、除菌により胃がんリスクは減少が期待できるものの、残念ながら完全にゼロになるわけではありません。ピロリ菌による慢性胃炎があると胃の粘膜に凹凸ができ、バリウムによる胃透視検査では早期胃がんが発見しにくいということもあるため、内視鏡での検診が望ましいです。胃以外でも、食道がんのリスクの高い方など定期的なチェックが必要な方もいらっしゃいますので、詳しくはご相談いただければと思います。
腹部の超音波検査ではどのような検査をされているのでしょうか?
腹部の超音波検査は診察台に横になり、腹部に検査用のゼリーを塗って検査していきます。負担の少ない簡便な検査ですが、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓といった臓器を観察することができます。胆石、胆のうポリープ、尿管結石などよくある疾患のほか、腫瘍の有無なども検索可能です。また、最近増加している脂肪肝の有無も簡単に判別できます。脂肪肝の一部は慢性肝炎から肝硬変まで進展することもあり、健診で肝機能障害を指摘されたらぜひ検査を受けていただきたいですね。基本的には予約で行っていますが、腹痛などで緊急性があればその場で検査を行うこともあります。
そのほか、こちらで受けることのできる治療や検査などについて教えてください。
禁煙治療や睡眠時無呼吸症候群の検査、治療を行っています。禁煙をご希望される方には12週間かけて内服による治療を行います。残念ながら禁煙に失敗してしまった方も、前回治療から1年が経過していれば再治療が可能です。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、自宅で検査を受けていただき、その結果によってCPAP(持続陽圧呼吸療法)の導入が必要か判断します。ご家族からいびきの音がひどいとか、いびきが止まっていると指摘された方は一度ご相談ください。
日々の診療で大切にしていることはどんなことですか?
なるべく患者さんと同じ目線で、できる限り専門用語ではないわかりやすい言葉を使って優しくお話しするように心がけています。生活習慣病の患者さんは食事療法や運動の維持が必要ですが、実際にはわかってはいても、なかなか実行できない患者さんもたくさんいらっしゃいます。そんな時も根気よく必要性についてお話しし、「一緒に協力してやっていきましょう」という気持ちで接するようにしています。
気後れせず早めに検査を受けてほしい
ところで、先生が医師になったのはやはりお父さまの影響でしょうか?
そうですね。子どもの頃から小児科医である父の姿を見ていましたから、医師になるのがいいかなという思いが自然と頭の中にありました。大学受験の前にはどうしようかなと迷った時期もありましたが、医学部を受ける友人もいたので、一緒に医学部をめざして勉強をしました。消化器内科を選んだのは、内視鏡や超音波検査を自身で行うことによって診断につながることに興味を持ったからです。特に超音波検査は体に負担なく、気になったらいつでも、どこにでも当てられることがいいですね。また、消化器内科は内視鏡や超音波検査機器を用いた治療、カテーテル治療などさまざまな治療の手段があることも魅力でした。
お忙しい中、休日はどのように過ごされますか?
家ではよく飼っている犬と遊んでいます。それ以外では密を避けながら美術館に行ったり、自然のある場所へ散歩に行ったりしています。写真を撮ることが好きで、植物や昆虫、景色などの写真をよく撮っています。学生時代は美術部に所属していたので今もいろいろ描きたい、作りたいという気持ちはありますね。クリニックのロゴマークは自分でデザインしたんですよ。生き物や植物が好きなので、みんなから好かれるようなモチーフは何かと考えた末、フクロウにしました。
今後のクリニックの展望と、読者へのメッセージをお願いします。
時節柄、通院をためらってしまう方もいるかもしれませんが、どんな病気でも早期発見が大事です。健康診断で「要検査」や「要治療」といった結果が出た場合は、なるべく早めに医療機関を受診していただきたいですね。症状がなくても、高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの慢性疾患は放置すれば重大な病気につながることがあります。がんなど悪性疾患であれば、発見が早ければ早いほどより負担の少ない方法で治療ができたり、治療の選択肢が増えたりする場合もあるのです。生活習慣病の予防にはバランスの良い食事と運動が基本ですが、遺伝的な体質も大きく影響します。そのため、ある程度の年齢になったら症状の有無に関わらず、健康診断を定期的に受けることをお勧めします。それを心がけた上で、何か気になることがあれば些細なことでも遠慮なくご相談ください。また、女性の方には男性医師には言いにくいこともお気軽にお話しいただければと思います。