大須賀 友晃 院長の独自取材記事
おおすが整形外科
(東海市/南加木屋駅)
最終更新日:2022/12/21
南加木屋駅から西へ、ゆるい坂道を7分ほど歩くと右手に体育館のような大きな建物が見えてくる。2019年10月に新築移転した「おおすが整形外科」だ。丸みを帯びたフォルムと人工芝の周囲に植えられたヤシの木が、よい意味でクリニックということを忘れさせる。「スポーツとリゾートをテーマに設計してもらいました」と話す大須賀友晃院長は、スポーツ医学に造詣が深く、子どもの頃から野球やサッカー、スキーなどに親しんできた、スポーツをこよなく愛する医師だ。診療理念は「For your SMILE」。患者もスタッフも、みんなが笑顔になれるクリニックをめざすという。スポーツを愛するあまり遠回りをした医師への道のりと、理想のクリニックを開業した今、そこでどんな医療を展開しているのかを聞いた。
(取材日2022年8月26日)
スキーヤー、木こり、ダンサーと回り道をして医学部へ
医療法人名の大須賀医院というのは、東京でお父さまが開業されていた医院だそうですね。
大須賀医院は、東京都豊島区で父が1981年に開業し、内科を診療していました。私は、高校生になっても父の後を継いで医師になろうとは思っていなかったので、中学から通っていた私立の大学へ進学し、あまり深い意味はなく法学部に入りました。子どもの頃から運動が大好きだったので、大学の運動部で何かスポーツができればいいと思っていたんです。スキー部に入部してからは、勉強よりもスキーに夢中になっていたため、案の定、父から「何をやっているんだ」と叱られてしまいました。その後、大学を休学して今後のことを考えるという目的で、アメリカのペンシルバニア州にホームステイをしました。そのホストファミリーは木こりだったので、木こりの手伝いをしながら大学の聴講生としてドイツ語とダンスを勉強する1年間でしたね。
最終的に、休学の1年間でどんな答えを出したのでしょう。
帰国の3ヵ月前にオーストリアでスキーをし、4月に日本に戻りました。スキーの技術は指導者になるくらい上達しましたが、遊学中には、「医者の息子」と言われることが多く、やはり医師という職業を選択肢から外すことはできないと考えるようになりました。それと同時に、大好きなスポーツには関わっていきたいという思いもあったので、スポーツに携わる医師になろうと決意したんです。そこからは地獄の猛勉強ですよ(笑)。それでも、スポーツ医学に携わるという目標があったので、なんとか乗り越え、25歳で医学部1年生となりました。
道のりは長くても目標は見失わなかったのですね。ご実家の東京ではなく、東海市に開業したのはなぜですか?
父が他界して大須賀医院は休院しました。医療法人だったので私が継承しましたが、整形外科を開業するには広さが足りませんでした。どこか別の場所で開業することを考えていた頃、ご縁のあった整形外科クリニックが閉院することになり、私に打診があったんです。そのクリニックは、当院から100mほどの場所にあり、おおすが整形外科はそこからスタートしました。開業当初から、リハビリテーション施設をはじめグラウンドやブルペンなども備えた施設を造りたいと考えていたので、開業の2年後から新施設の建設を計画し、開業5年で今の場所に移転。当初のイメージを形にすることができました。
クリニックの運営にあたって、経営面は信頼できるパートナーに任せていらっしゃるそうですね。
はい。比較的珍しいと思いますが、当院では私とは別に経営担当を配置しています。開院するにあたり、正直私は経営に対して不安がありました。そのため、医療従事者である友人で、経営に対して理論的な考えを持った人物がいたため、彼に経営面をすべて任せ、私は治療に専念する体制をとろうと決めました。私自身、彼に対して運営のパートナーとしての絶対的な信頼を置いているのですが、やはり彼なしでは開院に向けて船出することはできなかったと思います。
痛みを取って終わりではなく、けがをしない体づくりを
どんなクリニックをめざしていますか?
総勢45人のスタッフが在籍し、丁寧なリハビリテーションや応対に努めています。人数が多いぶん、組織力を強化し、医療に向かう気持ちを一つにしなければなりません。当院には、スタッフ全員で共有している5つの診療理念があり、毎日全職員で復唱しています。その一番目は「すべての方々に笑顔でお帰りいただきましょう」です。スローガンである「For your SMILE」と併せて、患者さんを含めてご来院いただいたすべての方に笑顔で帰っていただけるような医院をめざしています。
スポーツ整形に精通する医師としてどんな診療を心がけていますか?
けがを治すだけでなく、けがをしない体づくりを考えて診療しています。小さなお子さんも多いので、長く付き合っていけるようにしたいですね。基盤になる体づくりというのは、スポーツに詳しい理学療法士が主体となって提案する必要があります。当院では、そのために必要なトレーニング施設やスタッフを多くそろえました。例えばブルペンでは、野球肘の患者さんに対し、ある程度痛みがひいた後に投球フォームのチェックを行っています。肘を痛めるのは、体全体が使えていない、肘に負担のかかるフォームになっているなどの原因がありますから、再発防止のためにもフォームチェックは大切ですね。よいフォームを身につけ、弱い部分を強化することでさらにパフォーマンスも上がると思います。グラウンドもありますから、サッカーや陸上、テニスなどさまざまな競技に対応できます。
再発防止という意味で、関節の可動域を広げるためのトレーニング機器も設置しているそうですね。
多くのアスリートが使っているトレーニングマシンで、スポーツジムにあるような筋力トレーニングマシンとは少し違います。筋肉が適正に伸縮するための適度な負荷をマシンがかけていくため、心拍数、血圧ともに上昇が少なく、高齢者から子どもまで幅広い年齢層に使っていただけますし、リハビリやけがをしない体づくりに役立つと思います。やわらかく弾力性に富んだ筋肉をつくり、関節可動域を広げていくことによって血流も促進されると考えられます。私も含め、6人のトレーナーが各個人に必要なメニューを指導しています。
動かす時期の見極めが重要となる運動療法が中心
患者さんは高齢の方も多いと思いますが、どんな治療をしていますか?
基本的には、運動療法が中心です。例えば変形性膝関節症の場合、痛みがひどい時には安静が必要ですが、ある程度痛みがひいてきたタイミングで運動療法を開始します。動かしていい病気ではありますが、そのタイミングを間違えると、悪化することもありますので、動かす時期の見極めが重要なポイントです。腰を痛めた方はじっとしていることが多いのですが、動かしてはいけない疾患でない限り、高齢者であっても関節をやわらかくし、筋肉をつけることが再発防止につながります。積極的に動かしていくことをお勧めしますね。これまでの経験値から適切な判断をして、まずは動くために薬を使って痛みをとり、その後は運動療法を行って、その結果健康寿命を延ばせるようなアドバイスをしていきたいと思っています。
スポーツに打ち込むお子さんを持つ親御さんも多いかと思います。メッセージをお願いします。
スポーツ選手にとっても手術をするタイミングは、重要なことです。私自身も30代に膝の手術をしました。長年スポーツを続けているのであちこち痛めていますし、選手の立場も理解できます。「今ここで結果を出したい。休むわけにはいかない」ということもあるでしょう。選手の気持ちを理解しつつ、選手生命を脅かすことのない時期を見極めて治療をしなければいけないといつも思っています。スポーツ選手の低年齢化もあって、小さいお子さんの関節の障害や疲労骨折も増えています。小さい頃から一つのスポーツに偏るのはあまりよくありません。成長期には、いろいろな種類の運動をお勧めします。
今後の展望はありますか?
医療保険制度では、治療終了後に医院でリハビリや運動をすることはできません。でも、治療後もここで引き続き運動したいという患者さんも多いので、そういった方々のためにも続けて運動ができるような運動施設やデイケア施設などを整備しました。スポーツする方も高齢の方も、けがをしない体づくりを継続できるよう、地域の健康増進と健康寿命の延伸に力を入れていきたいです。