土原 豊一 院長の独自取材記事
つちはら整形外科クリニック
(横浜市栄区/港南台駅)
最終更新日:2022/01/18

勤務医時代、高齢者が転倒から寝たきりへとつながる患者を多く診療する中で「骨粗しょう症診療で転倒からの要介護を防ぎたい」との思いが、開業を決心した理由の一つだという「つちはら整形外科クリニック」土原豊一院長。また大学では「末梢神経」「痛み」について研究。その専門性を生かし、超音波を使ったハイドロリリースやスポーツ整形、痛みにアプローチするペインクリニック、人工股関節の治療まで幅広く対応する。クリニックのマネジャーを務める妻の美紀さんは菓子研究家でもあり、栄養補給をサポートする焼き菓子を考案するなど側面からも土原院長を支える。「家族で暮らし、開業した栄区を大切に、地域の患者さんを大切にしたい」と、地域医療を実践する土原院長に、クリニックの特徴や、診療に対する思いを聞いた。
(取材日2021年11月26日)
骨粗しょう症や痛みの治療、スポーツ整形外科にも対応
まず、こちらのクリニックの特徴を教えてください。

整形外科として幅広く対応している中で、骨粗しょう症の治療と、私が肩・肘・手の領域と末梢神経を専門としてきたことから、痛みに対する治療、スポーツ整形外科に力を入れています。痛みの治療では、四十肩や腰痛に対するハイドロリリースや、筋膜リリースにも対応しています。また、痛みの治療には体を動かすことが重要と考え、理学療法士やスポーツトレーナーなどと連携して、スポーツ整形外科の患者さんや、腰痛や肩こりなど慢性疾患の患者さんに対し、痛みの症状や目的に合わせた運動器リハビリテーションや筋肉トレーニングを行っています。
院内の快適性や感染対策にも独自の工夫があるそうですね。
何よりも患者さんの安全性と快適性を重視しています。受付はクリニックに出入りする患者さんをすべて見渡すことができる構造で、待合室は広くスペースを確保し、壁にスカーフを飾るなど華やいだ雰囲気にしています。感染症への対策としては、待ち時間とスタッフの負担を軽減するために再来自動受付機や精算機を導入したり、椅子や診療用ベッドは光触媒による抗菌コーティングを実施しています。待合の椅子は一人がけにしており、優雅さはもちろん、感染症対策も担っています。また、お金のやり取りを手で行わないようにするため、POSシステムや自動精算機を導入、クレジットカードの取り扱いも行っています。さらにオゾン発生装置による空間除菌も行っています。
ペインクリニックや、人工関節疾患の診療日もあるとか。

はい。痛みのメカニズムを考え、その原因に向き合っていく整形外科に対して、主に麻酔科で対応するペインクリニックでは注射や薬でその場所の痛みを取り除くことを治療目的とします。それぞれの得意分野を生かし、異なるアプローチで治療することが効率的だと考えたので、麻酔科医師によるペインクリニックの診療日を設け、連携して治療を行っています。また人工関節専門病院の医師による診療で、適応する方は手術につなげて、術後の管理やリハビリは当院で行う病診連携を実践しています。人工関節は抵抗を感じる人が多いのですが、生活の幅が広がる可能性が増えることを知っていただきたいです。
スポーツ整形外科ではどのような診療を行っているのですか。
スポーツ選手の治療や、駅伝チームのメディカルチェックも行っています。スポーツ選手の治療はただ治せばいいというものではなく、「より高いパフォーマンスを発揮できるよう」「練習や試合をできる限り休まずに」などのニーズがあります。なるべく手術せずに治療していく方法を検討し、さらに選手が故障しないように普段の筋力トレーニングを指導するなどしています。その助けになる「高周波温熱機器」を導入して、けがの早期回復にも努めています。
転倒からの要介護を防ぐため、骨粗しょう症治療に尽力
骨粗しょう症治療が、開業の動機と聞きました。

もともと私自身、椎間板ヘルニアの手術がきっかけで、同じように人を助けていきたいと整形外科の医師を志し、大学卒業後は海上自衛隊に所属して診療を行っていました。その後複数の病院で一般の患者さんを診ていた時に、転倒によって骨折し、大がかりな手術を受け、リハビリが長期に及んだり寝たきりになったりする高齢者が多いことに驚きました。その時、「骨粗しょう症治療で骨密度や筋力アップを図り、転倒を予防することが大切だ」と考えて開業を決意したのです。日本では他の先進国に比べて骨粗しょう症への危機感が希薄ですが、私は転倒からつながる寝たきりや介護状態を防ぐためには、骨粗しょう症の治療や予防は最も大切な取り組みと考えています。
実際には、どのような治療や予防を行っているのですか。
まず骨密度検査は手や腕だけでなく、DEXA法という腰椎や股関節で測定する機器を使っています。さらにエックス線検査と骨代謝マーカーの血液検査も行い、かくれ骨折や骨代謝も把握して適切な診断へとつなげています。身長測定も行います。身長の変化は、患者さんが病気を自覚するのに最もわかりやすい目安になるのです。治療では、内服に加えて点滴や注射など治療法が増えてきたので、患者さんの症状や生活習慣、ご家族の都合などに合わせて継続しやすいものを選択できるようにしています。さらに転倒を防ぐためにバランスの訓練と筋力をつける運動器リハビリテーションや筋肉トレーニングを積極的に勧めています。食生活からの改善も考え、菓子研究家の妻に協力してもらい、不足しがちな栄養を気軽に補給できる焼菓子を考え、「錠剤状のサプリメントには抵抗がある」といった方にも喜ばれています。
骨粗しょう症対策で大切なことは何でしょうか。

骨粗しょう症は自覚症状の少ない病気ですから、治療の継続がとても難しいのです。目的は、単に骨密度を上げることではなく、骨折や転倒からの寝たきりを防ぐことだと、患者さんが認識して自ら取り組むことが大切です。当院では、骨粗しょう症学会のプログラムを基本に、患者さんのモチベーションを高め、楽しみながら続けられる食事や運動もお勧めしています。最近、コロナ禍の自粛生活で筋力と骨密度が低下して骨折する高齢の方が増えていますので、ぜひ検査と治療を続けてほしいと思っています。
患者もスタッフも笑顔になれるクリニックをめざして
診療される上で心がけていることは?

待ち時間の短縮と良質な診療の提供の両立です。院内の混み具合をモニタリングしてスタッフとチャットで状況を把握し、できる限りスムーズに診療する工夫をしています。一方で、患者さんをよく見て、訴えにしっかり耳を傾けることを全員が心がけています。リハビリのスタッフが患者さんの異変に気づき、硬膜外血腫や脳幹梗塞の早期発見になったこともありました。また痛みは頭でも感じるものですから、治療が適切でも対応が悪いと痛みが軽減したと感じられないことがあります。ですから、受付も治療の一環と考えてほしいと伝えています。そしてスタッフの笑顔は患者さんの安心につながりますから、笑顔で対応できるよう働きやすい環境づくりをしています。スタッフを大切にすることは、患者さんを大切にすることにつながると考えています。
これからの展望を聞かせてください。
家族で暮らす栄区で開業して6年を経て、駅前などで患者さんが気軽に声をかけてくださると、クリニックが地域の一部になっていることを感じ、これが地域医療なんだなと実感しています。同じ地域に住んでいることは患者さんの安心感につながるのではないかと思います。この栄区を大切に、地域の患者さんを大切にしたいです。だからこそ地域の方々が寝たきりや介護状態にならないように、治療だけでなく、正しい知識や情報の啓発にも努めたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

医師の役割は病気を治すことではなく、その患者さん自身が治ろうという意欲を後押しすることだと私は考えています。痛みを取りたい、スポーツに復帰したい、しっかりと歩きたい、というような思いを叶えるお手伝いをするのが私の使命だと思うのです。転倒リスクのある方は筋力をつけて体のバランスを改善し、寝たきりを防ぐ。元気な方は快適に活動できるよう運動能力や筋力を維持するためのサポートをしていきたいのです。「ホテルのように居心地の良い空間で、リラックスして診察を受け、アクティブにリハビリをして、笑顔でお帰りいただく」。それが当院の理想です。痛みや不具合のある方、骨粗しょう症が心配な方、運動して体力や筋力を維持したい方など、気軽に来院していただければと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは筋膜リリース/1回3000円
高周波温熱治療/1単位 20分 3000円