ウイルスが原因の子宮頸がんは
ワクチン接種による予防が大切
中野島小児科クリニック
(川崎市多摩区/中野島駅)
最終更新日:2025/09/10


- 保険診療
年間約1万人が罹患し、死亡者数は約3000人といわれる子宮頸がん。日本人女性の76人に1人が罹患するとされ、20~40代に多いことからマザーキラーとも呼ばれている。その予防や早期発見にはワクチンの接種や検診が有用だ。ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンは定期接種の対象であり、小学6年生から高校1年生相当の女子であれば、原則自己負担なく受けられる。「中野島小児科クリニック」の池上香院長は、自身が子宮頸がんに罹患した経験を持つ。身近なクリニックならではの距離感と信頼関係で、患者やその家族に予防の大切さを伝えている。「当院では子宮頸がんやワクチンに関する正しい知識を伝えています。その上で接種するかしないかを判断していただきたいと思っています」と語る池上院長に、HPVワクチンついて詳しく聞いた。
(取材日2025年7月1日)
目次
親子で相談できる身近なクリニックで、子宮頸がんやワクチンについて学ぶ
- QHPVワクチンについて教えてください。
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A
▲かわいらしい色合いの待合で患者の不安感を軽減
子宮頸がんの主な原因といわれているのは、高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)です。HPVワクチンは、この高リスクなHPV感染を予防するために行います。検診で見つかりにくいがんもあり、ワクチンによる予防はとても大切です。HPVワクチンは定期接種のワクチンなので、小学6年生から高校1年生相当の女子は、原則自己負担なしで受けることができます。種類や接種時の年齢によって2回ないし3回の接種が必要になります。ただし、ワクチンではカバーされないHPVもあり、HPVが関連しないがんもあります。また、すでに感染している場合はワクチンは無効なので、定期的に検診を受けることも重要です。
- QHPVワクチンによる副反応にはどんなものがありますか?
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A
▲予防接種後30分は転倒防止のため待機が必要と呼びかける
接種部位の痛みや発赤、腫れなどです。数日で治まらなければ接種を受けた医療機関にご相談ください。また、注射の痛みなどで失神する場合もあるので接種後約30分は安静にしましょう。アレルギーや神経系症状などの重い副反応はまれですが、2024年9月までのワクチン副反応疑いの総報告数は9価のワクチンで1万人あたり約3人、2価・4価で9人となっています。以前は広範な痛みや手足の動かしにくさ、不随意運動なども報告されましたが、ワクチン未接種でも同様の症状を示す人がいるとわかり、ワクチン接種との因果関係は証明されていません。なお、接種後の症状をより適切に診療するため各都道府県に協力医療機関も選定されています。
- Q先生ご自身も子宮頸がんに罹患したそうですね。
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A
▲予防接種の大切さを呼びかけている
2024年6月に子宮頸がんに罹患し子宮摘出手術を受けました。子宮頸がんは初期症状がほとんどないといわれており、私も自覚症状はまったくありませんでした。また私が若い頃は、日本にHPVワクチンがなかったのです。だからこそ若い方には接種できる機会を逃さないでほしいと思っています。副反応が心配な気持ちはとてもわかりますが、予防接種をしなかった場合、病気になるリスクは残ってしまいます。日本では毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、特に若い世代に多いことが問題になっています。「将来にわたってベストな選択は何か?」を良く考えた上で、接種についてご判断いただきたいと思います。
- Q男性も接種したほうが良いという話を聞きます。
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A
▲朗らかな笑顔で患者に接する
HPVは、主に性行為によって感染するウイルスなので、性行為を経験する年齢になれば、男女を問わずHPVに感染する可能性があります。中でも高リスク型HPVは、子宮頸がん以外にも、中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマなどの原因になることがわかっており、男性がHPVワクチンを接種することで、それらの疾患の予防につながります。さらに、男性がHPVの感染予防をすることは、性交渉による感染から女性を守ることを意味し、それによって、女性が子宮頸がんに罹患するリスクを下げることが期待できます。ただし、男性への接種は定期接種でないため、費用は接種者の全額負担となります。
- Q公費での接種対象でない場合、どう予防すればいいのでしょうか?
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A
▲発熱患者は入り口を分けるなど感染対策を徹底。安心して通える
子宮頸がんは早期に発見されれば、死に至ることは少ないかもしれませんが、それでも手術で子宮を失うリスクがあり、前がん病変に対する円錐切除のような、年間1万件を超えて実施されている部分切除であっても流産・早産リスクが高くなる可能性があります。ですから、HPVワクチンによる感染予防が大切なのです。定期接種の対象者でない方も、任意接種としてワクチンを接種することが可能ですので、ぜひ医療機関などにご相談ください。ただしその場合、接種費用は全額自己負担となります。厚生労働省は20歳以上の女性に対して、定期的な子宮頸がん検診を勧めていますので、積極的に受診しましょう。