井ノ上 馨之 理事長の独自取材記事
いのうえこどもファミリー歯科
(奈良市/富雄駅)
最終更新日:2024/07/04

奈良市バス・杵築橋バス停のすぐ近く。大型スーパーと併設する医療モールの中に「いのうえこどもファミリー歯科」はある。同院では子どもから大人まで、さまざまな年代の診療が可能だ。特徴の一つに、完全予約制であることが挙げられる。開業当初は完全予約制の歯科医院がまだ珍しく、苦労もしたと井ノ上馨之(よしゆき)理事長は語る。診断と説明に時間をかけている部分も同院の特徴。これは井ノ上理事長が幼少期に悲しい経験をしたことから、同院のモットーにもなっている。今後の治療方針を間違わないよう、そして患者が治療方法を選択できるよう、診断と説明が重要視されているのだ。われわれのインタビューに対し、一言一言丁寧に答える姿から、患者にも同じような姿勢で接しているであろうことが想像できた。
(取材日2023年1月24日)
自身の経験から歯科医師をめざす
歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。

人の役に立ちたいという思いが昔からあったのと、健康であるためには不自由なく食事ができることだと考えて、歯科医師をめざしました。実は私には永久歯が1本足りないのですが、小さい頃に「生え替わりの時期だから」と健康な乳歯を抜かれてしまったんですね。今はブリッジで歯を入れています。ただ子どもの時に歯を削ってブリッジを入れてしまったので、ブリッジの部分に虫歯が見つかり、結局神経の処置をすることになりました。永久歯が生えてこないという症状は決して珍しくないんです。永久歯が生えてこないからと、本当に乳歯を抜いてしまって良かったのか。ブリッジ以外の方法はなかったのか。今でも考えますね。そんな経験から、これから育つ子どもたちに私のような経験をしてほしくないと思い、歯科医師をめざしました。
なぜこの場所で開業しようと思われたのでしょう。
もともと郊外で場所を探していたところ、ちょうど今の場所にテナントが募集されていたので応募しました。それに予防を重視した診療をしたい気持ちもあったので、予防の意識がまだ浸透していない地域でやってみたいという思いもあったんです。ここは地元ではないのですが、皆さん優しい方ばかりで感謝しかありません。
開業して大変だったことはありますか。

当院は患者さんをお待たせしないために完全予約制を取り入れています。しかし、完全予約制の歯科医院というのは開業当時珍しかったようで、患者さんには敷居が高い歯科医院だと感じられたようでした。最初は苦労しました。でもやり続けることは大事ですね。今では皆さん予約してくださいますし、予約の時間に遅れないよう気をつけてくださっています。
診断と説明を重要視。小児歯科の難しさも考える
治療する上で心がけていることはありますか?

どんな治療をするか選択をするのは患者さんですから、しっかりと説明するようにしています。これはどんな患者さんに対してもそうです。中には「すぐ治療してほしい」という患者さんもいらっしゃいます。歯科医師によっては何の説明もせずすぐに治療を始める人もいるでしょう。しかし、治療した後に「こんな治療法もあった」とわかっても遅いんです。治療費用を抑えたい患者さんもいれば、自費診療で構わないからいい素材や技術を使ってほしい患者さんもいらっしゃいます。患者さんの希望と状態に合致する治療方法を可能な限り探し、それを説明して患者さんに選択してもらうのが、私の理想とする歯科医師の姿です。
診断を大事にしていると伺いました。
当院では、メンテナンスの継続だけでどれだけ健康な歯を維持できるか、ということに重きを置いています。そのための前段階として、患者さんの口腔環境や歯の状態などの診断をかなり重要視しているため、診断にとても時間をかけているんです。よって初診では、痛みのある患部を応急処置する以外の処置はしていません。初診では患者さんのお話を聞き、説明するだけです。この部分も、開業当初はご理解いただけないケースもあり、苦労しましたね。それでもこのスタイルを続けているのは、私の中で初診が大事であるという意識があるからです。診断と説明に時間をかけることが大切だと思っています。
小児歯科も標榜していらっしゃいますが、子どもの治療で難しい部分はありますか。

治療の質以外が関わってくることですね。例えばお子さんが嫌がって治療できないとき、押さえつけてでも治療するか、お子さんが治療できるようになるまで待つか、そんな選択が出てきます。この場合、当院では何度か来院してもらい、スモールステップを踏んで成功体験を重ねながらお子さんが治療できるようになるまで待つようにしています。それから、いずれ抜ける乳歯を治療するかどうかの選択など、どれも大人にはない、治療の前段階でストップすることが少なくありません。それに治療方法などを選択するのは親御さんがほとんどです。そうするとこちらの意図が親御さんに伝わっていないこともあるので、そこも難しいですね。壁は多々ありますが、治療を終えたお子さんの笑顔を見られると、私もうれしくなります。これからも試行錯誤しながら続けていくつもりです。
予防も歯列矯正も可能。ワイヤー以外の矯正方法も
オフの日は何をしていらっしゃいますか。

今は娘と遊んでいることが多いです。最近は行けていませんが旅行が趣味なので、まだ行ったことがないハワイに行ってみたいんですよ。娘とマリンスポーツができたらいいですね。もちろん国内旅行も行きたいです。旅先でしか食べられない料理が好きなんです。大学からラグビーを始めて、オールデンタルと呼ばれる歯学部の大会で優勝するようなチームに所属していたため、体力はあると思っています。ただ今は忙しくて一日一食の生活なので、体重は落ちてしまいました。
今後の展望を教えてください。
矯正歯科を軸として、子どもだけでなく大人もつながっていけたらいいですね。当院が得意とする予防と矯正歯科もつなげていけたらと思っています。予防と矯正歯科のどちらかに特化した歯科医師は多いと思いますが、両方できる歯科医師は少ないと思うので。歯列矯正は方法によって虫歯が増えてしまう原因にもなりますし、歯列矯正でワイヤーを入れると、どうしても歯磨きがしにくくなるんです。また、歯列不正を改善させられれば、虫歯や歯周病の予防につながります。歯列矯正で虫歯になった経験がある方も多いと思います。特に子どもの場合は近年、口腔機能の低下も問題になっており、そこにも矯正によるアプローチが可能です。お子さんだけでなく、成人された方の歯列矯正も行っていますから、気になる方はお気軽にご相談ください。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

この地域に限らず、最近のお子さんは習い事が多くて歯科医院の予約が取りにくいことも多いと思います。だからこそ、時間をきちんと守れているクリニックで受診していただくことをお勧めします。お子さんの歯列矯正についてはまだ知られていないことも多いため、「様子を見ましょう」と言われた経験がある方もいらっしゃると思います。でも様子を見ているうちに歯が生え替わることもあるので、気になったら一度早めに来院いただきたいですね。それから歯列矯正でなくても、永久歯に生え替わる5~6歳ぐらいになったら、永久歯に異常がないか確認するためにも来院されることをお勧めします。お子さんの歯列矯正について、当院ではマウスピース型装置を用いた矯正を導入しています。ワイヤーのみの歯列矯正よりもメリットが多いと思いますので、気になる方は一度ご相談いただければと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは一期矯正/41万8000円〜、マウスピース型装置を用いた二期矯正/33万円~、乳歯の反対咬合/6万6000円、成人矯正/77万~